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天才インタープリター・伊藤鶴吉(イザベラ・バードを「未踏の旅路」へ導いた男)  作者: 東曌


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【全10話・解説】

文字を持たぬ天才インタープリター・伊藤鶴吉

〜イザベラ・バードを「未踏の旅路」へ導いた男〜


【全10話・本編総集編】


【序章】


 イギリスの高名な女性旅行家イザベラ・バードが残したアジアの二つの記録。のちに訪れた李氏朝鮮の末期、働くことを恥とし、民の富を貪り尽くす特権貴族階級「両班(リャンバン)」によって国全体が窒息していく凄惨な現実。ひるがえって明治十一年の日本はどうだ。四民平等の風が吹き荒れ、貧しくとも「自分の稼ぎは自分のものだ」という活気に溢れていた。だからこそ、異国の女が単身で奥地を歩いても、誰一人として彼女を襲わず、掠奪もされないという治安の奇跡が起きていた。消えゆく東洋の光を見据えるイザベラの前に、一人の二十歳の男が現れる。



【第1話】


 明治十一年、初夏の横浜。黒船の煙を産湯に育った若き通訳・伊藤鶴吉(二十歳)は、アメリカ公使館や英国植物学者との修羅場で鍛えた完璧な英語と、エベレスト級のプライドを持っていた。楽な観光案内で稼ごうと高を括っていた彼の前に現れたのは、山積みの革トランクと馬の鞍に囲まれた英国婦人イザベラ・バード(四十六歳)。持病の療養(自称)のため、西洋人が誰も通ったことのない「奥地(東北・北海道)」へ行くと豪語する。追い払うために当時の公務員の初任給を遥かに超える【月給十二ドル】(現在の約二十四万円)をふっかけた鶴吉だったが、イザベラはその「お世辞を言わず、傲慢なまでに自信に満ちた態度」を逆に気に入り、その場で採用を決めてしまう。



【第2話】


 明治十一年に「洋服を店で買う」などという概念はない。鶴吉は、言葉を訳すだけでなく、自分の見た目自体が雇い主の『品格(ドレスコード)』の翻訳であると知っていた。弁天通の仕立て屋で頑丈なツイードのジャケットを縫わせ、元町の職人に極上の牛革ブーツを特注し、全財産をはたいて一分の隙もない正装で『横浜グランドホテル』の車回しに立つ。新橋駅から鉄道に乗り、東京へ。しかし、前日の雨で道路はドロドロの田んぼと化していた。床にすれるほど長いアフタヌーンドレスで立ち往生するイザベラに対し、鶴吉は「そのひらひらドレスじゃ泥人形になるのがオチだ」と冷淡に言い放つ。だが、イザベラは旅籠にこもると十五分で着替えてみせた。それは、下半身が大胆に分かれた、彼女が自分でデザインした乗馬用の特製ズボン(戦闘服)だった。ドレスを脱ぎ捨てて南部馬にまたがる爆走レディと、その手綱を引く二十歳。二人の偉大な第一歩が、日光街道へ向けて踏み出された。



【第3話】


 千住を抜け、北へ向かうにつれ、空には重く低く『オリエンタルの雲』が広がり始める。宇都宮を越えた日光街道は、馬の腹まで浸かるほどの泥の運河。ようやく霧の彼方の日光の宿へ滑り込むが、真新しい畳の下には、梅雨時の湿気で繁殖した無数のノミとダニの大帝国が潜んでいた。夜中、痒さと恐怖で発狂寸前になり折りたたみベッドの上に避難したイザベラを、鶴吉は特注のハッカ油と硫黄の薬でテキパキと防衛する。翌朝、宿の主人が異人相手に一泊五円(現在の約十万円)という法外なぼったくりを要求してくるが、鶴吉の目が冷徹に光る。内務省の『旅行免許状(パスポート)』を叩きつけ、現地の泥臭い方言をまくしたてて宿の主人の不正を完璧に論破。相場の七十銭(馬の餌代込みで一円)に値切り倒してみせる。ただ言葉を流すだけの通弁ではない、人間の欲や法律までコントロールするインタープリターの凄みを、鶴吉は初めて証明してみせた。



