第153話 お酒のイッキはやめましょう
俺達は早速、料理を食べだす。
「美味いな!」
「豪勢すぎよね! お姫様になったみたい!」
カルロとニーナはばくばくと料理を食べていき、ワインもぐいーっと飲む。
「いかにも庶民って感じだな。もっと上品に食えよ」
なんか見ていて恥ずかしくなる。
「お前も庶民だろ」
「絶対に昨日は同じ感じでしたよね? 2日目の余裕ってやつです」
いや、俺達はそこまでがっついてもないし、騒いでない。
「おかわりも自由ですからお好きに飲み食いすると良いですよ」
ウェンディがパンを食べながらそう言うと、カルロとニーナの手が止まり、ウェンディを凝視した。
「……人形がパンを食べている」
「……何度見ても異様」
そこはもう慣れろよ。
「カルロ、明日、出発するが、いつ出る?」
こいつら、ハイペースで飲んでいるし、大事なことは先に決めておこう。
「11時の便があるからそれで行こう。3日で着く」
3日間は列車か。
「となると、明日からは列車で弁当や総菜ですねー……」
エルシィのテンションがちょっと落ちた。
「今のうちに食い貯めておくか」
「そうしましょー。ワインも飲んで最後の夜はパーティーです」
「さんせー」
ウェンディも嬉しそうに賛同した。
「お前らのどこが上品なんだ? ド庶民じゃねーか」
「一緒だよね」
カルロとニーナが呆れる。
「いいから黙って食っとけ。全部無料なんだ」
「それもそうだな」
「ワイン、飲もー」
俺達はその後も飲み食いしていき、盛り上がった。
そして、食事を終えると、ソファーの方に行き、ワインを飲みながら話をする。
「エルシィ、お風呂はあそこ?」
ニーナがトイレの扉を指差す。
「そっちはトイレ。隣がお風呂」
「ほうほう? 見ていい?」
「別にいいけど……」
ニーナとエルシィは立ち上がると、お風呂の方に向かった。
「おー! すごい!」
「アロマが良い感じなんだよね」
「ウチもこういうお風呂に変えようかな……あ、ダメだ。父さんと兄さんも入るんだった」
別に良くない?
「言われてんぞ」
カルロを見る。
「あいつは子供の頃から小うるさいんだ。俺や親父が風呂上がりでパンイチだと文句を言ってくるんだぜ」
「それはお前と親父さんがどうなんだ?」
「ターリーは湿気も多いし、夏は暑いんだよ。それに海の男はそんなもんだ」
そうなのかな……
でもまあ、前世で一人暮らしをしていた時はそんな感じだったような気がする。
「俺には姉も妹もいないからわからんな」
前世も一人っ子だった。
「孤児院じゃねーの?」
あー、確かにな。
「どうだったか……いや、孤児院の院長先生が厳しかったからそんなことはなかったな」
確か孤児だからこそ、その辺はきちんとしないといけないという教育方針だったはずだ。
「ふーん……確かにお前はしっかりしているからな。なんか偉そうだけど」
その辺はまあ……
「おー! 寝室もすごい!」
ニーナが今度は寝室を覗いている。
「ふかふかベッドだよー。天蓋付きってすごくない?」
「すごいね! 私も旦那を捕まえたらこの町に来て、ここに泊まろう! そして、あの湖の夕日で愛を囁いてもらうんだ」
なんかどこぞの受付嬢みたいなことを言ってるな。
「あそこは悲恋湖って言うらしいよ」
「そうなの? ご愁傷様」
ニーナが俺とエルシィを見比べて笑った。
「ウチは大丈夫。御利益があるから」
大天使ウェンディちゃんね。
「まずは彼氏だっての……」
カルロがつぶやく。
「兄さんもでしょ」
ホント、仲の良い兄妹だわ。
「あいつ、彼氏いないのか?」
明るいし、容姿も整っているからモテそうだと思うんだが。
「ニーナは理想が高いんだ。この前も店で口説かれてたけど、あしらってた」
へー……
「清潔感のない海の男は嫌なの」
ほー……
「な? 行き遅れそうだろ?」
うーん……
「どうかな……ニーナは自立しているし、一人で生きていける才があるから焦らなくても良いと思うが」
「それが危ないんだよ。錬金術師だし、商人でもある。そりゃ理想も高くなるわ。でも、そうやって貴重な20代があっという間に去っていくわけだ」
ニーナの才が邪魔するわけか。
「結婚だけがすべてではないと思うぞ」
「俺のイメージにあるお前はそれだな。でも、ちゃっかり結婚してんじゃんか」
まあ……
「俺は一応、結婚願望はあったぞ。一人は嫌だし」
そう思って死んでいったのが前世の俺だったのだ。
「あー、まあ、孤児だしな。俺も結婚だけがすべてではないと思っているが、結婚願望がないわけではないからわかる。それはニーナもなわけだ」
カルロがうんうんと頷き、ニーナを見たので俺もつられて見る。
「エルシィ……あっちでひどいことを言われてる」
「でも、ニーナちゃん、学生時代に自分より年収が低い男は嫌だとか言ってなかった? ニーナちゃんの年収を知らないけど、絶対に安くないでしょ」
錬金術師兼商人は儲かっているだろうな。
「あれ? 私、本当にヤバい?」
「そこはなんとも……」
「なんでエルシィはちゃっかり結婚してんの?」
「先輩にー、声をかけられてー、そのまま結婚しちゃった……てへっ」
エルシィが舌を出しながら自分の頭を小突く。
「うっぜ……これか……これが男に女売りをすることをためらわないエルシィと私の差か……」
「そんなことないと思うけど……」
「わかってるの……結局、男はこういう女が良いってね。かっこつけのレスター先輩ですらエルシィを選んだし」
エルシィに悪いから言わないけど、選ぶも何も他に親しい人がいない俺にはエルシィしかいなかったがな。
あと、かっこつけって言うな。
「飲みます?」
ウェンディがふよふよと飛んでいき、ニーナにワインを勧める。
「ありがと、天使ちゃん」
ニーナはエルシィとウェンディと共にソファーに戻ってくると、ワインを一気飲みしだした。
「めんどくせー奴……」
ニーナを見てカルロが呆れる。
「そういうお前は結婚の予定とかいないのか?」
「俺? 俺は冒険者ギルドのクラーラに声をかけているところ。帰ったら食事にでも誘おうかと思っている」
クラーラか。
懐かしいな。
しかし、こいつは結構、積極的なんだな。
「頑張れ」
「おう!」
順調っぽいな。
「クラーラはこの前、彼氏ができたって喜んでたわよ。けっ」
えー……
「あ、そう……レスター、終わったわ」
カルロもワインを一気飲みしだした。
「あ、うん……」
今夜は長くなりそうだな……




