第43話 行為の意味。
このやり取りに苛立ったアクィが殴りかかろうとするのを制止するミチトが「…おお、重鎮の前で頑張りますねぇ」と言って睨みつけた後で少女を見て「君は掃除出来る?炊事は?子供好き?1個でも出来ればいいんだけど出来る?」と質問をする。
少女は「…え?はい」と言って頷く。
ミチトは後ろを見て「ロウアンさん?」と言うとロウアンが笑顔で頷いて「任せるよ」と返事をする。
ミチトは少女を見ながらシヤを指して「ディヴァント領にこの子達を育てる街を作ったんだけど思いの外子供の数が多いから手伝ってくれる人を探してるんだけど孤児院の仕事する?お給料も少しだけど出るよ」と説明をすると目を潤ませた少女は「良いんですか?」と聞く。
優しく微笑んだミチトは「いいんですよ」と少女の言い方を真似ながら「こちらこそ人不足だからよろしくね」と言う。
この言葉に少女は泣いてしまう。
シヤは素直に良かったと思った。
まだ1人目なのにホッとしていると「シヤ、彼女を助けてこちらに連れて来るんだ。この行為の意味を考えて」と言われる。
シヤは「…マスター…」と言いながら行為の意味を考える。
真っ先に少女にシーナを重ねた。
シーナは逃げたいのに借金で逃げられず。ハーモを失って今度こそ逃げ出したいのに逃げ出せないようにロエスロエを飲まされたシーナ。
壊されてエグゼに売られて殺されてしまった。
だが目の前の少女は助けられる。
それならば無理矢理助けるのではなく自分の意思でこちら側に連れてきてあげたかった。
「さあ、来たければ俺の手を取って前に出るんだ。連れて行かれるんじゃない。自分で来るんだ」
この言葉に少女は泣いて頷いて「ありがとう」と言ってシヤの後をついて来る。
「俺の方こそありがとう。君を助けられて良かった。シーナを助けられなかった代わりにして申し訳ないが助けられて良かった」
シヤは少女を見てキチンとありがとうと言った。
ここで通りから顛末を見ていた街の人々から歓声が湧き上がる。
ミチトが少女を見て「あー…洋服買ってあげてくれません?年不相応の下着姿とかダメダメです」と言うとロウアンは「勿論だ!」と言ってシヤ達の面倒を見ていてここまで律儀についてきていたグローキに洋服を買ってこさせようとする。
だが今は街中がこの状況に祝いムードになっていて洋服屋も安いものでよければとタダで持ってくる。
今、世論は完璧にミチト達に向いていた。
シーシーが辛そうに歩く2人の女性を連れて出てきた。
「マスター、病気の人を連れてきたよ」
「シーシー、ありがとう」
女性達は苦痛に顔をゆがめながら震えていてシイ達に椅子を持ってこさせて座らせる。
「アクィ、この病気わかる?」
「ごめんミチトわからない」
この事でフラとライが治癒院から人を呼ぶと苦痛の原因でタチの悪い性病を患っている事がわかり、更に震えはロエスロエの中毒だと言う事がわかった。
怖い顔でオーナーを睨みながら「成る程、ここまで追い込んで働かせた事を知らせたくないと言うことか…」と言ったミチトに「マスター、助けられる?」とシーシーが縋るように聞く。
「んー…この病気がどんなものかわかれば考えるけど、話聞いてる間も痛そうだからヒールをしてあげて」
誰にという命令も無いがシヤは「シーシー!やろう!」と言って前に出る。シーシーも嬉しそうに「うん!シヤも!」と言って前に出ると2人の女性にヒールを行う。
苦痛が緩和されているからか穏やかな表情になる2人の女性。
ミチトはこの間に治癒院の人間に症状と治し方を聞くと治癒院の人間は「治し方はありません」と言った。
「体内に入った毒素が肉を溶かして血の流れで全身に回るんです。痛みはそれによって引き起こされます。手の施しようがなく投薬やヒールで痛みの緩和をしてあげるか介錯をするしか…」
申し訳無さそうに言う治癒院の人間と申し訳無さそうにする2人の女性。
ここでオーナーが「ほら見ろ!だからロエスロエで痛みをごまかしてやったんだ!副作用で辛くならないように働かせてやった…」と言ったところでアクィが真っ赤な顔で「黙りなさい!」と怒鳴りオーナーを睨みつけた。
ミチトが嬉しそうに笑いながら「アクィ、貴族権力パンチしちゃダメだよ?」と言うとアクィが不思議そうに「ミチトはやらないの?」と聞く。
「俺は変な私刑は嫌いだからキチンと地獄に叩き落とすよ」
後ろでやり取りを聞いていたヨシが「…え?これ…私刑……」と呟くと「違いますよヨシさん!」とミチトが言う。助ける方法が無いと言われて暗い空気の中なのにミチトは悲しむでも怒るでもなく普通の顔をしている。
シヤは「助けてあげてほしい」と言おうか悩んでいると、「まあ治してみようっと」とあっけらかんと言い放つミチト。
シヤが言う前に治癒院の人間が「は?」と言い後ろにいるローサが「やあね。まだミチトさんを理解してない職員も居るのね」と笑い、モバテが「やれんのか?」と聞いてくる。
「まあモバテさん達に言われなくてもってやつですよ。シヤ!君の見ている方の彼女から救う!フラとライは俺を見て学べ!シヤとシーシーは俺が彼女達を治したらフラとライが見せたロエスロエからの治し方をやるんだ!」
治癒院の人間が治せないと言った病を治すと言い、自分達がロエスロエから人を救う?
この状況が夢の出来事のように思えてしまうシヤとシーシー。
ロキが「今日のミチト君は力強いですね」と言うとアクィが少し困ったような照れるような誇らしげな表情で「キレてますから…好きにさせてあげて下さい」と言う。
ローサが嬉しそうに微笑んで「サルバン嬢、もう立派にミチトさんのパートナーね!」と言うと顔を真っ赤にして「はい」と言うアクィ。
ライブが「ズルイよ!私だってマスターの事を想ってるよローサさん!」と言うとイブが「皆さん知ってるから平気ですよライブ」とフォローをしている。
そんな自然体の空間。
「とりあえず二種同時使用だな。あー…術として完成させないとフラとライには無理か…」と言ったミチトが1分くらいブツブツと考えた後で「……よし!出来た!見てるんだフラとライ!」と言った。




