3話 上
地球においても人里離れた郊外は余所者を拒む危険な土地だが、異世界においては一層注意すべき領域だ。
野犬などの野生動物が問題なのか? そうではない。
獣などはヒエラルキーの下方、弱者でしかない。この世界の大半を支配する存在、それは魔獣である。
魔力を纏い、生物の限界を越えた身体能力を誇る力の体現。そんな者達が闊歩する世界だからこそ、人は古来より町を高い城壁で囲み、脆弱な身を守ってきた。
多くの一般人にとって、魔獣とは相対することだけで絶望すべき存在なのだ。
とはいえ、城壁の外が魔獣で埋め尽くされているかといえば否である。弱肉強食の上位に位置するからこそ、彼らは個体数で見れば獣より更に少ない。そうでなければ、城外の難民街は当の昔に食い散らかされているだろう。
難民街に被害が及びにくい理由は、魔獣個体数の少なさだけではない。
魔獣はその巨体に比例した脳を持つ。人間ほどではないが知性を持ち、損得勘定を行える。
脆弱な人間とて竜騎士という切り札を有しているのだ。魔力を有した獣である魔獣とて、人類種が手を出さない方がいい獲物であることはよく理解していた。
城外の難民街が成り立つのは、こういった理由がある。
「それでも、まったく被害がないわけではないそうですが」
「民には、辛い生活をさせてしまっています……」
「しかし、黒竜軍に対しては等しく無力です。城内も城外も。空からの襲撃は対処が難しいですからね」
イリスは割と頻繁に、難民街に遊びに来ている。城内に住む同世代の女の子とは遊びの趣味が合わず、おままごとに付き合わされた時点で堪らず逃走した。それ以降、彼女の遊び相手は難民街の男の子だ。
「おっ、イリス遊ぼーぜ!」
「それ誰ー?」
「イリスさん。今日もお日柄もよくっ!」
自然、歩いていると友人達が寄ってくる。彼等の興味はイリスより、その隣を歩くアーレイに集まっていた。
「スチュアート、申し訳ないのですが今日は遊べません。リー、彼女は私の連れです。失礼のないように。シャーマン、口説くつもりならせめて落ち着きなさい」
慣れた様子であしらうイリス。
城外に出るようになった当初こそ、見るからにお嬢様な彼女は粗雑な男子達に絡まれることも多かった。母スピアの趣味であるヒラヒラワンピースに身を包み、よくとかされた髪を揺らす彼女は誰の目から見ても深窓の令嬢に他ならないのだ。
しかし小柄な見た目に反しドワーフのクォーターである彼女は筋力も人並み以上であり、更に人体工学に基づいた地球の体術を会得している。駄目押しに、最近は魔法も習得した。
見た目に騙され近付いてきた不良や悪ガキをちぎっては投げちぎっては投げ、いつしかイリスは難民の子供の長になっていたのだった。
「イリス、この方達は?」
「貴方が珍しいだけでしょう。無視して構わないかと」
「イリスさん! そ、そこの露天でペンダントを売っていて……一緒に見ませんか!」
「……まあ」
「無視して下さい。どうせ了承は出来ません」
ちなみに、畏怖や敬意が恋愛感情に達してしまった者も多い。子供の青い恋愛感情などすぐに察知出来るイリスだが、当然それに応えるわけもなく。ひたすら困惑するしかなかった。
「……恥ずかしながら、こちらの街に来たのは初めてなのです」
「そうですか。少し雑多ですが、活気のある場所です。美味しい物もありますよ」
生活の質に上下はあれど、難民と従来の土の国国民との境界は曖昧なものであった。戦争中とはいえ初期の混乱を凌いだことで、むしろ一次産業従事者が増え食料事情は安定したのである。
しかしこのまま平穏には落ち着かないだろう。配給制度は所詮一時しのぎであり、やがて不正を行う者が出てくることをイリスは危惧していた。そうなれば難民街にも闇市が発生し、貧富の差が広がるだろう。
所詮現状は共産主義の初期状態による平和。多少維持出来ていること自体、国家の規模が町単位まで縮小された結果なのだ。
「ここの甘イモはなかなかです。おやつに買っていきましょう」
そんな事情を理解しつつ、憂いるしかないイリス。気を取り直し、屋台で芋を買い求める。
甘イモとは多数の屋台で販売されている、この世界ではポピュラーなスイーツである。しょっぱめのタレが絡んだ甘いイモの団子を串に刺した食べ物だ。
モチモチで安く、安定して美味しい。イリスの知識の限り、地球に類似した食べ物は存在していないが為にこれ以上の記述は残念ながら不可能である。
「お腹が膨れてしまいます。2人で半分にしましょう」
「これって配給用の芋なのですか?」
「いえ、品種が違いますね。きっと余剰分の芋でしょう」
一次産業従事者の税は穀物を直接納める規則だが、その品種は生育が容易く栄養価も高く、かつ保存にも適したジャガイモ風の品種と最初から指定されている。
