#13 ふりだしに戻る
「はーあ……あーあ……」
「さあてと、史人……さん? 私たちもさっさと帰ってサラを救出しないと。」
「はー……あーあ……」
「……史人!!」
「は、はい!! ……はーあ……」
いつになく意気消沈したまま歩く史人は、一旦は隣を歩く香美に叱責され背筋を伸ばすも、またすぐにだらりとして歩きため息ばかりを吐き始める。
「いい加減にしてくれないかしら? そのこれ見よがしのため息よ! 道行く人があんたを見てるわよ、私まで同類に見られて恥ずかしいんですけど?」
「……ふんだ、多分香美ちゃんには分からないよ……」
「あ!? 何かしら影でこそこそと? 言いたいことははっきり言ってくんない!?」
「……香美ちゃんには俺の気持ちは分からないだろって言いたいんだよ!」
尚も叱責する香美だが、史人は彼女に対して大声を張り上げる。
「気持ち? あんたの今はいじけてたいってその気持ち?」
「ああ、そうだよ……今ぐらいはいじけさせてくれよ! さっきまでの展開が全部水の泡になったんだ、せめて今ぐらいは!」
史人は香美に、尚も言う。
確かにそれなりには、彼にも同情の余地があると言えなくもなかった。
◆◇
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「何度もそう言ってくださってありがとうございます、学院長! でも……これも何度も言いますが、私たちは自分たちで戦えますから!」
「何? ……くっ!?」
が、サラは一歩も引かずに再度描き歌を発動する。
足りぬ足りぬ、一匹では!
(`Д´) ー〜<<<<≪氵゜<〜<<<<≪氵゜</(`Д ´)/
「く…二匹のドラゴンが!?」
「いいえ、二匹だけじゃありません……もっともっとですよ!」
さあもっと来いドラゴンたち。
(`Д´) ー〜<<<<≪氵゜<〜<<<<≪氵゜</(`Д ´)/
〜<<<<≪氵゜<
〜<<<<≪氵゜<
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〜<<<<≪氵゜<\(ToT)/
「ぐああ!」
サラが生み出した多くの炎のドラゴンにより、風の剣も打ち破られたエドワルドはその場で膝を突く。
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史人がさきほどまで、互いのキャラクターどちらが主人公かを争っていたのは垣原という男。
やがて史人が描いたサラが、垣原の描いたエドワルドに勝ったのがついさっきである。
しかしそれで勝負が終わったと一息吐いたのも束の間。
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「見つけた……ドラゴンを多数召喚できるという娘! 我がクラチカ農場に来てもらおう!」
「え……きゃっ!?」
「な……さ、サラ君!?」
「サラさん!?」
その場にいたエドワルドもクラッペチーノ・ガールズの面々も驚いたことに。
何とサラの頭上に、どこからともなく一匹のドラゴンに乗った一人の騎士が飛来し。
そのままサラは、攫われてしまったのだった――
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突如としてこんな急展開が起こってしまったのである。
それを見た史人は、当然今のように落ち込むが。
――ははは、二出史人……さっきの敗北宣言は取り消しだ! これでエドワルドが囚われていたサラを助け出し、主人公になることができる! 何故かは知らないが、これは僥倖だ! 神に感謝する!
垣原はさながら司祭のごとく天を仰ぎながら、そう高らかに宣言したのだった。
◆◇
「おかげで、せっかくの勝ちが水の泡だよ……もう!」
史人は尚も垣原が言った台詞を思い出し、ため息を吐く。
その歩き方もヨロヨロとしていてしゃんとしておらず、今にも道端に座り込んでしまいそうなほどである。
「……それで? あんたは私にどうしてほしいわけ? 慰めてほしいのかしら?」
「……別に、そんなこと」
「あーもう、はっきりしなさいよ!」
「ひっ!? か、壁ドン……」
そんな史人を見かね、香美は近くのブロック塀に手をつき史人を追い詰める。
今しがた史人も言った通り、さながら壁ドンのごとくである。
「しっかりしなさいよあんた! あんたはミルフィの旦那なの、そしてこの物語はあんたとミルフィの子供なの! そんなあんたがこんなにいじけちゃ、もう物語も終わりよ!」
「も、物語が終わり……?」
香美のその言葉に、史人ははっとする。
「そうよ……この際だからはっきり言うけど、あんたの代わりなんかいくらでもいんのよ! あんたじゃなくてもミルフィの婿候補はたくさんいたんだから、あの垣原以外にもね! だからあんた……このままいじけてばかりだと、本当に物語乗っ取られちゃうわよ!?」
「そ、そんな……ん!?」
「!? え……?」
香美の言葉に尚も動揺する史人だが、次にはその彼も香美も驚く事態が起こる。
――我、螺旋を描く
〜
そこに大口を開け
〜>
こちらを見つめる者あり
〜>゜
それは穴よりこちらを更に強く見つめ
〜>゜)
今にも身体をくねらせて、這い出んとする!
