イベントが起こらない
学園を出て、近くの山の頂上を目印に飛んでいく。それから先は、隣国の領域だったが、構わず飛んでいった。後を追って来たルークが、ちょっと待てラウリィと焦った声をあげる。
「どうした?」
と尋ねようとすると、下から飛んできた何かにぶつかり、オレはトリスタンの背中から落ちてしまう。
ぶつかって来たものを見ると、どうも羽根兎のようだ。間違ってぶつかってきたに違いない。
「ラウリィ!」
昔のオレであれば、このまま落ちていただろうけれど、今のオレはSランクの身体能力を持っていた。
オレは宙返りをすると、腰の縄をトリスタンに向かって放って、尾にくくりつける。そのままぶら下がり事なきを得た。
けれど―――――。
「ラウリィ、ここは落ちておかないと、イベントが進行しないかもしれない」
とルークが言うのだ。
「誰と誰のイベントだ?」
とオレが縄にぶら下がったまま尋ねれば、ルークは一瞬戸惑いの顔を浮かべた後で、オレに向かって何かを投げて来た。
パラパラと何かが舞うのが見えて、それが眠り花粉だったことを知る。
「なぜだ、親友」
とオレは思いながら、縄から手を離して、落下――――。
するかと思ったが、トリスタンがオレをくわえて背中に乗せ直した。
ルークはキョトンとした顔でこちらを見ている。そして言った。
「なるほどな、ラウリィはラウリィ自身のパラメータがあがりすぎていて、イベントが発生しないんだな。本当ならここで隣国に落下し、人質イベントがあったはずなのに」
「どういうことだ?」
「ラウリィのルートにミトリが来ないのは、ラウリィが最強になりつつあるからかもしれない。隙がなければイベントは起こらないんだ」
「それは、ブリファルの親友……仲良しルートでもか?」
「言いなおしたな。でも、ラウリィはブリファルで落とされるのは、不本意だろ?全年齢の誇りにかけて」
「それは、そうだけど。オレは暇なんだ。今はルークとの遠乗りが楽しい」
「折衷案はないのか?トリスタンやイゾルデの上で、ま……」
オレは耳を塞いだ。