それより甘味の強いこの露天の芋は、どう見ても別種である。
「そ、それって脱税ですか!?」
「いえいえ。税を納めて余った作物は、個人でどうしようと自由ですよ」
何か勘違いしているアーレイの発想を訂正する。
どうせ税として持っていかれる芋に品質など要求されない。税用の芋を適当に育て、露天で販売する芋を丁寧に育てているのだ。別に違反でもなんでもない。
「そうですか……きゃっ」
猛スピードで走る竜車に轢かれそうになるアーレイ。イリスが咄嗟に手を引っ張り、彼女の身を引き寄せる。
「大丈夫ですか?」
「あ……はい」
赤面するアーレイ。すぐ目の前の美貌は同性すら見とれるほどに整っており、アーレイに初めての感情を
抱かせた。
高まる鼓動は怪我をしかけたことの興奮か、それ以外の理由か。
火照る頬に困惑しつつ、アーレイはイリスに手を引かれる。
「一応城内よりは治安も悪いはずですし、私の側を離れないで下さいね」
「は、はい。解りました」
それは、アーレイにとって楽な行程ではなかった。
乱れる呼吸。額に汗で髪が張り付き、頬は上気している。
「大丈夫ですか? 無理をしないで下さいね」
対して飄々とするイリス。小柄ながら脂肪もなく引き締まった手足は、見た目以上のスタミナを有している。
「あと、どれくらいですか……?」
「もう少しです。もう一踏ん張りですよ」
背負っても良かったが、それでは趣旨に反することからイリスはあえてアーレイを自分の足で歩かせていた。
「竜騎士になるなら体力を付けないといけませんね」
「ぜ、善処します……」
話しつつ2人が登るのは、クルツクルフの端に建てられた見張り台。黒竜軍の襲来に備えたものというよりは、肥大したクルツクルフの難民街に魔獣が接近してきた際の備えだ。
魔法で作られた土の塔は無駄に強固かつ巨大で、上部展望台の広さもトラックの荷台程度には大きい。
見張り台には兵士の他にも一般人の男女や暇をもて余した老人などがいる。ここは本来の目的を離れ、市民の憩いの場としても機能しているのだ。
そんな説明を聞いたアーレイは疑問を抱く。
「ここって軍事施設ですよね、一般の方は立ち入り禁止では……?」
「その通りですが。まあ、誰も守っていませんね」
数歩先んじて見張り台に到着するイリス。振り返り、逆光の中アーレイに笑いかける。
「風は神様の歌声なのです。アーレイにも聞こえるはずですよ」
イリスの金髪が風に躍り、アーレイの頬を冷ます。
彼女は僅かに気力が戻るのを、確かに感じる。
薄暗い塔内部の階段から、光に満ちた見張り台への出口に、恐る恐る飛び込む。
刹那の白色。
視界が戻った時、目の前に広がっていたのはクルツクルフの町を一望する景色だった。
何もない小さな展望台。薄暗い闇より一転、光に満ちた世界がアーレイを驚かせる。
見れば、イリスは両腕を真っ直ぐに伸ばし、鳥のように風を全身で受けていた。
「飛べましたか、アーレイ?」
「……飛んだ、気がしました」
「ふふっ。私のいった通りでしょう?」
してやったり、としたり顔のイリス。
アーレイは確かにイリスの背に、白亜の翼を幻視する。
「イリスは、貴女は飛べるのですね」
「アーレイも飛べますよ」
アーレイもイリスと並び立ち、両腕を広げてみる。
深く深く深呼吸。次の言葉は、意識する必要もなく自然に出た。
「イリス」
「はい」
「お友達になりましょう?」
珍しく驚くイリス。これほど率直な友人関係のお誘いは初めてだった。
友人など宣言してなるものではあるまい。そんな言葉が漏れそうになるも、それも無粋かと考える。
初めての他者との距離感に苦笑しつつ、首肯。
「はい、私で良ければ」
握手するイリスとアーレイ。
無関係だった二人の少女は、こうして友を得た。
天涯付きのベッドで目覚めたアーレイは、世話係のメイドが来る前に起き上がり窓を開いた。
「夢、ですか」
朝の冷たい風が室内を嬉々と走る。イリスが神様の歌声と称したそれは、しかしアーレイには別の人物の声に聞こえる。
「ふふっ、今日も元気一杯ですね」
最近のアーレイは少し変わったと噂されていた。どこかの誰かの癖が移ったのか、空を見ていることが多いのだ。
「貴女は今、どこで何をしているのですか?」
愚問であろう。どこにいるかは判らないものの、何をしているかなど明白だった。
「今日もいい天気です、イリス」
きっと、同じ空を見ているに違いない。そんな確信を胸に、アーレイは大きく伸びをする。
健康的に反るしなやかな四肢、蒼い髪は朝日に煌めき肩から溢れ落ちる。
「失礼します。アイギ……ス、様」
