第141話 きゃは☆彡
食事を終えると、店を出て、南西にあるという門に向かう。
「美味しかったですねー。夜も期待できそうです」
「ホントですよね」
エルシィとウェンディは満足そうだ。
「そうだな。なんで各国の料理はこんなに美味いのにウチの国はダメなんだろう?」
イラドだって海はあるし、山も森もある。
なんでこんなに違うんだ?
「多分、あまり外国と交流がないからじゃないですかね? ウチって排他的というか、あまりそういうのを好んでいない感じがします」
それはあるかもな。
「それで住んでいる人間は外の味を知らないから現状で満足してしまうわけか」
「だと思います。私自身、別に不味いとは思っていませんでしたからね。こんなものだろうと……」
俺は転生者で前世の美味いものをたくさん知っていたが、孤児で貧乏だったから食えるだけで幸せだった。
その子供時代のせいで慣れてしまったんだろう。
「国を出て良かったな」
「色んな意味でそうですね」
うんうん。
俺達がしみじみと頷きながら歩いていくと、前方に門が見えてきた。
この辺りに来ると、門を守る兵士を始め、冒険者であろう魔法使いや剣士らしき姿が増えてくる。
そんな冒険者達は特に止められることもなく、門を抜けているので普通に通れるようだ。
「門の先に森が見えているよな」
「ですね。地図のまんまで本当に近くに森があるんですね」
俺達はそのまま歩いていき、特に止められることもなく、門を抜けると、立ち止まった。
「広いな」
100メートルくらい先には森があるのだが、右を見ても左を見ても森が広がっている。
ただ、目の前にはまっすぐ行く道があり、そのまま森の中に続いていた。
「行ってみましょう」
俺達は歩いていき、森の前までやってくる。
「どうする?」
「人が多いですよね……」
想像以上に冒険者の数が多く、ここからずっと続いている道の先には何人もの冒険者の姿が見えていた。
「――おい、こんなところで立ち止まるなよ」
声がしたので振り向くと4人の冒険者がいた。
「あ、悪い」
「すみませーん」
俺達が謝りながら道を譲ると、冒険者達はそのまま奥に行ってしまった。
絡んでくるようなことはなかったが、4人とも縦にも横にもでかかったのでちょっと怖かった。
「奥には入らずに森の際で探すか」
「それが良いと思います。こう言ったら失礼になりますが、ちょっと不安です。さっきの人達も私の2倍はあったんじゃないですかね?」
そんな風に見えたな。
「邪魔しないようにするか」
「はい」
俺達は森の奥には入らず、左の方に回る。
そして、際の方を見てみると、エトナ草を見つけた。
「あるな」
「キュアポーションの材料ですね。結構ありそうですし、この辺で採取しますか」
「そうしよう。ウェンディ、見張りを頼むわ」
腰を下ろしてしゃがむと、ウェンディに頼む。
「お任せください」
ウェンディがふよふよと浮き出して、周囲を見張り始めてくれたので俺とエルシィは採取を始める。
「本当に良い薬草が採れる森なんですね。際なのにたくさんありますし、質も良いです」
「そうだな。これなら良いポーションが作れそうだ」
俺達は慣れた手つきでせっせと薬草やエトナ草、さらには毒草なんかを採取していく。
「その紫色の草は何ですか?」
ウェンディが俺の持っている草を見ながら聞いてくる。
「これが毒草だ」
「いかにもですね……毒があるんですか?」
「これ自体は食べたら腹を壊す程度だ。これを錬成することでイノシシやゴブリンなんかを気絶させるほどの毒に変えるんだよ」
それができるのは錬金術師だけ。
「へー……農作物を荒らす害獣用ですね」
「ああ。実はもっと強力な毒も錬成可能なんだが、それはどこも禁止されている。単純に危ないからな」
作った毒は肉団子に混ぜるのだが、害獣じゃない生き物が食べたりするし、良くないのだ。
そして何より、その毒を人に使うことは許されないので法律で禁止している国が多い。
「毒を人に使うわけですか……そういえば、ポードでキュアポーションの需要がありましたね」
「詳しくは知らないが、貴族連中はそういうのが日常茶飯事なんじゃないか? 優秀な錬金術師が貴族のお抱えになるっていうのも聞いたことがあるし」
俺は誘われなかったが。
「あ、私、誘われたことがありますよ。行く気もなかったし、すでに宮廷錬金術師の内定をもらってましたから上手く断れましたけど」
いくら貴族でもそこは強行できないわな。
宮廷錬金術師って陛下の臣下に当たるわけだし。
「そうなのか? 初めて聞いたわ」
「私自身も今思い出したレベルですからね。絶対に嫌ですし、あまりにも選択肢に上がらないのですぐに記憶から消去です」
まあ、俺もそうだな。
「エルシィ、優秀だったもんな」
「そこもあるとは思いますが、理由はそこじゃないと思いますけどねー」
あー、お抱えってそういうことか。
「大変だな」
俺なんか好かれる要素がないからまったくなかったわ。
「イラドでの学校生活も大変そうですね……」
ウェンディがしみじみとつぶやく。
「まあ、貴族と平民では交流自体があまりないんだけどな。それでもエルシィを誘ってきたのはそれだけ人気ってことだろう」
「そんな人気な人が奥様で良かったですね。レスターさんが浮気して、怒ったエルシィさんに一服盛られないようにしてくださいよ」
「なんで俺が浮気するんだよ」
脳裏にはエリクサーがあるから大丈夫っていう言葉が浮かんだが、これを口に出してはいけないことはわかっている。
「そうだよー。先輩は浮気なんてしないよー」
エルシィが自信満々に頷く。
「ほら、エルシィもこう言っている」
「まあ、レスターさんはそういうタイプじゃないですよね。これまで若くて美人な女性との出会いも多かったですが、まったく心が動いていませんでしたし」
興味ないし。
「先輩はー、可愛い後輩が好きなんだよー、きゃるるん!」
きゃるるん……
「エルシィさん、今のもまったく心が動いていませんでしたよ」
いや、困惑……
「でしょうね。私も今のはないって思ったもん」
すまんな。
俺は意味さえわからなかった。
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