〜>゜)〜〜〜
さあ、とぐろを巻き彼の者を拘束せよ!
〜>゜)〜(T○T)〜
徐に史人の身体は現れた蛇に拘束され、縛り上げられてしまったのだ。
無論、犯人は言うまでもない。
「ああら……ほら、ミルフィも言ってるでしょ! こんなところでいじけてる旦那なんか折檻してやるって!」
「せ、折檻か……」
香美は驚きながらもそう言い、史人は感じ入る。
確かに、今ここで諦めて物語を乗っ取られてしまうことは避けなければならないなと。
◆◇
「わ、分かった……ごめんミルフィ、香美ちゃん! ……俺はまた、いい物語を産む!」
「……まったく、最初からそう言えばいいじゃない!」
史人は蛇に締め上げられながらそう言い。
香美はため息を吐きながら言葉を返す。
……蛇よ、彼の者の拘束を解け!
〜>゜)〜〜〜 \(^o^)/
「うっ! はあはあ……あ、ありがとうミルフィ。」
ミルフィによる拘束も解かれ、史人は地面に転がる。
「……さて。垣原の他にも物語に干渉して来る奴がいるってことだよな! そいつを暴き出そう!」
彼はそのままスクッと立ち上がり、高らかに宣言する。
「ああ、それなら分かってるわ! ……ほら、これを見て。」
「……いや、分かってるんかい! ……え、まさかまた干渉されてる!?」
が、香美がすかさず差し出したユニブルサル戦記の本を、史人はズッコケながらも見る。
すると。
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「ん……? こ、ここは?」
どのくらい時が経ったかわからないが、サラは目を覚ます。
果たして彼女は、特に拘束されることもなく立派なベッドで寝かされていた。
傍らには、綺麗な調度品の数々も見える。
「目が覚めたか……ようこそ、クラチカ農場へ!」
「く、クラチカ農場……? あれ? 私……」
その傍らに調度品の他にいた一人の白銀鎧の騎士が、彼女に声をかける。
サラは朧げな記憶を辿り事態を把握しようとするが。
「その鎧に……クラチカ、農場……? ……あ!」
騎士の鎧とクラチカ農場というワードから、彼女は思い出したのだった。
――見つけた……ドラゴンを多数召喚できるという娘! 我がクラチカ農場に来てもらおう!
――え……きゃっ!?
――な……さ、サラ君!?
――サラさん!?
そう、エドワルドとの戦いが終わりひと段落したと思ったあの時。
突如サラの頭上に、どこからともなく一匹のドラゴンに乗った一人の騎士が飛来し彼女は攫われてしまったのだった。
「あ、あなたは私を攫った……? わ、私をどうする気ですか!?」
サラは掛け布団で自分の身体を隠し、目の前の騎士オーム・クラチカを睨む。
「ああ、まずすまなかった! そなたを無理に連れ出すような無礼な真似、お許し願いたい。」
「え……?」
が、サラが予想しなかったことに。
オームは頭を下げ、そう無礼を詫びた。
「その上でまた願いを重ねさせていただくが、そなたには……そのドラゴンたちを従え、操る力を使っていただきたい! ドラゴンの炎を源として動く大型鎧の完成に貢献してほしいのだ!」
「え……えええ!?」
オームの更なる言葉は、これまた様々な聞き慣れない言葉の集合体であり、サラをますます混乱させる――
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「オーム・クラチカ……? この騎士の名前か!? ドラゴンの炎を源として動く大型鎧……そ、それって巨大ロボットのことか!?」
史人はサラ同様、作中のオームに対して混乱している。
「ええ、それらの情報から既に犯人に目星はついているわ! かつてユニブルサル戦記をSF作品にしようとして候補を外された、和気井鉄也という婿候補よ!」
「わ、和気井鉄也……? また婿候補かよ……」
香美の言葉に史人は、またかつての婿候補と争わなければならないのかと憂鬱な気持ちだった――