【第4話】


 山形との国境、険しい山王峠は大雨の濁流と化し、馬が足を滑らせる断崖絶壁。命からがら転がり込んだ会津のボロ宿には、イギリスお嬢様が愛するパンも肉もひとかけらもない。宿の婆様が出してきたのは、大麦飯に真っ黒な味噌汁、そして異臭を放ちながら糸を引く豆の塊――『納豆』だった。「東洋の悪魔の毒スープよ!」と叫ぶイザベラの前で、鶴吉は平然と納豆をかき混ぜ、米の上にぶっかけて美味そうに喉の奥へ流し込む。そして、窓の外で大雨に打たれながらイザベラの重いベッドを担いで歩く人足たちの強靭な筋肉を指差した。「あんたら西洋人は肉の脂で動く。だが、この国の人間は『米と塩』、そしてこの発酵した豆の力だけで動いてるんだ。これを拒むなら、ただのお気取り屋としてロンドンへ帰りなさい」。彼女のプライドの核心を撃ち抜かれたイザベラは、意を決して納豆と味噌汁を口にする。身体の芯から熱くなっていく感覚に、未知の食文化さえも知性で呑み込んだ爆走レディは、再び手綱を握り直す。



【第5話】


 会津の峠を抜けた瞬間、重苦しかった『オリエンタルの雲』が割れ、眩い黄金の光が差し込む。眼下に広がっていたのは、一面の瑞々しい水田の海と、一分の隙もなく切り揃えられた生垣、立派な白壁の農家が点在する山形・置賜(おきたま)の平野だった。「ここはアジアの果てに見つけたエデンの園だわ! 私はここを『東洋のアルカディア』と名付けるわ!」と狂ったようにスケッチブックにペンを走らせるイザベラ。しかし、鶴吉はあぜ道で腰を深く曲げて泥を這う農民たちを見据えていた。「綺麗に見えるでしょうがね、これは百姓たちの狂ったような執念と労働が、自然をねじ伏せて作った『結晶(芸術)』ですよ。四民平等になった明治の、これが本物の底力だ」。その夜、米沢の清潔な宿のテラスで、鶴吉はキセルに火をつけ、急速に西洋化を急いで古い美しいものを壊していく東京の波がいつかここにも押し寄せ、消え去ってしまうかもしれないという乾いたニヒリズムを漏らす。イザベラは「だからこそ、世界がこの美しさを忘れてしまわないように、私たちが誰も通っていない道(アンビートン・トラックス)を歩いて記録に残すのよ」と、二人の旅の使命を確固たるものにする。



【第6話】


 山形と秋田の国境、院内峠は大雨で完全に道が崩落し、馬すら進めない絶望。鶴吉は泥に強い荷牛を手配し、自らは徒歩で、膝まで泥に浸かりながらボロボロになって峠を越える。しかし、宿場町へ入る直前、鶴吉は服の泥を落とし、ブーツを意地でも黒光りするまで磨き直した。「衣服を整えることが最大の防衛。泥人形で現れれば、役人に足止めされる。このドレスコードこそが最初の交渉だ」。宿場町で待ち受けていたのは、腰にサーベルを帯びた黒い制服の地方巡査たち。ほんの数年前まで刀を差して戦っていた、本物の士族(サムライ)の生き残りだ。鋭い眼光で検問しようとする彼らに対し、鶴吉は内務省の旅行免許状を堂々と提示する。書類の重みを理解した巡査長は、カチリと踵を鳴らして完璧な敬礼を送り、硬派な英語で二人を歓迎した。「ロンドンの警察だってこれほど礼儀正しくないわ」と驚くイザベラに、鶴吉は語る。「彼らは刀を奪われても誇りまで捨てちゃいない。形を変えても死なない精神が、この国の治安を守っているんだ」。夜の闇の中、巡査たちの持つ提灯の明かりが、静かに日本の夜の安全を保障していた。



