#12 決着と囚われの姫
「何だよ……結局マンネリじゃないか! 恥ずかしくないのか!?」
垣原は取り乱し、更に怒っている。
「マンネリじゃないっすよ! さっき香美ちゃんが言った通りだよ、いきなり新しいものやるよりはこれまでのをちょっと新しくするぐらいでもいいんじゃないかしらってね!」
「へえ?」
香美がふと呟いたさっきのセリフを、史人は引用し彼女は彼を見る。
「これまでのっていうのは、ドラゴンたちの召喚だ。それをちょっと新しくするってなると、新しいものってなんだ?って考えた。他の魔法かって。そうだ、炎の魔法でドラゴンを生成するってな!」
「く……この!」
垣原はまさに吠え面といった表情で史人を睨むが。
「ほら、そんな風に顔動かしてる暇あったら! さっさと手を動かした方がいいんじゃないすか?」
「く……ああ、分かってるよ!」
史人は尚もミルフィを紙面に走らせており、垣原もやむを得ずといった様子でタイプライターに向き直る。
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これは……これはただの火じゃない!」
その形作られし、切先によく似たものは……
(`Д´) ー〜<<<<≪氵゜<
そう、ドラゴンだ!
「ええ、学院長……炎のドラゴンです!」
動揺するエドワルドに、サラは高らかに言い放つ。
「く……いや、まだまだだ! まだ負うた子に教えられるほどじゃ、藍より青くなられるほどじゃないのでね!」
「きゃ! く、学院長!」
が、エドワルドも腕に覚えのある者。
すぐに体勢を立て直さんとして、身体を大きく回しつつ手に持つ剣を振るう。
我、後ろへ回り始める
←(`Д ´)
我、更に勢い付き。
←(`Д ´)←
←((`Д ´)←
回る勢いは、旋風となり。
((((`Д ´)))
そのまま、相手を薙ぎ倒す!
(`Д´) ー〜<<<<≪氵゜< <<ー((((`Д ´)))
エドワルドはそうして、剣を振るう。
それは先ほどまでの純粋な剣による魔法字陣の発動ではなく、魔法を纏う剣による発動である。
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「な……パクったのか!?」
「ははは!」
今度は、史人が垣原を睨む。
今出て来たエドワルドの戦い方は、まさに先ほどサラが見せたものではなかったか。
「まあいい……それはどういうものだったか覚えているだろ? それはサラが発動してエドワルドが破った技だ、だったらサラだってエドワルドのものを!」
「ふん、それはどうかな?」
「何?」
それでも、改めて垣原に啖呵を切る史人だが、垣原は何故か不敵な笑みを浮かべる。
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「く……でも学院長、それはさっき私が見せてあなたが破った技ですよ! そんなものに」
「いいや、君には破られないよサラ君!」
「何ですって? ……ぐっ!」
驚きながらもサラも体勢を立て直さんとするが、エドワルドは尚も攻める。
我が剣の旋風の疾きこと、勢いも凄まじく。
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炎のドラゴンを、吹き消さん勢いである!
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「おいおい……自分だけやたら強いみたいな描写して恥ずかしくないのかよ!」
史人は呆れも入った軽蔑の眼差しを垣原に向ける。
「ふん、いいんだよ! エドワルドはこの話の中でも特別な存在――主人公なんだからな! 主人公だけやたらと強いのはそれも主人公補正! いいに決まってんだろ!」
「く……まだ言うか!」
垣原はしかし、悪びれずそう答える。
「さあ……そろそろサラもクラッペチーノ・ガールズの諸君も限界だろう? 今、楽にしてやるよ!」
「く……」
垣原は俄然勢いづくと、先ほどよりもタイプライターに走る指の速さが増す。
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「やっぱり……学院長は強いですね!」
「ああ、ありがとうサラ君……しかし、申し訳ないな! 私もやりたくてこんなことをやっている訳じゃなかったんだ、ただ知って欲しかった、君たちを最前線に出す訳にはいかないということを! そして僕には、君たちを助ける力が確かにあるということを!」
エドワルドの剣の舞が起こす風が炎のドラゴンを吹き消さんとする中、彼はサラに思いを告げる。
「素敵……」
「やっぱり、エドワルド様が――学院長様が私たちの英雄よ!」
クラッペチーノ・ガールズも、エドワルドのその姿に嬌声を上げ始める。
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「ははは、そうだクラッペチーノ・ガールズ! もっともっと主人公のエドワルドを持て囃せ! さあどうだ史人君? そろそろヒロインのサラ君もどうにかしてくれよ!」
「たく……言いたい放題言ってくれる!」
尚もタイプライターに指を走らせながら垣原は得意げに言い、そんな彼を同じく尚も紙にミルフィを走らせる史人が睨む。
「どうにかできないか? なら……そうだな! ヒロインを迎えに行くのは主人公の役目だもんな!」
垣原はすっかり調子に乗った様子で、史人を見る。
「言わなかったか? ……他を動かす暇があったら、手を動かせって!」
「何? ……な!」
しかし史人のその言葉に垣原は文面を見て驚く。
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「何度もそう言ってくださってありがとうございます、学院長! でも……これも何度も言いますが、私たちは自分たちで戦えますから!」
「何? ……くっ!?」
が、サラは一歩も引かずに再度描き歌を発動する。
足りぬ足りぬ、一匹では!