それは、入室したメイドが思わず立ち止まるほど美しい絵画のような光景で。
「どうしたのですか? レーメ?」
呼ばれた名に我に返り、メイドはそそくさと頭を下げた。
「お目覚めでしたか、アイギス様」
「はい。こんないい朝ですから」
にっこりと笑うアーレイ改めアイギスに、メイドは噂が真実であると確信した。
「……姫様、頑張って下さい!」
「は? えと、何をですか?」
「姫様ならどんな相手でもイチコロですよ!」
アイギス姫は、幼い恋心を誰かに抱いている、と。
美しい姫の届かぬ想い。まさに噂好きのメイド達にとって格好の酒のつまみだった。
「……解っています。水の国から着いてきてきてくれた貴女の為にも、もっと頑張ってどんな相手でも倒せるような竜騎士となります」
「そんなことはどうでもいいんですっ!」
「どうでも!?」
しかしメイド過半数を越える「残念だけど悲恋で終わる派」とは違い、世話係のレーメは姫の勝利を信じていた。自覚こそ薄いが、アイギスもまた傾国の美少女なのだ。
「このレーメは、アイギス・クレンゲル・ミスティリス様の戦いを全力で支援致します!」
「……ありがとうございます?」
釈然としない表情で曖昧なお礼をするアイギス。
アイギス・クレンゲル・ミスティリス。水の国の名を持つ彼女は、亡国の忘れ形見であり王族として唯一の生き残りだった。
後見人である土の国の王フラン・ベルジェ・アーヴェルアとは血の繋がった家族のように親しく関係を築いており、同時に安全な場所で生活するように説得されているが、彼女の意思は固く未だ見ぬ故郷を夢に続けている。
イリスとの邂逅より2年。6歳となった彼女は、人知れず胸に小さな決意を秘めていた。
……暴走癖は、悪友より伝染してしまったのかもしれない。
イリス6歳、燦々と太陽の照り付ける夏の日。直射日光は等間隔で整列した少年少女にも容赦なく降り注ぎ、イリスは密かに熱中症の心配をし始めていた。
「話、長すぎです……」
ここはクルツクルフ防衛本部の広場だ。騎士候補生として見事試験を突破したイリスは、本日を以て末端ながら軍人となる。
クルツクルフ防衛本部への入団年齢は、奇しくも日本の小学校と同じ6歳だった。一月前に行われた様々な学問試験や身体能力測定、魔法実演などを経て合否は判断され、イリスは全てを合格ラインで突破した。
実をいえば、徒競走など幾つかの成績はかなり際どかった。体格的に手足の短いイリスはどうしても速度に限界がある。
しかし筆記試験や魔法試験は全問正解だった為、期待の意味を込めて滑り込み合格したのだ。
講師がテスト製作の際、冗談半分で入れた連立方程式の数学問題を正解してしまったことが効を奏したといえる。
クルツクルフ防衛本部の入団式は例年の通り屋外で行われている。まだ幼い彼等には美しい敬礼も微動だにしない起立も期待されてはいないが、その中で悪目立ちするほど揺るがず直立している人物こそイリスだった。
その様はまさに軍人。無となり大木の如き不動を貫く様は、歴戦の騎士を思わせる。
「校長今日も絶好調……はぁ」
しかし、内心は面倒な挨拶が早く終わることを祈るただの学生である。
他の候補生達は緊張やら興奮で落ち着かない様子の中、イリスだけが暇そうに目を細める。前世の経験が活きた、貫禄の学生っぷりであった。
視点を動かさぬまま、端目で同級生となる候補生達を数える。
およそ40人。クルツクルフの様々な場所で行われた入団試験、イリスがテストを受けたその一ヶ所だけでも100人以上集まっていたことを考えれば、希望者は合計1000人にも達していたかもしれない。
あたらめて高い倍率を突破したことに安堵していると、一人の男が壇上に立った。
候補生達がざわめく。男がわざとらしく咳払いすると静寂が戻るも、先に挨拶をしていた教導官以上の注目を向けられていた。
男が眉間に皺を寄せる。候補生達は機嫌を損ねてしまったかと焦るも、イリスはそれが慣れない子供達の視線に困惑しているだけだと看破した。
「……ルバート・ブライトウィルだ。第三騎士団の団長を勤めている」
ぶっきらぼうに自己紹介するランス。イリスの父である。
絢爛な騎士服、胸元に着けられた無数の勲章。その中でも一際美しい1つに、少年少女は目を輝かせた。
「……多くは語るまい。諸君等の研鑽と奮闘に期待する」
いや、語れよ。イリスは内心つっこんだ。
口下手であることは承知しているも、最早挨拶として最低限に達していない口上。しかし候補生達はそのぶっきらぼうな立ち振舞いに「これが純粋戦士か」と感銘を受ける。
誰も騎士団を率いる英雄が口下手だなどとは思いもしないのだ。
候補生達が案内されたのは本部の一室だった。