【第7話】


 秋田の奥地の大館付近の宿。外国人女性という「珍獣」を一目見ようと、村中の老若男女が宿を取り囲む。気がつけば、部屋の障子紙にプツプツと指で無数の穴が開けられ、そこからギラギラと湿った人間の目が何十個も覗き込んでいた。プライバシーの蹂躙に恐怖するイザベラのため、鶴吉は障子を開け放ち、磨き上げられた黒ブーツを畳に踏み鳴らして地元の言葉で一喝する。「お上の許可を得た国賓だぞ! 命が惜しくなきゃ散れ!」。さらに、汗を流しに向かった共同浴場の戸を開けると、そこには男女が全裸で平然とひとつの湯船に浸かり、世間話をしている「混浴」の光景があり、イザベラは石化する。東京の法律(禁止令)が届かない山奥のカオスに対し、鶴吉は帳場から宿の主人を引きずり出し、警察の威光をチラつかせて実力行使で地元民を追い出させ、イザベラ専用の『貸切時間(プライベート・タイム)』を勝ち取る。そして、木扉の前に仁王立ちして腕を組み、淑女の領分を鉄壁の盾となって守り抜いた。

 驚くイザベラに、鶴吉はマッチを擦って、自分が『通弁』という安い肩書を拒む本当の理由を語る。

「英語を右から左へ機械的に流すだけの通弁は、文化が衝突した瞬間に右往左往して雇い主に恥をかかせる。だが、俺の仕事は『インタープリター(解釈交渉人)』だ。言葉の裏にある人間の欲、土地の古い慣習、お上の法律、相手が何を恐れているかを脳内で瞬時に解釈し、互いの文化の壁に橋を架けて交渉をこちらの有利に導く。それが、俺が月給十二ドルをふんだくる根拠ですよ」



【第8話】


 津軽平野へ入ると、海からの烈風が吹きつける。泥まみれの農村の中に、突如としてペンキ塗りの白い洋風の小学校が現れる。外見は立派な洋館なのに、中を覗けば子供たちは畳の上で床に座り、漢籍を大声で暗誦していた。イザベラは「形だけ西洋の箱を用意した、浅浅で滑稽な真似事(張り子の文明)ね」と失望する。しかし、鶴吉は冷徹に言い放った。「真似事で結構。大急ぎで西洋の形を取り入れなきゃ、明日にはあんたら西洋のハゲ鷹どもに国ごと奴隷にされるんだ。この国の真似事は、必死に生き残ろうとする剥き出しの『生存本能』なんですよ」。だが、と鶴吉は続ける。「生き残るために西洋の真似事をするのはいいが、今の東京の馬鹿どもは、廃仏毀釈だ何だと、自分の家にある本当の宝(美術や仏像)までゴミとしてドブに捨てちまっている。反吐が出るほど浅ましい時代だ」。

 イザベラは、東京を出発する前に動物学者モースから聞いた噂を思い出す。「この八月の終わりに、アメリカから新しく、若い哲学の教授が東京大学に赴任してくるそうね。本名を Ernest Francisco Fenollosa(アーネスト・フェノロサ) というのだけど。彼は日本人が捨てようとしている素晴らしい文化を、命がけで調査して守るつもりらしいわ」。

 鶴吉はニヒルに笑う。「へっ、大層な物好きだ。だが、西洋の靴ばかり有難がっている今の東京の馬鹿どもには、それくらい外からガツンと言ってやる手合いが必要だ。その男が来なきゃ、この国の本当の美(こころ)は永遠に消え去る運命だったってわけだ」。フェノロサが美術を救うなら、自分たちはこの国に生きる人々の魂を救い出す――大旅行家の使命感を燃え立たせ、二人は本州の終着点、青森港から函館行きの黒い蒸気船へと乗り込む。



