新居お披露目 上
食中毒事件から一ヶ月が過ぎようとしていた。
アンリさんの活躍のおかげで事態は無事収束し、平和な日常が戻ってきた。
私はマカロンさんやリリーさんとも親しくなり、特にリリーさんとは年が近いこともあって、よくお茶に誘ってもらっている。王都の流行に詳しく、素敵なお店をたくさん知っているので、一緒にいるととても楽しい。
生活にもリズムができてきた。
朝はマリーさんに卸す回復ジュース(失敗ポーション)を作り、クラモに配達を任せる。その後、カレンさんのお手伝いをして、午後からは新居の方へ向かい、庭の畑の手入れを始めるのだ。
「よしっ、陽泉花はこれでOK。次は月見草を植えていこうかな……」
「ナギー! そろそろ休憩しない?」
作業に没頭していると、ヴェルンさんの声が聞こえた。
私はスコップを置き、皆のいる方へ向かう。
職人頭のドノバンさんと見知った職人さんたちが、芝生の上で輪になって料理を囲んでいた。
「おぅ、遠慮すんな。好きなの食えよ」
「え、いいんですか!」
「私の妻が作ったものなので、お口に合うと良いのですが……」とヴェルンさんが差し出してくれる。
「え? ヴェルンさん、ご結婚を?」
「ははは! ナギも言うねぇ!」
「あ、そういう意味じゃなくて! ヴェルンさん、すごくお若く見えるので……」
「そういうことにしておきましょう。さあ、座ってください」と、クスッと笑うヴェルンさんに促される。
私は芝生に腰を下ろし、お肉を挟んだパンを手に取った。
軽く焼かれたパンから香ばしい香りが漂う。中にはみずみずしいレタスが敷かれ、マスタードのようなソースが塗られている。
「いただきます……ふぬっ⁉」
「だ、大丈夫ですか!?」
「お、美味しい……!」
「「わははは!」」
「もう、驚かせないでくださいよ」とヴェルンさん。
「すみません、あまりに美味しくて思わず……」
このソースが決め手だ……。
ヴェルンさんの奥様は本当に料理上手なんだな。
機会があれば、ぜひレシピを教わりたい。
親方が満足げに腹を叩きながら、新居を見上げる。
「何とか形になったな。これなら誰に見せても恥ずかしくねぇ」
「自家工房の方も、かなりこだわりましたからね」とヴェルンさんが早口で続ける。「可動式の棚に簡易地下収納、北窓採光に……なんと言っても極めつけは、アイアンウッドの一枚板で作った作業台です。大手工房でもなかなかお目にかかれない希少材なんですよ」
皆がうんうんと頷く様子を見ていると、本当にこの仕事が好きなんだなと感じる。こんな職人さんたちに家を作ってもらえるなんて、私は本当に恵まれているのかもしれない。
「引き渡しは来週だな。ナギ、お披露目やるんだろ?」
「へ?」
私がパンを頬張ったまま聞き返すと、ヴェルンさんが「新居を建てたら、友人やご近所の方を呼んでお祝いをするんですよ」と教えてくれた。
「なるほど……! もちろんやります! 皆さんも来てくださいね!」
「え、おいおい、俺たちは職人だぜ? 邪魔になるだろ」
「そんなことないです。皆さんにも来ていただけたら嬉しいです!」
「そ、そうか?」
「はい、もちろんっ!」
親方は他の職人さんたちと顔を見合わせると、「よし、わかった! 遠慮なく行かせてもらうぜ」と笑顔を見せた。
「はい、お待ちしてます!」
輝くような新居、風に揺れる畑の薬草たち。
そして、待ちに待った念願のお風呂……!
あぁ! 来週のお披露目が、今から楽しみで仕方がない!
きっと、素敵な一日になるはずだ。
お久しぶりです。
三話分だけですが、書けたので放出していきます。