実用一辺倒の飾り気のない机と椅子が並び、その先には大きな板が壁に固定されている。
色々と異なる部分はあるも、まさに教室であった。
「座席はこの紙に書いてある、各自チェックしとけー」
適当な説明をして撤退しようとする男性に、イリスは慌てて訊ねる。
「あの、我々はこれからどうすれば?」
「は? あのなぁ、お前達はもう子供扱いされる身分じゃないんだ。自分で考えろっての」
パワハラだ、とイリスは思った。
しかし軍隊が理不尽に耐える訓練をする場所であるとイリスも知っている。「申し訳ありません」となに食わぬ顔で返答。
むしろ反発してくることを予想していたのだろう、男はぎょっと驚きつつも退室していった。
男を見送り、そっと溜め息を吐く。
そして注目を集めていたことにふと気付き、悩み、ぎこちない作り笑顔で提案する。
「とりあえず、自己紹介しましょうか」
こういう言い出しっぺは得てして面倒事を押し付けられるポジションになりやすい。イリスが提案することを悩み躊躇ったのは、それが嫌だからである。
「アーレイ・バークと申します。気軽にアーレイ、と呼んで下さい」
美しい青髪の少女が挨拶すると、誰とも知らず小さく感嘆の声を漏らした。
慣れない騎士服も、彼女が纏えばドレスと見紛うほど様になっている。アーレイは室内を見渡し、イリスを発見して笑顔で手を振った。
「お久しぶりです、イリス」
「はい、お元気そう安心しました。ですが驚きましたよ、なぜ貴女がここに?」
「私も騎士志望ですから」
「それで納得するわけにも……」
苦笑するイリス。
イリスがアーレイを城から連れ出したのは一度や二度ではない。そう頻度が多いわけでもないが、一月に一回は連れ出すか忍び込んで逢瀬を繰り返していた。
時間を共有し続ければ、やがてアーレイの正体も看破してしまう。もっとも、今の関係が気に入っているイリスはそれを口にするつもりはなかったが。
そんな気遣いも、色々と台無しな再会であった。
「本当はイリスに会いに来ました。これでずっと一緒ですねっ」
直球であった。
キラキラと瞬く視線の光に引き、とりあえず反論する。
「四六時中は難しいのでは?」
「相部屋ですよ、私達」
なぜ発表される前から知っている、とつっこみたいイリスだった。
国家権力とは恐ろしいものなのである。
アーレイの自己紹介もほどほどに、遂にイリスの順番が訪れる。
僅かに緊張を孕みつつ、それでも毅然と名乗る。
「イリス・ブライトウィルです。よろしくお願いします」
奇妙な沈黙が教室を支配した。
何かしくじったか、と焦るも心当たりがない。やがて誰かがポツリと呟いた。
「……ブライトウィル?」
「それって第三騎士団団長の名字と同じだよな?」
「イリスさん、もしかして親戚?」
注目が集まり、たまらずイリスは両手を挙げて降参を示す。
「……父です。私は、ルバート・ブライトウィルの娘です」
おぉー、と教室中から感嘆の声があがった。
「すっごーい、イリスさんのお父さんって爛舞騎士なんだ!」
「英雄だろ英雄、ルバート様の前には黒竜軍でさえ道を譲るって聞いたぜ!」
「黄金ナントカ付金剛騎士って奴だろ! 見たのは初めてだ!」
「黄金柏陽剣付金剛双翼勲章騎士、ですよ」
イリスが訂正する。
黄金柏陽剣付金剛双翼勲章騎士。世界に13名しか選ばれぬ、最高の騎士の称号。
その起源はかつて存在した伝説的竜騎士だ。戦場で数々の武勲を上げる彼に時の王は勲章を与え続けるも、遂には全種類の勲章を送ってしまい次がなくなってしまった。
しかし戦果には名誉を以て答えなければならない。そこで、新たな勲章を新設することにした。
彼と同等の騎士が多く生まれることを願い、彼以外の分として更に12個用意された勲章。戦士として一つの到達点に達した者だけに与えられる、人類最強の証明。
イリスの父は、そういった人種であった。
「お父さんに頼んで、私にサイン貰える?」
「家に遊びにいけば握手出来ないかな?」
「ルバート様の指導を受けられるのか?」
「バルドディに乗れたらなーって」
候補生達はイリスに殺到する。これが嫌で、イリスは名字を明かすのを躊躇ったのだ。
しかしこれから長年共に過ごす同級生達であり、隠し通すことなど不可能。故に素直に話した。
「会いたければ構いませんよ」
この事態はイリスも想定しており、対策は既に講じてある。
「しかし父上はとても気難しい。気に触るようなことを口走ってしまえば、黒竜すら失神するような目で睨まれるかもしれません」
かもしれないだけ。嘘ではない。詭弁であった。
ルバートは無口で無愛想だが、子供嫌いでない。これから候補生と廊下ですれ違う度に過度に緊張されて少し傷心することとなるが、どうでもいい余談であった。
