第147話 ほのぼの
俺達は町中を歩いていき、西門までやってきた。
西門は南西にあった門と同じ形をしているし、門番の兵士が多くいるのは変わらない。
ただ、冒険者の数は少なく、普通の町人や観光客らしき人達が多い。
「多いな」
「人気の観光スポットですからねー。しかし、護衛を連れていませんけど、大丈夫なんですかね? 湖の周りって森ですし、危ないと思うんですけど」
宿の5階から見た感じではそうだったな。
「どうだろ……警備がしっかりしているのか。まあ、行ってみよう。俺達は魔法があるから何とかなる」
余裕があったら助けよう。
「それもそうですね。行きましょう」
俺達は歩いていき、門を抜けたが、門番はこちらを見もせずにスルーだった。
そして、道を歩いていくと、前方に森が見えてくる。
南西の森と同様に左右にずーっと森が広がっており、まっすぐ行く道はそのまま森の中に続いていた。
「なるほど……警備が万全なわけだ」
道のあちこちに兵士が立っており、それは森の中もだった。
これなら魔物や獣が道に出てきても兵士が対応できるだろう。
「安心ですねー」
「観光スポットだけあって、ちゃんと考えているわけだ」
俺達は森に入り、歩いていく。
周りの兵士はちゃんと警備しているようだし、他の観光客も特に気にする様子はなく歩いていた。
そして、そのまま歩いていくと、すぐに湖に到着した。
「おー、すごいですねー」
「やっぱりでかいな……」
「感動です!」
宿屋の5階から見てもすごかったが、目の前に広がる湖は本当に大きく、対岸に森があるのはわかるが、それ以外がよくわからない。
波も少なく、いくつものボートが湖畔の上に浮いており、人々が楽しんでいるようだった。
また、湖の周りには家族連れ、カップル、観光客などの多くの人達が腰を下ろして、団欒を謳歌していた。
「私達も座りましょうか」
「そうだな」
俺達は湖近くに敷物を敷き、腰かける。
そして、ぼーっと湖を眺めた。
「風が気持ちいいですねー」
「そうだな。暑くもなくちょうどいいわ」
それに静かなのが良い。
人が多いし、たまに子供の笑い声が聞こえるが、鳥の鳴き声が聞こえるくらいには静かで心地良かった。
「イパニーアでは観光もしましたが、後半は慌ただしかったのでゆっくりできて良いですねー」
「そうだな。宿も良いし、こうやってゆっくり心と身体を休めるのも良いものだ」
落ち着く。
「お昼にしますー?」
「さんせー」
エルシィの問いに敷物の上で立っているウェンディが手を上げた。
「そうだな。実はパン屋にいた時から食べたいと思っていた」
そう言って、魔法のカバンから紙袋を取り出す。
「食べましょー」
俺達はそれぞれのパンを取った。
すると、エルシィがサンドイッチを半分にし、渡してくる。
「はい、先輩」
「悪いな。ほら、チーズパンだ」
サンドイッチをもらう代わりにチーズパンを半分にして返した。
「ありがとうございます。ご飯を分け合う仲良し夫婦ですねー」
ただの半分こだけどな。
「店員が白けてたやつですね。周りのお客さんの感情もひどかったです」
ウェンディが呆れながら好物のクリームパンを食べる。
「どんな感じだったんだ?」
「具体的に何を思っていたかまではわかりませんが、いやらしい女とそれを喜ぶ男のバカップルって感じです」
すごく具体的だな。
「ひどーい」
エルシィがぷんぷんと怒る。
「それはわざとか?」
「うん」
だろうな。
「チーズパン、美味いな」
「ですねー。畜産もやっているんですかね? 昨日のおつまみのチーズもでしたけど、すごく美味しいです」
確かに昨日のウェンディが頼んだチーズも美味かったし、ワインと非常に合っていた。
「へー……」
「ほら」
ウェンディが羨ましそうな顔をしたのでちぎって渡す。
「ありがとうございます。お礼にクリームパンを差し上げましょう」
ウェンディが好物のクリームパンをちぎって返してくれた。
「ありがとうよ」
俺達は湖を眺めながら他愛のない話をし、昼食のパンを食べていく。
パンはどれも素晴らしく、雰囲気も相まって今まで食べたパンの中でも一番美味しいんじゃないかと思うほどだった。
その後、昼食を終えると、特に何かをすることもなく、ぼーっと湖を眺めていた。
すると、エルシィが石を持って、空間魔法の練習を始めたので俺もやろうかと思ったが、さすがに人が多い中で魔法を使うのはマズいのでやめた。
代わりに周りに生えている花を集める。
「何してるんですか?」
座っている俺達の目線くらいに浮いているウェンディが聞いてくる。
「花が綺麗だろう?」
「レスターさんにそんな感性はないですよね? 薬でも作るんですか?」
失礼な奴だな。
でもまあ、半分正解だ。
「見てろ」
集めた花を錬成する。
すると、あっという間に小さな花の冠ができあがった。
「おー! すごいですね!」
全然、たいしたことじゃない。
物質を変化させたわけじゃないし、組み合わせただけだ。
「暇つぶしだよ。ほら」
小さな冠をウェンディの頭に乗せてやる。
「ウェンディちゃん、可愛いね」
「天使感が増したぞ」
ちょっとだけ。
「ありがとうございます!」
ウェンディは嬉しそうに辺りをふよふよと飛び出した。
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