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第九章 吹きだまりの彼

「・・・・・・ベニ、どこへ行っていた?」


 部屋に帰ると、どんよりとした空気を纏ってジャスミンが出迎えてくれた。


「べっつに~?」

「ベニ、頼むから教えて欲しいのだ。」

「なんでジャスミンにそんな干渉されなきゃいけないわけ?」


 私の気持ちもなんにも知らない癖に。


「・・・・僕たちは幼馴染だろう。お互いのことはなんでも知らなくては。」


 ・・・・・・・わけがわからない。 


「・・・・じゃあ、ジャスミンがまず話してよ。今日あったこと。」

「ああ。もともとそのつもりだ。」


 どうせ惚気だろ。一方的な。


「今日はあのお方がお部屋で芋ようかんをつくっていらっしゃる姿を見ていたら、」


 芋ようかんって・・・・しぶっ!


「僕に気づいたあの方が、一緒につくろうと誘ってくださったのだ。」

 

 おい、それ下手したらお縄だったぞ。ヒメユリちゃんが優しくてよかったな。


「それからしばらく二人で芋ようかんを作っていた。」


 ヒメユリちゃんにお近づきになれてよかったですね。


「で、ベニは?」


 ちっ、忘れてなかったのか。


「シレネさんと女子会してた。」


 美味しかったよ。レアチーズケーキ。


「・・・・・なんだと?」

「女子会してた。」


 大事なことなので二度言いました。


「シレネと・・・・。僕が・・・・あんなにとめたのにか?」

「うん。別に私から見ればいい人だしね。」


 普通に優しいと思うよ。ベロナちゃんの恋人だとか好きな人だとかを奪いまくってるということ以外は。いや、本当かは知らないけど。


「あれは・・・・あれは・・・・

「そしたら、告白された。」

「告白ぅ!!!!!?」


 うん。


「あのシレネにか!!?やめろ!!絶対に!!付き合ってはならんぞ!!それだけは僕がなんとしても防ぐ!!!」

 

 あ、やっべ。言葉省きすぎた。


「シレネちゃんじゃなくて、シレネちゃんの幼馴染ちゃんに。」

「シレネちゃんだとっ!!!!?」

「そこはどうでもいいだろ。」


 スルーしろや。


「え?・・・・まぁ、そうだな。って、でかしたぞ!!!ベニ!!ついに彼氏!?いや彼女!!?どっちでもいいが出来たのだな!!!なんとも喜ばしい!!!」


 ・・・・・・・・なんて、


「なんでそれを早く言ってくれなかったのだ!!!すぐにお祝いしたのに!!!」

 

 優しくて、残酷な人。


「ジャスミンは・・・私に彼女とか、彼氏とかができても・・・・いいの?」


 きっと答えはわかってるのに。


「勿論!どこに幼馴染であり親友のベニの幸せを嘆く必要があるのだ!それで?どうなのだ?人柄はいいのか?」

「・・・・・もし、私に彼氏か彼女が出来たら・・・部屋もかえてもらわなきゃね。一緒にショッピングいくのもやめなきゃだめだし、一緒にヒメユリちゃんをストーキングするのもやめなきゃ。」

「え?」

 

 最後のは今すぐにでもやめたいけどね。


「な!?幼馴染だぞ!!?僕たちは!!!なぜ!!!?」

「だって、幼馴染は一番じゃないもの。彼女とか彼氏とかが出来たら・・・・その人が一番でしょ?だから、幼馴染を一番みたいに扱うのはダメだよ。」

「幼馴染とは・・・・・唯一無二で、何ものにも代えがたくて・・・・彼氏よりも彼女よりも尊くて大切なものではないのか!!!?」

「違うよ。」


 違うけど、そうだね。世界で一番愛した人が唯一無二だ。だから、私にとってジャスミンは唯一無二でも他の人にとって幼馴染が唯一無二であることは少ない。だって・・・ほら、ジャスミンにとって唯一無二はヒメユリちゃんでしょ?


「部屋はロゼの力でどうにかして変えてもらおうか。幼馴染だもの。してくれるよね?それで・・・私はショッピングとかあんまり興味はないから、休日は一緒に部屋で本でも読んで、

「もういい。」

「そうなの?・・・ああ、そういえば・・・・


 言い忘れてたんだけど、


「私、その告白・・・・断ったんだよね。」

「・・・・そうか。」

 

 大丈夫?メイク、大分崩れてるけど。都合のいい存在がいなくなっちゃうと思って少し動揺したのだろうか。そうだと嬉しい・・・・・だなんて・・・・私、ヤバいな。最低だ。


「あの、これ・・・・


 なに?


「ベニのために・・・・つくったのだ。二人で。」


 一瞬でも舞い上がった私の心が憎い。私はなんて惨めな女なのだろう。好きな人と好きな人が好きな人が幸せな時間を過ごした証をなんで・・・・私が・・・・・・。きっと、私が最低な人間だから・・・・その罰だな。



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