「イリスのお父様はルバート様だったのですね。実はあの方とはちょっとした縁があります」
頬に手の平を当て首を傾げるアーレイ。
「爛舞騎士の方とは何度かお会いしたことがありますが、やはり他の方とは纏う空気が違いますね」
気のせいだろ、とイリスは即断した。
爛舞騎士とは黄金柏陽剣付金剛双翼勲章騎士の通称だ。あまりに長すぎる為、正式名で呼ぶことなど滅多にない。
候補生達は直接的な接触こそ諦めたものの、憧れの英雄との邂逅に色めき立ち盛り上がる。
「数十匹の黒竜に追われて、部下を逃す為に一人残ったって話もあったよな!」
「知ってる知ってる! 部下が大急ぎで援軍連れて戻ってみれば、一人で殲滅した後だったんだろ?」
「野営中に奇襲されて、生身で3匹殺したって噂もあるぞ!」
「それ噂じゃねーよ、親父が実際にその場にいたんだ! ルバート様がいなければ終わってたって話してた!」
イリスは父の武勲を聞く機会などあまりない。
ルバートも戦果を誇示するタイプではないし、妻のスピアも戦争の話は避けているのかはたまた単に興味がないのか、家で遠征先でのことを話題にすることは少ない。せいぜい「栄養のある物を食べて下さいね」程度だ。
だからか噂話の内容はイリスにとっても興味深く、いつしか聞き耳を立てていた。
「イリス、イリスっ」
「あ、はい。えーと、なんです? ちょっと後でいいですか?」
「うううっ、イリスが構ってくれません……」
見えない所で色々努力した結果、やっとの思いで許可を得て入団を果たしたアーレイ。
遙々ここまで来たというのにこの仕打ちということで、アーレイはちょっと泣きたくなった。
「今日は初日ということで、皆さんの魔法を確認します」
竜騎士にとって魔法は重要な技能だ。火砲の存在しないこの世界においてほぼ唯一の長距離攻撃手段であり、メインウェポンにはなりにくいものの習得は必須といえる。
よってクルツクルフ防衛本部での教練も魔法は重視されており、専門の教師を前に座学を基礎から始めるのが常であった。
朗々と小難しい理屈を並べる教師使い。
「……のようにして、魔法とは精霊様に祈りを捧げ発動して頂くものなのです。その難易度を高めているのはやはりイメージの難しさであり……」
既に何度も考察した内容に、やがてイリスは欠伸を噛み締める。復習として聞くにも、あまりに基礎知識過ぎた。
「では早速、実際に魔法を使ってみましょう。全員前に出てきて下さい」
彼等教師役の本職は騎士だ。故に教え方も下手であったり粗雑なことが多いのだが、この中年女性の魔法使いは少し毛色が違う。
妙に前世の先生っぽいな、眠気を誘うことも含めて。そう思いつつイリスは他の候補生と共に教室前方の空間へと出た。当然の如く隣を確保するアーレイ。
「では、前の机を少し下げて……はい、その辺で」
指示し教室前部に広い空間を作り、魔法使いは黒板に呪文を書き出す。イリスは懐かしさを覚えた。
彼女も最初はこの魔法で練習した。初心者お約束の魔法なのだ。
「これは第十級魔法『アーク』。土系統では最弱の魔法であり、十個の小石を打ち出すだけです。十個全てが直撃すれば当然痛いですが、相手に何発当てるかで加減を調節出来るので大怪我をさせたくない時などに重宝するでしょう」
第十級魔法は辛うじて生物を殺傷可能な最低限の威力しかないとされている。それが更に10分の1だ、威力は推して知れる程度だろう。
事前に用意されていた袋をひっくり返すと、無数の小石が机の上に落ちる。
魔法使いは手を翳し、詠唱する。
「十の戒めよ、アーク」
小石が浮き上がり、机の上に慣れべられた的へ向かって射出。さすがの制御力というべきか、的は全て同時に弾け飛んだ。
「今日は特に小さい石を集めておいたので、仮に全て直撃しても痛くはないでしょう。失敗を恐れず思いきり魔法を試して下さい」
恐る恐る、あるいは自信をもって魔法を発動させていく候補生達。
「次、ダガー君」
「はっ、はい!」
名を呼ばれた候補生が石の前に立ち、黒板を横目で見ながら詠唱。
「じゅ、十の戒めを! アーク!」
「呪文は正確に!」
叱責され、とぼとぼと下がる少年。
未だ初歩の初歩、この段階で魔法の適正を判断することは難しい。
とはいえ上手く撃ち抜けた者や制御に失敗した者など、それぞれ彼等は一喜一憂する。
やがて、遂に二人の出番が来た。
「次、アーレイ様!」
「様?」
「さま?」
「サマ?」
「コホン……はい」
魔法教師の失言を咳払いで誤魔化し、アーレイは前に出る。それまでの実習以上に注目が集まった。
見目麗しく高貴な色香を纏うアーレイは、名実共に美姫として評されていた。その出生を知るのは極一部だが、彼女が何らかの一種の姫であることは誰にだって明白だ。