【第9話】


 津軽海峡を越え、蝦夷地へ。太古からの原生林が吐き出す息吹を吸った、冷徹な霧が這い寄る。道中、新政府の「開拓使」による過酷な同化政策により、鮭の地引網や狩猟を禁止され、土地を奪われたアイヌの強制移住の爪痕を目にする。「これが日本の目指す開化なの?」と心を痛めるイザベラ。日高の平取、深い森の奥にある『義経神社』の入り口に差し掛かった時、彼女は「北海道という名は、冷たくて血の通っていない管理区域のようだわ」と呟く。鶴吉は、完璧に仕立てたジャケットの襟を立てながら静かに語った。「そいつは今の東京の、漢字しか知らねえ役人どもが勝手に名前を変えちまったからだ。この土地を六度も歩き尽くし、政府に名前を提案した名付け親の男――松浦武四郎って凄まじい探検家がいた。その男が最初に付けた名前は、海じゃなくて、【北加伊道(ほっかいどう)】だったんだ」。武四郎がアイヌの古老から教わった「加伊(カイ)=この大地に生まれた人間」という言葉の意味。開拓使の横暴に激怒し、身分証を投げつけて下野した武四郎の、アイヌへの祈りと誇りがその国名に隠されているのだと、鶴吉はイザベラの知性に届くように翻訳する。

 平取のコタン(集落)のチセ(家屋)の薄暗い闇の中、囲炉裏の煙の向こうで、独自の美しい衣服(アイヌアツシ)を纏った気高い長老が右手を上げて二人を歓迎した。「これこそが、文明の傲慢に汚されていない真の人間社会だわ!」と涙を浮かべてペンを走らせるイザベラ。鶴吉は、この美しい北加伊道の残影もまた、東京の『オリエンタルの雲』に呑み込まれて数年で消えゆく運命にあることを冷徹に見通しながら、胡坐をかく。「感動に胸を詰まらせている暇はありませんよ、バードさん。形が変わっちまう前に、彼らの魂のすべてを一文字も漏らさずそのノートに刻みなさい。それが、俺たちの旅の本当のゴールだ」。



【最終話】雲の行く先


 明治十一年、九月。すべての旅程を終え、再び『横浜グランドホテル』の海を一望できるテラスへ戻ってきた二人。イザベラは契約通りの【月給十二ドル】(現在の約二十四万円)に、多額の金貨の詰まった袋(ボーナス)を添えて差し出すが、鶴吉は十二ドルのお札だけを懐に仕舞い、金貨の袋を突っぱねる。「俺は自分の仕事の価値を、契約以外の金で値踏みされるのが一番嫌いなんだ。俺は月給十二ドルのプロだ、それ以上も以下も受け取らねえよ」。


 苦笑したイザベラは、のちの世界的大名著『日本奥地紀行』となる膨大な手記を愛おしそうに撫で、一枚の真っ白な便箋と万年筆を差し出した。「旅の終わりに、あなたのその完璧な言葉の記念として、サインを英語で書き残してくれないかしら? ロンドンに戻っても、私が世界で一番信頼したインタープリターの名前を思い出せるように」。

 美しいアルファベットが並ぶ便箋を見つめ、鶴吉の動きが止まる。彼はキセルをくわえたまま、自嘲気味に皮肉な笑みを浮かべた。

「……あいにくですがね、バードさん。俺は、その万年筆ってやつで、横文字の書類(アルファベット)を書くことはできねえんですよ」

 驚愕するイザベラ。外交官の言葉も、学術用語も完璧に理解し、流暢に切り返してきた男が、文字が書けない。

「学校の教科書なんかで覚えた、死んだ文字の英語と一緒にしちゃ困りますよ。俺の英語は、横浜の居留地のドブ板の上で、アメリカ公使館の修羅場で、飢え死にしないために耳からダイレクトに叩き込んだ『生きるための銃弾』だ。あんたたち西欧の人間が腹の底で何を考え、何を欲しがっているか、俺はその『耳』だけで嫌というほど聴き取ってきた。文字なんか書けなくたって、俺のこの耳とこの口があれば、どんな文化の壁だって解釈(インテリプリート)して、ねじ伏せてみせる。それが、俺のプライドですよ」

