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48番のシヤ。~俺、器用貧乏なんですよ。外伝~  作者: さんまぐ
少年少女の言葉、願いと仕返し。(全10話)
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第41話 シヤの言葉。

「カスケード・キャスパーは古代の製法を試したバロッテス・ブートの言葉を鵜呑みにした!

バロッテスの見つけた製法は子供を術使いに変えるもの!

だがバロッテスの製法は未熟で未完成。

使われた子供達は記憶を失い自我を失い、中には自らを燃やし死んでしまう者も居た。

しかし、それでもカスケードは独自に派閥を作り製法を広めて子供達を拐い術を使える人間に作り替えた!

何人もの子供達が誘拐され人買いから売られた結果、記憶は消された。

だが俺達はその子供達を保護した!

モバテ・チャズさん、シック・リミールさん、アプラクサス・アンチさん、ロウアン・ディヴァントさん、ウシローノ・モブロンさん、イイーヨ・ドデモさん、イイダーロ・ドデモさん、イシホ・カラーガさん、アクィ・サルバン。

正義の貴族達はそれを認めてくれた。今も手を貸してくれている」



ミチトの言葉に王都中が困惑の声をあげている。

見かねたヨシが「ミチト君、ここまでしてはもう…」と止めに入るがローサがそれを制止して首を横に振る。


「ヨシ、ミチトさんはこの中の誰よりも貴い事をしようとするの。家族なのだから私達がそれを支えるのよ」

この言葉にヨシが諦めたような腹を決めた顔で「はい。母上」と言い金色を見て「金色様は…」と言うと金色は我先に「妾は無論真式様の行いに従う者。名乗りが必要ならば、妾は本来の姿に戻ろう」と言った。



「今ここにはキャスパー派によって術使いに変えられた子供達がいる。その数203人!

王都に…俺に助けを求めにくる最中に死んだ者、リトルハットのダンジョンを消し去るために自爆させられた者、実験として殺された者、その者達の怒りと恨みを晴らす。

俺達は今後もこの国で人をさらい貴族に売りつけて術使いにされる子供を助ける!

傷付く人達を出来る限り助ける!

俺達と術使いにされた子供達と正義の貴族達がそれを成す!」


この言葉に困惑の中から歓声が湧き上がる。

シヤは横で名乗りを上げたミチトの横顔をじっと見つめてしまう。

突然ミチトの顔がこっちに向いてシヤが驚く中で「シヤ、ひと言いいかい?」と言われた。


シヤが「マスター?」と聞くとミチトは優しい声で「君に起きた事を話せるだけでいいから言うんだ。そして君の願いも言うんだよ」と言ってくれる。

大勢の注目の中で言うなんてシヤには前代未聞の大事件だが不思議と勇気が沸き上がる。

シヤは頷くと話し始めた。


「俺の名はシヤ。エグゼに拐われた時は48番と呼ばれた。

記憶も何もないままに安物の服を着させられ、まずいパンと苦いスープだけが俺達の食事だった。

名前をくれた47番のシーナ。

励ましてくれた45番のヨンゴ。

沢山話してくれた46番のシローは魔物に突っ込まさせられて殺された。

シローが殺されて王都に助けを求めに…俺達はエグゼの元を逃げ出したがヨンゴもシーナも死んでしまった!

だから俺はヨンゴならやりたいと言うはずの騎士団に入って人を守る!

シーナが選びたかったはずの治癒院に入って人を助ける!」


シーシーがシヤを見て「シヤ…」と声をかける。

シヤは何かを言おうとしたが言葉が全て王都中に聞こえる事は良くないとおもったシヤが躊躇するとミチトが「手を離している間は誰にも聞かれないよ」と言ってくれた。

ミチトと手を離したシヤが「シーシー、ずっと見ててくれてありがとう。ずっと待っててくれてありがとう」と礼を告げるとシーシーは「うん」と言って涙を浮かべた。

もう一度ミチトと手を繋いだシヤが言葉を続ける。


「俺は、王都を目指したが目前でトロイに捕まってエグゼの元に連れ戻されてさらに記憶を消された。そしてディヴァントを襲わされた。

だがマスターもそこにいた大人の人達も皆俺達を助けてくれた。美味しい食事もくれた。名前の無い子達に名前もくれた。

そして今ここにくるまでの間に弟が俺を見つけてくれた。

俺の名はディーサンと言うらしい。

だが記憶はない。

父や母と言った人たちは知らない人、人違いにしか思えない。

兄と名乗った人は父や母、弟を任せてくれと言ってくれた。

弟は記憶が戻ったら帰ってきてくれと言ってくれたがわからない。自信も自覚もない。

そんな俺だが俺はこの力で生きていく」


ここでシヤが手を離すとミチトは「ありがとう」と言うとシーシーが少し困った顔で「マスター、良かったの?」と聞く。

シヤはその顔が気になって「シーシー?」と聞くとシーシーは「マスターは人の為に無理をするってトウテの皆が言っていたの」と言った。


ミチトは首を横に振って「ありがとうシーシー、俺は平気だよ。シーナの敵討ちをしたいんだ。付き合ってくれるよね?」と言う。


ミチトは振り返ってアプラクサスを見て「アプラクサスさん、付き合ってくれるって言いましたよね?」と聞く。アプラクサスは真面目な顔で「…はい。それはどこまでも」と言うとモバテとシックも「私もだ」「私もだよ」と言う。