「土魔法は得意ではありませんが……十の戒めよ。アーク!」
アーレイの制御は見事であった。教師と遜色ない鋭さで石つぶてが的に直撃し、候補生達は歓声を上げる。
息を吐き、クールに踵を返すアーレイ。しかしそれなりに付き合いの長いイリスは、彼女がどこか自慢げに頬を染めていることに気付いていた。
「次、イリスさん!」
「はい」
前に立ち、今更ながらどうしたものかと悩む。
アークは本当に初歩魔法であり、イリスとは相性もいい土系統だ。間違っても失敗などしない。
しかしイリスはランスやスティレットから目立つ行いをしないように注意されており、彼女としても積極的に悪目立ちする趣味はない。
七割、と小さく呟き魔法を発動する。
宣言通り、7つの的が跳び3つが残る結果となった。
竜騎士候補生は親元から離れ、クルツクルフ防衛本部に隣接する宿舎に住まう規則だ。
イリスの実家は本部に近い……というより本部と近い物件をルバートとスピアが購入したのだが……ともかく、徒歩での通勤に支障のない距離だ。
しかしそれでも規則は規則。非合理でこそあるが、親の世話なしで集団生活出来ないようでは騎士にはなれない。
若い候補生達の自立心を育む、という意図もあるのだ。
「楽しみですね、イリス」
「宿舎に何を期待しろと……?」
初日の授業を終え、イリスとアーレイは指定された部屋へと向かう。
二人は完全な手ぶら、鞄一つ持っていない。この世界の住人ならば誰でも使える簡単な魔法を使えば、ある程度の荷物は持ち歩ける。
候補生の部屋は5、6人が住まう狭苦しい相部屋だ。しかし何故か、イリスとアーレイに限って狭いながらも二人部屋を与えられることとなった。
「イリス、ここが……えっ?」
「これはまた、狭いですね」
室内に入った時アーレイはその狭さに愕然とした。城と比べればあまりに小さく、物置と間違えたのかと勘繰るほどだった。
刑務所の個室ほどの面積。イリスとしては、「妥当なところ」と苦笑するだけだ。
この遠慮のなさはきっと父上に違いない、イリスはそう察する。他の候補生から不平不満が出ないように、二人部屋の分、小さな部屋を選んだのだ。
他の者ではとても、畏れ多くアーレイにこのような部屋を与えられない。一番大きく日当たりのいい部屋を与えただろう。
二畳程度の部屋に私物を広げるべく、二人は魔法を発動した。
「来たれ、アポート」
第十級魔法アポート。格納魔法とも呼ばれる、物体を持ち運ぶ為の魔法。
1立法メートルの体積に納まる非生物であれば、どんな物でも仕舞うことが可能な魔法だ。
パン、という音と共にドサドサと転がる私物。私物といっても、イリスの持ち込んだものは木の板や釘、そして工具などだ。
「うう、この変な音は苦手です」
「物体が空気を押し退ける際の、衝撃波と気圧変化ですね」
「ショートケーキ派と……なんですか?」
魔導血界領域より収納物を世界へと戻す際、その空間に存在した空気は周囲へと押し退けられる。
瞬間的に大気が膨張するのだ、規模が小さいとはいえ衝撃波とて発生する。しかしその原理はほとんど深く考察されていない。
「さて、この狭い空間をどう振り分けますか?」
「ベッドだけで部屋が埋まってしまいますね」
アーレイがイメージしているのはクルツクルフ城の自室にある、天涯付きベッドだ。そんな物を運び込めば、文字通り部屋が埋まるだろう。
しかし、イリスの愛用する平均サイズなベッドであっても窮屈なことには変わりない。
「仕方がない。小さな二段ベッドでも用意しましょう」
ここまで狭いと、空間を縦に使って少しでも無駄を減らさねばならない。
「木材を貰っておきました。ここに棚を作ります」
「贅沢はいいませんが、机は必要かと」
アーレイはイリスと一緒なら、大きな河の側に建つ三畳一間の小さな下宿であろうと我慢出来る自信があった。
とはいえ学徒である以上、書き物をする机は必要だ。
「ですがもうスペースがありません」
「板を蝶番で壁に固定して、普段は壁と同化させておくということで」
窓枠の下にスクリュー釘で蝶番を設置するイリス。
「あの、化粧台はどこに……?」
「目の前にあるではないですか」
この木肌を磨かれてもいない粗末な木板が、彼女達の部屋における勉強机兼食卓テーブル兼化粧台である。
崩れ落ちるアーレイ。
「少し狭いのは仕方がないでしょう。ですが、これはちょっと……」
想像以上に窮屈な空間に、カルチャーショックを受けるアーレイ。
「そうですか? 私は少し、楽しいのかもしれません」
人間、下手に大きな部屋より小さな部屋の方が落ち着くものだ。秘密基地を作る感覚で、嬉々と工具を振るうイリス。
