第59話 葬儀。
ここでミチトはお待たせと言ってプレートを一枚と魔水晶の付いた腕輪を持ってくる。
シヤはミチトを見て「マスター、お願い聞いてほしいんだ」と言う。
今日一日でキチンとお願いが出来るようになったシヤに微笑むミチトは「何?言ってみて」と言った。
「俺の記憶の中の声だけじゃなくてこの耳でシーナの声をもう一度聞きたいんだ。マスターが俺の記憶から拾って声にしてくれないかな?」
「いいよ。この言葉だね?いいの?」
この「いいの?」はプライバシーの面や2人の思い出にしないで「いいの?」という「いいの?」だったがシヤは頷く。
「うん。シーシーにも聞いてほしい」
「わかったよ」
こうしてトウテ中に優しい少女の声で「ありがとうシヤ。シヤは生きて。最後まで生き抜いて」と聞こえてきた。
それは目の前の亡骸が発した声に聞こえてしまう。
シヤは亡骸を見つめて
「生きるよシーナ。俺は生きる。最後まで生きるよ」
ともう一度言った。
「シヤ、仕返しとお葬式とお願いがあるから先にお葬式にしよう」
皆で孤児院の前に集まって祈りを捧げる。
ディヴァントでは手を合わせて声をかけて別れを告げる。その声が死者の力になって天の神様の所まで行けるようになるとロウアンが説明をしてくれた。
「俺、シイって名前貰えてよかった。顔を忘れててごめんねシーナ」
「俺もだ。折角シヅと名付けてもらっていたのにごめん」
「俺も、皆にヨミって言ったらヨミに見えるって言われたよ。でも本当、忘れてしまってごめん」
ここでミチトがシヤの記憶から貰っていた「ほら、忘れた事を気にしないの。私とヨンゴが覚えてるから何回でも名前から教えるからね」と言う言葉を聞かせる。
その声にシイ達は何回もごめんと謝りシーシーとシヤはシーナがそこにいる気がしてしまう。
「頑張って生きよう。生きていればきっと良いことがあると思うんだ」
この言葉を聞いてライブは前に出る。
「アンタ、本当に底抜けにいい子だね。アンタみたいな子が死んじゃうなんて世の中はやだね。でも決めたよ。私達は術人間にされてしまう子を助けるよ」
「イブもライブや皆を助けますからね。安心してくださいね。シヤ君の事はシーシーちゃんに任せてゆっくりしてください」
イブの言葉にシーシーが「イブさん?」と聞くとイブは普段の愛らしい笑顔ではなく小悪魔的な笑顔で「シーシーちゃんはシヤ君をよろしくお願いしますね。これは代理マスターのライブの代理のイブからのお願いですよ」と言った。
シーシーは「…はい。頑張ります」と言って頷いた。
シーシーがシーナに話しかける。
「シーナ、私達助かったよ。シーナやヨンゴとも来たかったよ。シローにもここの皆に会わせたかったよ。ヒノさんやヤオさんの優しい言葉を聞いたらシローなら泣いて喜ぶと思うよ。戦うの嫌で怖かったけどもう戦わないでいいって言ってくれるんだよ。私達は番号じゃなくて名前を貰えたの。優しい大人の人達がこれでもかって人間扱いしてくれるんだよ。
シヤは私が見てるから安心してシローとヨンゴ、顔も知らない使い潰されたエグゼの所で産み出された皆とハーモとそっちで暮らしていてね」
シヤはまたシーナに話しかける。
「シーナ、異論はない。俺は生きる。生きてシーナの分まで人を救い、ヨンゴの分まで人を守る。俺は2人には敵わないがそれでもやり切るよ。好きだと言ってくれてありがとう。手を繋いでくれてありがとう。それを忘れずに生きるよ」
ここでミチトが記憶のシーナの声を聞かせる。
「私の心を連れて行って。ずっと一緒」
「それこそ異論はない。俺はヨンゴもシローもシーナもハーモもそれこそトウテに辿り着けなかった仲間達も連れて行く」
この後で皆が口々にシーナに言葉をかける。
大人達は不幸な目に遭う子供達を1人でも多く助ける事を誓い、子供達は倒れた皆の想いを忘れない事を誓った。
そして最後にアクィ、リナ、ミチトの順番になった。
「頼りない大人でごめんなさい。私も貴い者の1人として努力して人を助ける。もっと世間を知って不幸な目に遭う子達を助けるわ」
「ずっとお腹空いていたよね?ご飯を作ったからゆっくり食べなさい。ここに置いたのは全部あなたのご飯よ。こっちの事はこっちの人に任せてあなたは向こうで幸せになってね」
「シーナ…助けられなくてごめん。
頼りないマスターでごめん。
それなのに希望にしてくれてありがとう。
俺から君達に贈り物をする。
そして、君の為に君を汚した連中は地獄に叩き落とすよ」
ミチトは「ロキさん、墓地はトウテの西側で良いですか?」と聞くとロキは頷く。
この声でトウテを出た西側に土の壁が出来上がっていて柵のようになる。
「後でキチンとした壁にします」と説明するミチトにセルースが「デカくねぇか?」と聞く。
「まだこの先も術人間の子達で救えない子も出てくるから…。シーナのように身体を連れ帰れる子は少ないけど、それでも…」
そう言ってミチトはシイからシヤまでを連れて墓地に向かう。
何故墓地に連れてこられたかわからないシイ達は「マスター?」と聞く。