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「く…二匹のドラゴンが!?」
「いいえ、二匹だけじゃありません……もっともっとですよ!」
さあもっと来いドラゴンたち。
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「ぐああ!」
サラが生み出した多くの炎のドラゴンにより、風の剣も打ち破られたエドワルドはその場で膝を突く。
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「く……やっぱりマンネリかよお前は!」
垣原はタイプライターから手を離し、がっくりと項垂れる。
「だから言ったっしょ? いきなり新しいものやるよりはこれまでのをちょっと新しくしただけだって!」
「……ああ、そうだな!」
史人の得意げな言葉に、垣原は尚も項垂れる。
先ほども言った通り、垣原は既にタイプライターからも手を離している。
これは、もはやここから挽回するだけの展開を思いつかないということだ。
それは即ち。
「その体勢は、もう先の手を思いつかないってことかしら? 即ち……チェスで言えばチェックメイト?」
「ああ……そうだよお嬢様!」
香美の言葉に、垣原は文字通りお手上げをする。
「……そこまで、勝者は史人!」
「よ……よし! これで主人公はミルフィだよな!」
香美の審判としての言葉に、史人も右手をそこに持つミルフィと共に振り上げる。
かくして決着はついた。
◆◇
「まったく……油断さえしなければ!」
「ああ、そうだな垣原さん……俺も負けそうだったと思うよ?」
「……何?」
まだ項垂れている垣原に、ミルフィを左手に移した史人が右手を広げて差し出す。
「あんたの言った通りさ……描き歌の歌姫たちによる歌撃団を作るとか俺にはそんなアイデアはなかった! だからこれからも、俺にそのアイデアをアドバイスしてくれないかな?」
「な……何!?」
史人のこの提案に、垣原も驚く。
まさか、自分がそんなものを求められるとは。
「……ああ、分かった! かわいい婿の後輩として色々教えてやるよ! ……だが、まだ俺はミルフィを諦めていない! お前が隙を見せたら、またこのユニブルサル戦記の主人公もミルフィもいただくぞ?」
「ああ……望むところさ!」
史人のその右手を自身の左手で取り、垣原は立ち上がりながらそう言う。
史人も笑顔を返す。
「うん、いかにもクサイ男の友情を結んだ話してるところ悪いんだけど……ユニブルサル戦記を見てみなさい! 大変なことになっているわ?」
「え!? た、大変なことって……な!?」
しかしそんな場に冷めた言葉で香美が、口を挟み。
史人も垣原もユニブルサル戦記を見て、驚く。
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「く……君たちに、情けない姿を見せてしまった!」
「情けなくなんかありません、学院長! 学院長は十分お強かったです。これからも……私たちに、たくさんのことを教えてください!」
「サラ君……」
膝を突くエドワルドに、サラは手を差し伸べる。
と、その時だった。
「見つけた……ドラゴンを多数召喚できるという娘! 我がクラチカ農場に来てもらおう!」
「え……きゃっ!?」
「な……さ、サラ君!?」
「サラさん!?」
その場にいたエドワルドもクラッペチーノ・ガールズの面々も驚いたことに。
何とサラの頭上に、どこからともなく一匹のドラゴンに乗った一人の騎士が飛来し。
そのままサラは、攫われてしまったのだった――
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