瞬く間に棚が完成する。
「イリスは器用ですね。大工仕事も出来るなんて」
「大工仕事、なんて大層なものではありません。ですが、これでもまだ荷物を置ききれそうにないですね」
何か特定の用途に使用する部屋であれば、この広さでもなんとかなったかもしれない。
しかし長く生活し続ける部屋だ、もう少しゆったりと寛げるスペースが欲しいところだった。
「ベッドをこれ以上小さくするわけにはいきません……いっそ三段ベッドにして、一段分は物置にしましょうか」
「あの、イリス」
おずおずと挙手するアーレイ。その頬は微かに赤く、視線も泳いでいる。
「その、私と、一緒に寝れば、大幅な空間節約になるのではないでしょうか」
それは彼女にとって一世一代の大胆な発言だった。
男女七歳にして席を同じうせず。ましてや同性である。
自らのふしだらな提案に頭が茹で上がりそうになりつつも、アーレイは願望を吐露してしまう。
何せ同性である。同性と同衾など、えっちなのである。
「なるほど、そうしましょう」
クールであった。
あまりにもクールであった。
何故か突っ伏して意気消沈しているアーレイに首を傾げ、イリスは手早く工事を始めるのであった。
「ところでイリス、私物はないのですか?」
「バルドディに持ってきてもらう手筈です」
「バルドディ、ルバート様のドラゴンですね」
竜騎士とドラゴンは一心同体。爛舞騎士であるルバートと同じく、その優秀な相棒たるバルドディもまた広く名を知られている。
名高いドラゴンであるバルドディを荷物持ちにするあたり、イリスも大概図太い神経の持ち主だ。
「噂をすれば、ですね」
窓の外に影が指す。バルドディが到着したのだ。
緩慢な羽ばたきでホバリングするバルドディ。イリスは早速、ベッドの材料を出してもらう。
「大きめの角材と板を適当に」
低く鳴き、バルドディはアポートを使用した。
彼の魔導血界領域内に収まっていた材木がゴロゴロと出現する。その量はイリスやアーレイのアポートより多い。
これが土竜の特性、格納魔法の無制限発動だ。人間は体積に制限があるも、土竜は確認されている限り無制限に非生物を収納出来るのである。
商人にとっては有り難い能力だが、重くて鈍重な土竜は戦闘に適していない。彼等が戦闘に不向きと称される理由である。
「むぅー」
「やはり熱の問題がない分、制約が少なそうですね」
「むぅーっ!」
「しかしやはり、私の手に余ります。あまりお爺様に頼るわけにもいきませんし、現状これ以上の研究は……」
「話を聞いて下さい、イリス!」
「そんな、思い出したように膨れられても」
頬をぷー、と膨らませ遺憾の意を示すアーレイ。
イリスの実験を眺めていた彼女は、数刻前の魔法授業を思い出したのだ。
相部屋に住むこととなったイリスとアーレイ。持参したアンティーク調の椅子に腰掛け足を揺らすアーレイは、机に向かって必死に作業するイリスの揺れる金髪の頭頂部をじっと眺める。
「イリス様。 ……間違えました。イリス」
「どう間違えれば私を様付けするというのです」
これでは作業が進まない。区切りを付け、イリスも顔を上げる。
「どうして、授業で手を抜いたのですか」
アーレイはおおよそイリスの実力を把握していた。アーレイがイリスには及ばないことを知っていた。
一部上級魔法すら使える彼女が、第十級魔法にしくじるはずがないのだ。
なるほど、友人の不真面目が気に食わないのか。イリスはそう解釈する。
「まあまあ、いいではないですか」
「あの時、周りの方々がちょっとがっかりしてました!」
まだ幼いこともあり、周囲の期待も致し方がないことだろう。
数々の遠征任務にて武勲を上げてきた第三騎士団。彼等歴戦の戦士達を率いる団長ルバート・ブライトウィル。
黄金柏陽剣付金剛双翼勲章騎士の娘ともなれば、常に相応のプレッシャーが付き纏う。それこそイリスの中身が成人男性でなければ、歪みかねないほどに。
人々の視線は様々だ。期待、嫉妬、信望、そして侮蔑。
どう立ち振る舞おうと何かしらの感情を向けられる。しかし、イリスはそれを歯牙に掛けるほど繊細ではない。
空さえ見上げていれば、おおよそ幸せなのだ。
「いいのですよアーレイ」
「よくありません! イリスが低く評価されるなど、到底許容出来ません!」
何故私の評価をアーレイが気にするのか、そう訝しむもすぐに得心する。
「私の為でしたか。ありがとう、アーレイ」
「あっ、いえ、その……」
もじもじと赤面するアーレイ。
「……も、もういいですっ! イリスが気にしないなら、私も気にしません!」
「はい、そうして下さい」
若干の罪悪感を覚えつつも、それをアーレイに吐露するわけにはいかず笑顔で誤魔化す。
