第49話 忘れ去られていた少女。
飛んだ先はエグゼの屋敷でシヤ達は身構える。
「エグゼの屋敷ですか?」
「あれ、アプラクサスさんは来たこと有るんですか?」
「かなり昔、エグゼの父の代ですが来ましたよ」
「じゃあ怒鳴り込む必要ないのか…」
そうは言ってもアプラクサスと名乗っても警戒されるし後ろには壊滅したはずの術人間達がいる。
仕方ないと言ったミチトは無理やり屋敷に乗り込むとアプラクサスの名を出して周りの連中を寄せ付けないようにエグゼの書斎に向かう。
必死に止める執事やエグゼの妻に「石化なら知ってるから邪魔しないで」と言って書斎にいるエグゼの頭だけを元に戻す。
エグゼは石化中も必死に叫んでいたのだろう「蚊が蚊…痒い!痒い!痒いぃぃぃっ!!!」と石化が解けるなりそう声をあげた。
必死に首を振るエグゼに殺気を放つミチトは「黙れ…更にひどい目に遭わせるぞ?」と言いアプラクサスも「よくもやってくれましたねエグゼ・バグ」と言う。
この圧で大人しくなったエグゼは自身が頭だけ元に戻った事にに気付くと周りを見る。
「あ…アプラクサス……様…。お前は悪魔…、お前達は…ファーストロット?44番?48番…?」
エグゼの偉い所は安物の服だけでロクな装備も与えずに不味いパンとスープしか与えないのに術人間達をキチンと把握している事にある。
だが今はそんな事は関係ないし、そもそもエグゼが術人間を求めなければこんな事にはなっていない。
「今、痒みは止めてやった。そして先に忠告してやる。俺の術人間達に余計な事を一言でも言えば全身を更なる痒みに陥れる」
この言葉で青くなったエグゼは「……はい」と素直に従うと大人しくなる。
アプラクサスが「ミチト君、ここにはなんの用事で?」と聞くとミチトは「仕返しもあるんですけど助けたい子供が居るんですよ」と言った。
「助けたい子供?」
「ええ、少し待っててくださいね」
「おい、今から一時的に身体を元に戻してやる。逃げたりしたらこの屋敷と屋敷の人間はどうなるかよく考えろ。わかったら返事だ」
「…はい」
「地下室に案内しろ。ちなみにトロイは居ない。助けを求めても無駄だ」
「……」
地下室の事をアプラクサスの前で言われたエグゼは何も言えずに黙ってしまう。
「フラ殴って。石の部分が欠けると死ぬから気をつければ強くてもいいからね」
フラは「了解マスター」と言って拳を振り抜くとエグゼは「ふべっ!?」と言って殴られる。
ライがソワソワと「マスター、俺は?」と聞くとミチトは笑顔で「ライも殴る?いいよ」と言う。
ライはさっさと殴りエグゼが「ぐはっ!!」と声をあげた。
「地下室に案内しろ」
「……」
「シヤ」
「了解!」
「ガハッ!?」
「地下室」
「…」
「シーシー、怖くないよ。殴って」
「うん」
「ぶべっ…」
結局連れてきた術人間達が殴った所で「あ、ちなみにお前が地下室で何をしていたかは俺は全て知っているしアプラクサスさんにも教えたから隠しても無駄だから」と言うと顔がボコボコのエグゼは肩を落として「ご案内します」と言った。
シヤが「マスター?地下室に何があるの?」と聞くとシーシーは暗い表情で身体をビクつかせた。
ミチトがシーシーの頭を撫でて「シーシー…心を強く持って」と言ってからシヤに「シヤ、今度は君が支えるんだ。22番を救うよ」と言う。
「22番…?」と聞き返すシヤに「そうだよ」と言うミチトは怖い顔になると「エグゼ…彼女を返してもらう」と言った。
石化の解けたエグゼはヨタヨタと前に出ると屋敷を進んでいく。
ボロボロのエグゼを心配そうに執事や使用人、夫人が見守る中ミチト達は地下の隠し部屋に入る。
シーシーの身体が強張る中、シヤは「俺たちがいる」と手を握って安心させる。
すえた臭いの空気にアプラクサスは顔をしかめ、ミチトは深くキレた顔で前を歩く。
地下室は通路は石床だったが開いた扉から見えた部屋は板張りになっていた。
そこに分厚い座布団が敷いてあってここでシーシー達に性奉仕をさせていた事をミチトは理解して更に怒りを募らせる。
奥の部屋に入ると乱れたベッドの上で金髪のショートヘアで薄褐色の肌をした全裸の少女が横たわっていて身体は小さく震えていた。その身体には申し訳程度にシーツがかけられていたが少女が自らかけられる状態にないのは一目瞭然だった。
言い逃れの出来ない中、ミチトが殺気を漲らせながら「エグゼ…この子を壊したな?」と言う。エグゼは必死に取り繕うように「わ…私は…」と言うのだが通用しない。
「シーシーの目から見た。彼女を壊したのはお前だ。それを兵士達に当てがったな!」
そこに何も知らない兵士が「誰だもう始めてんのは?皆休憩って言うとここに来て始めるんだからよぉ〜」と言いながら別の通路からやってきた。
そもそもこの地下室は賊にせめこまれたときに隠れるための場所で地下室に身を隠してダメなら裏口から逃げる為のもので、かつてのシーシーやシーナも裏口からここに来ていた。そして兵士達は休憩になるとその裏口から性処理の為にこうして部屋に来ていた。
兵士が扉が開くと異様な状況が目の前に広がる。
石化していたはずの当主、立派な服装をした初老の貴族。そして冒険者と先日までこの屋敷に居た術人間達。
「は?え?なにこれ?」
男が発した言葉はこれだけで、一瞬のうちに距離を詰めたミチトの拳であり得ないほどに身体をくの字に曲げて天井に身体を打ち付けて気絶をした。
「フラ、ライ。マスターとして支配力を上げる。外にいる兵士達を制圧してここに連れて来い」
一気にスレイブの顔になったフラとライが「了解マスター」と言うと裏口から飛び出して行った。