 書けないが、誰よりも完璧に聴き取れる――。学校の教科書には絶対に載らない、激動の明治を生き抜くために命がけで掴み取った野生の語学の凄み。イザベラはその言葉の重みに圧倒され、深い敬意と涙を浮かべて万年筆を引いた。

「……そうね。言葉とは、紙の上の文字ではなく、人と人を繋ぐ魂そのものだわ。あなたは文字を書かなくても、その存在のすべてで、消えゆく日本の美しさを私に翻訳してくれた。あなたこそが本物の、唯一無二のインタープリターよ」

「へっ。お転婆なお嬢様の相手は、もう御免被りますよ。……さあ、俺は次の楽な観光案内の仕事に行くとしますかね」

 鶴吉は帽子を深く被り直し、鏡のように磨き上げられた黒革ブーツの踵をパチンと鳴らして、一度も振り返ることなくテラスの階段を颯爽と下りていった。階段の上から、イザベラはその引き締まった後ろ姿をいつまでも見つめていた。見上げる横浜の空には、形を変えながら、激動の新しい時代へと流れていく、巨大な『オリエンタルの雲』が広がっていた。

(『オリエンタルの雲』・本編完結)


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【作品公式設定資料集】

登場人物紹介と、

実在の背景・肩書本作における役割と「ファクト」


伊藤鶴吉(20)

明治・大正期における「日本一の通訳(通弁の元勲)」主人公。

安政の黒船を産湯に育った生粋の幕末っ子 。

完璧に英語を「聴き取り、話せる」が、アルファベットの「読み書きはできない」野生の天才インタープリター。

仕立てたツイードジャケットと黒革ブーツを戦闘服とし、月給12ドルのプロの誇りのために泥道を先導する 。



イザベラ・バード(46)

英国王立地理学協会・初の女性会員 / 伝説の女性旅行家 英国の気品あるお嬢様にして、中身は「好奇心のバケモノ」。

脊椎の持病があり、じっとしていると病むが、旅に出ると途端に元気爆発して馬にまたがる。

自分でデザインした乗馬用のズボンスタイルで、誰も通っていない泥道(奥地)を突き進む



松浦武四郎(60)

「北海道」の名付け親 / 幕末・明治の伝説的探検家明治11年時点では東京で隠棲中。明治2年、開拓使によるアイヌへの不当な同化政策に激怒し、身分証を役所に投げつけて下野した。彼が「北海道」の元として提案した『北加伊道』の「加伊(カイ)」には、「この大地に生まれた人間(アイヌ)」という意味の祈りが込められていた。



アーネスト・フェノロサ(25)

ハーバード大首席卒 / のちの日本美術の救世主明治11年8月後半にお雇い外国人教授として来日直前(モース経由の噂として作中に登場)。日本人が自国の宝を古いゴミとして破壊していた廃仏毀釈の過渡期に、命がけで古社寺の秘仏や美術を救い出し、近代「国宝」制度の基礎を作る。


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【作品解説】

 学校の教科書が教える「明治の文明開化」は、きれいに平らにならされた結果の年表でしかありません 。


その無機質な行間の裏側で、膝まで泥に埋まる悪路を歩き、自国の古い美術をドブに捨てて西洋の形だけを真似る「焦燥と生存戦略」が剥き出しで渦巻いていました。


 『文字を持たぬ天才インタープリター・伊藤鶴吉』は、そんな激動の時代の過渡期を、学校の死んだ文字ではなく、生きるために「耳」から毟り取った言葉で生き抜いた、一人の誇り高き男の物語です


教科書に載っていないからこそ、誰も見たことがない、本物の歴史の肌触りがある。

最大の感謝と敬意を捧げます。


 激動の東洋の空に浮かぶ雲は、今も形を変えながら、私たちの頭上を流れ続けています。


 ご一読、本当にありがとうございました

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