イリスは自己保身の為に実力を控えて行動している。自己犠牲を顧みず祖国の為に戦場を目指すアーレイとは、まったく逆のスタンスだ。
土の国を守るという決意は嘘ではない。しかし、その手段には常に迷いが付きまとう。
技術者となるべきか。指導者となるべきか。戦士となるべきか。
その迷いの根幹には、空を飛びたいという私的欲求が常に存在することは否定出来ない。
むしろ、アンドリュース大臣の誘いを断り学者の道を拒否したのは欲求以外の何物でもないのだ。
「それで、その。イリスは先程から何を?」
机の上に広げられた道具や設計図にアーレイは疑問を浮かべる。
イリスが不可思議な物を製作するのは今に始まったことではないが、今日製作しているそれはアーレイも見たことがなかった。
一本のシリンダーにフライホイール。そして申し訳程度の簡単なプロペラ。
それは極簡単な構造ながら、単気筒エンジンの模型であった。
「これはアポートを応用した機関、つまり回転を産み出す装置です」
「格納魔法……ですか?」
イリスが最も注目してきた魔法。それは戦闘魔法でも加工魔法でもなく、この格納魔法だった。
「私は不思議でした。アポートは既に存在する物質を押し退けて顕在する、ならば押し退けられない状況であればどうなるのでしょう?」
かべのなかにいる、では済まないのだ。
イリスは最初、近所の池で実験を行った。
水中にて水を出現させた結果、大きな水飛沫が上がった。
「アポートによる圧力上昇は、『押し退ける』なんて生半可なものではありません。これはもう『爆発』です」
それが小規模であれば、或いは大気中であれば影響は少ないだろう。だが体積の変化が少ない液体や固体であった時、それはまさしく爆発となる。
かつて兵器を扱っていたイリスだからこそ、衝撃波の恐ろしさを知っていた。爆発は時に人体を内側から破壊する。
間違っても、面白半分で手を出していいエネルギーではない。
……この結論に恐ろしくなるのが普通だが、生憎イリスは普通ではない。
「次に私は、空樽に空気を詰めてみることにしました」
密閉容器である樽に、空気をひたすら圧縮する。ある程度距離を取り防御を固めていたとはいえ、とても危険な実験であった。
「樽は意外と丈夫なもので、かなりの空気を圧縮することが出来ました。最終的には爆発しましたが」
断熱圧縮によって樽は燻り、やがて爆発。
クレーターが穿たれる始末である。
「クルツクルフの郊外で実験していたのですが、いやぁ誤魔化すのが大変でした。荒野に小さな窪みが出来ましたからね」
「数ヵ月前の郊外魔法暴発事件の犯人、イリスだったのですか」
目撃者の少女から得られた証言より、騎士団は老齢の魔法使いを追っている。
誰も第一発見者の少女が犯人だとは疑わなかった。
「これは、凄い発見をしてしまった。私はそう確信しました」
「もしかして、イリスはこれを攻撃魔法として使うつもりですか?」
「それも面白いですが、今回は別の用途を目指しています」
目の前のエンジンに接続された容器。魔法陣の刻まれたそれに手を添えるイリス。
「この原理の真価は『誰にでも扱える』ことと『極めて高いエネルギー効率』。圧縮空気さえあれば、術者がその場を離れても動き続けることもまた利点でしょう」
この魔法陣にはアポートの魔法が刻まれている。魔力を注げば一定量の空気を放出し続ける、専用の術式だ。
「エネルギー効率、ですか?」
「はい、この通り」
魔力を注げば空気が圧縮され、プロペラが回転し始めた。
「涼しいです」
「え、これだけですか?」
パシュパシュパシュと空気音を繰り返しつつ回るプロペラ。地味である。
「確かに風は来ますけれど、風魔法でも充分では?」
「涼んでいる間、ずっと魔法を使い続けるわけにもいかないでしょう」
イリスがエンジンより手を放すも、プロペラは回転し続ける。圧力容器内の空気が減圧しない限り、ずっと回り続けるのだ。
「確かに回り続けてますけど……イリス、これが何の役に立つのですか?」
「何をいっているのです、これは世界を変える技術です」
かつて工学輪唱杖に関して『劇薬』呼ばわりされたイリスだが、彼女の見解は異なる。
地球の歴史を知るイリスにとって、これこそ真なる『劇薬』であった。
自分用に作品用語の一覧を作っているのですが、おまけとしてちょくちょく載せていこうかと思っています。
第一回として、騎士団について。
第三騎士団
ルバート率いる、遠征を得意とする騎士団。割と脳筋。
名前の由来は作者がちょうどコッペパンを食べていたから。
第五騎士団
前線維持に活躍する騎士団。戦力的に特色はないが、故にバランスはいい。
当然のごとく、由来は焼きそばパン。




