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急章:叶わぬ望み-2

 


 時は幾分か過ぎ、とある夏の日の事。


 クートゥはいつものように獲物を探しに森を走っていました。


 狙うのはシカやイノシシ、クマ等の食い出があるもの。鳥やオオカミは数を揃えるのが大変なので、機会がある時だけクートゥがつまみ食いする形で狩っていました。


 運が良い時は魔物を狩る時もあります。


 魔物は他の動物よりも手強く、様々なスキルを駆使して抵抗して来ますが、今のクートゥにとっては動物と魔物の違いなど些細な差異でしかありません。


 魔物を狩れた日は盛大にお祝いし、クートゥとスターチスの二人だけですが大いに楽しみ、盛り上がります。


(もうすぐスターチスの誕生日……。魔物が運良く見付かれば良いけど……)


 厳密に言えば、スターチスの生まれた日は今日ではありません。


 しかし誕生日が判らないからといって何もしないのは寂しいと感じだクートゥは、自分とスターチスが初めて会ったその日を彼の誕生日とし、毎年祝っているのです。


(あの子へのお返し、見付かってないと良いな……)


 クートゥは毎年誕生日になると、誕生日プレゼントとして本を贈っています。


 勿論、今の彼女の姿でマトモに買い物などは出来ないので、旅の行商人が運ぶ荷馬車を脅かし、めぼしい本を物色しては棲家へと持ち帰り、誕生日まで隠しているのです。


(でもあの子、私の感情見て色々と察しちゃうからなぁ……。嘘とかすぐバレちゃうし)


 スターチスの《心情感知》は歳を追うごとに徐々に正確で精緻になっていきました。


 常に発動し続け、母親であるクートゥの考えや気持ちをいち早く察知しようとした結果、熟練度が蓄積されていき、今では言葉巧みに彼女の機嫌を取ることも出来てしまうのです。


 それ故クートゥはスターチスを一度も叱りつけた事はなく、少々人の顔色を気にし過ぎるきらいがあるものの、人の気持ちや痛みが分かる良い子へと成長しました。


(うん。多分大丈夫かな。とりあえず今は今日のご馳走を探さないとっ!)


 彼女は張り切り、森を駆けます。


 耳を立て、鼻を鋭くし、目を見開いて動物や魔物の僅かな痕跡を探しながら、御馳走となる獲物を探していると、ふと目端に何か気になるものが飛び込んで来ました。


 クートゥはすぐさまその気になるものへ方向転換すると気配を殺しながら近付き、身を隠しながらそれの様子を伺います。


(アレ、は……)


 彼女の目の前にあったもの。それは____


「く、くそ……」


 魔物に襲われて重傷を負った、一人の剣士の姿でした。

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