ミチトは頭を下げて「皆さん、ありがとう」と言うともう一度前を向く。


「俺は今日ここに一つの復讐に来た。

今シヤが教えてくれた47番のシーナという少女は娼館で生まれた。戦争のせいで売られた母親。その母が産んだ娘。

母が死んだ時、母の借金を背負わされた彼女はそのまま娼館で働かされロエスロエで壊された。

そしてエグゼに売られた。

その彼女の死の間際の願い。

彼女の無念を俺たちは晴らす!」



話し終えたミチトにローサが「ミチトさん、何するの?」と聞く。

ミチトは「ローサさんは聞かないでもわかるのに聞きますよね」と笑いかける。


「皆のためによ。何するの?」

「色街に向かって次のシーナを助けます」


「うふふ。本当素敵。後始末は任せなさい。やりたいようにして」


この言葉に頷いたミチトが「行くぞ!アクィ!メロ!イブ、ライブ!」と言って前に歩き出す。


「広域伝心術!今から色街を包囲する!行くぞスレイブ達!」

この言葉に200人を超える術人間達が声を揃えて「はい!マスター!」と言う。

これだけで王都が震えた気がした。



「シヤ、シーシー!元エグゼの術人間達は前に出て俺に続け!」

指示を出すミチトの横でアクィが「やっぱりこういう時のミチトは格好いいわよね」と言うと逆側のライブが「本当だよね!でも今日はリナさんとの日だからズルい!夜抱きつけない!」と漏らすとその横のイブが「じゃあ今晩のライブはイブと寝て抱きつきますか?」と聞いてニコニコとしている。


少し離れた所でイイダーロが「おおお!?イブさんとライブさんが抱きついて寝る!?」と興奮してイイーヨが「イブさん!俺なんてどうですか!?」と言う。

勿論冗談なのだが言う事に意味があるとイイーヨは言っている。


その横を歩くイシホが「イイーヨ君、マスターに殺されても知らないわよ?」と言って笑うとウシローノも「本当、今ミチトさんが怒ってスレイブ全員に模擬戦って言ったらどうなると思っているんだい?」と言って笑う。


イイーヨは後ろを見てついてくる術人間達を見て青くなるとミチトの方に向かって「じ…冗談ですよぉ〜」と言う。


ミチトはわざと横にアクィを連れて街を練り歩いて色街を目指す。

「アクィ、色街の場所はわかる?」

「実はあんまり…」


道がわからないと困るので「マジか」と言うミチトに王都暮らしの長いイイーヨが「マスター!俺たちわかりますよ」と声をかける。



「よし!前を歩くんだ!」

イイーヨ・ドデモ達を前にして色街に到着をする。


「術人間達!街の周囲を制圧しろ!」

この言葉にシヤ達、シーナとヨンゴを知っている術人間達以外がぐるりと街を囲う。


「ウシローノ!北側に行け!イシホは東!イイーヨは南!イイダーロは西だ!お前達が術人間達を守るんだ!傷一つ認めない!」

普段のミチトはこんな言い方をしないがそこに驚くこともなく逆に頼もしさすら感じる4人の術人間達。


「はいマスター!」

「任せてください!」

「チビ達!俺を中心に陣を敷くぞ!」

「怖いことなんてないからな!正義は俺たちとあるぞ!」


4人が散った後でミチトはすぐ傍に居るイブとライブを見て指示を出す。

「イブとライブは全方位を見逃すな!逃げ出す奴を捕まえるんだ!」

「了解です!」

「わぁぁ、マスター怒ってるんだね。すごく格好いいよ!」


後ろを歩く娘のメロを見て「メロ!1人でやれるね?」と聞くとメロは「うん!任せてよパパ!」と喜びの声をあげる。


「ロウアンさん達を完璧に守るんだ。ママとパパは中に行ってくるよ」

「うん!」



ここで不満げなのはローサで、「え?ミチトさんは連れて行ってくれないの?」と聞いてくる。


通りの外から見てもあまり治安が良くないことがわかる街並み。酒の空き瓶や酔い潰れた者、吐しゃ物の残骸も見えているので「え?行きます?」とミチトが聞くとローサは「じゃあ全部ここでやってくれる?」と聞き返してくる。

「了解です」と答えてようやく話が進んだ。


ミチトが横に居るアクィに「アクィ、貴い者の仕事だよ。シャキッとしてね」と言いアクィも嬉しそうに「勿論!任せなさい!」と返すと「よし!行くぞシヤ、シーシー、シイ、シヅ、ヨミ!」とシヤ達に声をかける。



「広域伝心術!いまから30分後に全員店の前に出ろ!俺は全て見えている!人を隠しても無駄だ!」

ミチトが30分後に店の前に居ろと指示を出す。シヤは何故30分なのかわからないし、何故店の前に出ろなのかもわからない。何が起きるのか見ているとアクィが「ミチト?何するの?」と聞いてくれた。


ミチトは「シーナと同じ子達を助けるんだ。俺に嘘は通じない」とハッキリと言った。



シヤ達は色街に入るなりミチトから心眼術を授かる。

「マスター?これは?」

「心眼術。これで神経の傷を見るんだ。ロエスロエは神経が傷付くことで薬から逃げられなくなる。だから神経を治す。そして次だ」

そう言った流れで忘却術も授かる。


「忘却術?」

「この術でロエスロエ自身を忘れさせるんだ。ただこれらはロエスロエの治療以外では使えないようにする。守るんだ」


待つといって15分が過ぎたがただ待つのは退屈だ。

通りには見物人も集まってきていて人の目も気になる。

シヤは何故30分も待つのだろうかと疑問に思っていると今回もアクィが「ミチト?何で30分待つの?」と聞いてくれる。


呆れた顔のミチトは「…今呼んで裸の男女とか見たくないだろ?」と言うとアクィがシヤの方を見てバツの悪そうな顔で「あ、そっか」と言った。

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