プロローグ 1 おっぱいたちの国
おっぱいの話をしようと思う。
出だしからこんな話で大変申し訳ないのだが、だって僕が話したいことといったらやっぱりこれなのだ。形状・質感・大きさも千差万別で極めればおっぱいを見るだけで個人を特定することも可能だという(いつも露出していることが前提である)。
もともと生物のメスにおけるおっぱいの存在意味は子供に母乳を与えることなので多くの生物のおっぱいはブラブラ垂れていたりぺったりへばりついたりしているだけな場合が多い。
しかし人間は進化とともに二足歩行になったことからよく見える位置におっぱいがきた。そこでメスがオスを誘惑する為に人間のおっぱいは大きく発達していったのだ(僕の推測)。
つまり何が言いたいかといえば普段二本足で立っている女性は皆総じて男性を誘惑しているということなのだ!
ということで。
「佐々木隊員。そちらの状況はどうですかっ!」
僕はできる限り声を押し殺し横にいる人物に声をかける。全身を上下一体の迷彩服で覆いゴツイ双眼鏡のようなものを持っているのは佐々木隊員である。
「侵入目標の周辺には街灯を除いて人工の光源は見当たりません!」
よし! ここまで順調である。僕と佐々木隊員は夜の闇に紛れるようにしてある建物の侵入を試みていた。警備は厳重で監視カメラと警備員の巡回が確認されている。現在建物の裏口の手前の木陰で状況を整理しているのだ。
「では佐々木隊員。あの裏口の監視カメラだが、あれは常時左右に振れている。事前調査だと一往復するのに二十秒。つまり死角ができるのは半分の十秒もない。しかしあのカメラは不審なものを映すと一定時間そのまま停止する。その間に入口の鍵の解除を、中へ侵入する」
「了解。では自分が鍵を。坂口隊員は不審物の真似をお願いします」
佐々木隊員はそう言うと迷彩服に装着していた暗視ゴーグルを収納するとかわりに先の折れ曲がった針金を取り出した。ネットでの知り合いに作ってもらったピッキング用の針金である。南京錠から簡単な作りのドアの鍵まである程度なら十秒から三十秒で開錠可能である。彼はこの日のために色々な鍵で練習していたのだ。
「では坂口隊員、準備を」
彼は針金を構えると真っ直ぐに裏口を見据える。僕はビシッと親指を立てるとそのままゆっくりと監視カメラの隅に映る位置に移動した。そしてかすかに動く。
途端、監視カメラの上部のランプが赤く点滅し始める。佐々木隊員はそれを合図にドアまで駆け寄ると鍵穴に針金を差し込む。そして奮闘すること数十秒、「カチッ」という音とともにドアが開錠された。
僕は一旦陰まで退散する。そして再度監視カメラの死角になるのを待ち、ドアの内側へと侵入した。佐々木隊員は先に内側で潜入の準備をしていた。
「佐々木隊員、お見事!」
「坂口隊員こそ囮役お疲れ様です!」
僕はそう言うと背負っていたリュックからPCを取り出し起動。佐々木隊員は横で暗視ゴーグルを装着している。
「地図によるとこの通路を右へ、そのまま行くと階段があるのでその先が目的地のはず。ルート上に監視カメラはないが階段前の大広間に警備員がひとり巡回している」
逆に警備の手薄が妙だ。警備員は適当に物を投げ込んで気をそらせるとして監視カメラもないとは。しかし時間がない。現在午後七時四十五分。午後八時には目的地についていないといけないのだ。
「では佐々木隊員、いくぞ」
僕は気配を消すよう抜き足差し足で壁に沿って通路を進む。突き当りを右へ。そして、
「ストップ。佐々木隊員、見ろ。あそこに警備員がいる」
僕が指差す先。そこには某警備会社の制服をきたおっさんが。手には懐中電灯を持っている。
「じゃあ投げるぞ」
僕はさっき外で拾ってきていた小さな石を掴むとなるべく遠くの方へ投擲する。それは小さく乾いた音を立て地面に転がった。
「……ん?」
おっさんはそう言うと石の転がるほうへ歩いていき、そして闇に消えた。
「今のうちだ、行くぞ」
僕たちはまた気配を消しホールを抜けると階段の前に。そして一段目へ足を置こうとしたその時。
「坂口隊員、待った!」
言いながら僕の足を掴む。あと十センチで地面に触れる距離で固まる僕。
「ど、どうした佐々木隊員」
「トラップだ。階段の複数箇所に赤外線が張ってある」
暗視ゴーグルを僕に渡してくる佐々木隊員。それを装着してみれば確かに三箇所、赤いレーザーが確認できた。
「おうふ……さすがセ○ム、危なかった。助かったよ佐々木隊員」
僕たちは気を取り直し、トラップを避けるように階段を上り、そして上階へと到着した。数メートル通路を進み集音器の吸盤を壁に装着、データをPCに転送した。
「これは……。間違いないな。この中だ」
「坂口隊員。あそこから入れる」
そう言って佐々木隊員は天井の隅を指差す。そこは押すと外れるようになっておりそこから侵入するのが僕たちの計画だった。
「おい、そこにいるのは誰だ!」
天井の一部を外し肩車で入り込もうとしているとき、突然後方から声がした。同時にまばゆい光も向けられる。
「いかん、見つかった。ルートDで逃走だ!」
僕たちはすぐさま肩車を解き、そのまま通路を進む。一番奥の窓を開けるとそこから飛び降りた。
ボフッという衝撃が全身を包む。下は植え込みでその上に乱雑に服がばらまかれていた。これは僕たちが万が一の場合に備え用意した逃走地点のうちの四番目である。
「逃げるぞ、佐々木隊員」
「り、了解」
そうして僕たちは逃げる。あと一歩というところでの撤退に悔しさを感じながら僕たちは夜の闇に消えていった。
誤字脱字・感想なんでも待ってます。




