一瞬で愛し合ったことになる
「無理なんだ。その単語は、オレの世界には」
「全年齢でも愛し合えるだろ?」
「愛し合いたいのか?」
オレが言うと、ルークはうなずいて、その目にかかる鬱陶しい前髪を、かきあげた。黒い瞳が見え、その端正な顔が明らかになる。
「あ、全年齢乙女ゲームの攻略対象で十分通じるじゃないか」
とオレが言えば、
「意味ないんだよ、それじゃ」
とルークは言うのだ。
「お前の好きは、欲望に重なっているだろ」
「つまり、ラウリィが好きなんじゃなくて、犯……?」
耳を塞いで頷く。
「違うよ」
「じゃあ、オレと街デートや錬金術の勉強、決闘や遠乗りがしたいか?」
「したくないな」
「じゃ、お手上げだ。オレのルートはそういうのだし」
と言ったら、胸当ての金具を引っ張られた。
そして顔が近づいてくる。軽く、オレの唇に唇を振れさてきたのは許可した。
キスなら大丈夫だ。
「炭火焼の香ばしい匂いがしたな」
とオレは感想を言う。
「牛串だな」
とルークは言うが、その頬は紅い。
名残惜しそうにしてオレの頬に手の平を触れさせてきたとき、
「よ、ラウリィとルーク」
と声がかかった。
見れば、ロイとクリスがいる。
「よ、ロイにクリス」
とオレが答えると、ルークがため息をつく。
「頬に手をやってなにしてんの?」
とクリスがルークの手を見て言ってきた。
「キス」
とオレが言ったら、ルークがうろたえる。
「な、なんで、それを教えるんだ」
「問題ないんだよ、キスは。全年齢でも」
とオレが言えば、
「お前たち、付き合ってるのか?」
とロイが尋ねてきた。
「付き合ってるよ、親友だ」
とオレが答えれば、
「親友なら、付き合ってるとは言わない」
とクリスが言う。
「何が違うんだ?親友と付き合っているかどうかは?」
「性的……」
ルークの言葉にオレは耳を塞ぐ。いい加減にして欲しい。
しかし、ロイとクリスはうなずいていた。
オレは耳から手を外し、言う。
「そういうのも出来るよ、ただ、一瞬だ」
「一瞬?」
「ルークと寝た、と。その一言で終わる」
ルークは目を見開いた。嘘だろ、それだけか?と心底驚きの口調で言うのだ。
ロイとクリスが去った後も、ルークは驚きの余韻をそのままに、黙りこくっていた。これが、オレたちの世界の違いだった。




