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第25話 エール。

この人はまるで自分の事のように怒る。

なんで怒ってくれるんだろう?

シヤは不思議な気持ちで「マスター?怒ってくれるの?」と聞く。


「当たり前だ。地獄を見せて殺してやる。シヤ、君はシヤでもいい?」


俺はシヤ。

さっきの名を思い出せない少女もシヤと呼んでくれた。


「はい。シーナがつけてくれた名前。ヨンゴと呼び合った名前だからシヤがいいです」


ハッキリと言うとミチトは頷きながらシヤに手を差し伸べるとシヤはその手を掴む。


「よし、シヤ。君はエグゼの屋敷はわかる?」

「…ここから行くのはわかりません」


「良いんだ。思い浮かべられる?」

「それなら出来ます。マスター?」


ミチトは深く頷いて笑顔になると「シヤ、今から行って滅ぼすよ」と言った。

シヤはミチトの言っている事がわからずに「え?今から?」と聞く。


「うん。シヤは来れるよね?」

「え…俺?」


「うん。皆の代表だ。エグゼの術人間達は?」

「わからない…」


ここでライブが「マスター、わかるよ。私が助けた6人と今助かった15人」と言う。


「ありがとうライブ。その6人を連れてきてくれる?」

「うん。待ってて」


ライブが術人間達を迎えに行っている間、ミチトがふと思い出したように「あ、金色!俺の毒魔剣返してよ」と言って剣を回収する。


「ありがとう金色。後は鞘を出してと。シヤ、コレは禁術の毒呪術を付与した毒魔剣。一振り貸すから持って。剣の知識は?」

「無いです」


シヤはミチトが気を悪くしたのではないかと不安になったが「うん」と返事をしてから「スードさん!シヤに剣を教えて。型と流れでいいんでお願いします」と言って兵士を呼ぶ。


スードと呼ばれた兵士は大柄だが優しい面持ちで「おう、シヤ。よろしくな」と言って「簡単に剣の持ち方、構え方に振り方を見せるから覚えるんだ。あ、毒魔剣は使うなよ。この練習用の剣な」と言って剣を渡してくれた。

「はい」と言って剣を受け取った後は練習が始まった。


一度見た剣をシヤは術人間としてあっという間に吸収する。

「よし、次は俺は上から切りつけるからシヤは剣で受け止めて弾くんだ…そうだ!俺が下段の時はこうだ…よし!」

こうしてスードが丁寧に剣を仕込んでくれる。


一通りやった所でライブに呼ばれたシヤはミチトの所に行く。


そこには自身と同じ黒シャツ紺ズボンのメンバーがいた。

良く見ると名前は思い出せないが3人の少年に見覚えがあった。


ミチトは再度エグゼとトロイについて聞いてみたが皆自信がないと言う。

シーシーは誰よりも覚えていたがシヤ程やれる気もしなかったしトロイにもエグゼにも会いたくなかった。

ミチトの前で性奉仕させられた事をバラされたく無かった。


これによりミチトは「君達の怒りを全てシヤに託してもらう」と言う。


「俺はこれからシヤを連れてエグゼとトロイのところに乗り込んでくる。いいね!」

この言葉に20人は皆「マスターよろしくお願いします」「シヤ、頑張って」と声をかけた。


シーシーは感情を込めて「シヤ、お願い」と言っていた。




シヤがミチトとエグゼの所に乗り込むことになった。

そこに来た男…セルースが何かを言い始めるがシヤにはわからない。

だが声援を贈るものでライブが照れているのはわかる。


照れるライブに街の大人達が「うおおお!ライブ!」「ライブ!」「ライブ!」とライブコールを送るとライブは顔を真っ赤にしてミチトに「マスターぁぁ…。お淑やかじゃ無いけど嫌いにならないでくれる?」と聞いている。


ミチトが了承するとライブは前に出てきた。

ライブは見た感じ美人で戦闘なんかには無縁で優雅に窓辺でお茶を飲むのが似合う感じだとシヤは思ってしまう。


そんなライブは前に出ると一気に怖い顔になって肩幅に足を開いて腕を組む。


シヤはこの段階で度肝を抜かれてしまう。

だがこれはまだ始まりにもなっていない。


「お前達!聞きな!マスターとシヤが私達術人間の命を弄んだドクソを成敗しに行く!マスターは疲れていて私らは足手まといだから行けない。

だからこそ私達の魂を一緒に持ってって貰うよ!」


そう言ったライブがグルっと振り返り大人達と先に助けられていた術人間達を見回すと「スード!声出しなよ!セルース!合わせな!術人間達!声出しなよ!」と言う。


そしてシヤの顔を見る。

シヤは目があっただけで気迫に負けてみじろぎしてしまう。


「シヤ!アンタの剣に私達の怒りを…魂を乗せるからドクソにガツンと一撃入れてきな!

マスターに甘えんじゃ無い!アンタの力でドクソ貴族とドクソ魔術師をぶちのめすんだ!マスターはつゆ払いだよ!気合入れな!返事!」


返事と突然言われてもライブの剣幕で何も言えないでいるシヤ。

なんとか「……俺…が…」と返した所で追撃のようにライブが詰め寄って「返事ぃぃ!!」と言った。


半分恐怖の中、目を丸くしたシヤが「はい!」と言うとライブが満足そうにニヤっと笑う。

美人は怖い顔でも美人だが怖いものは怖い。


「よし!皆!送り出すよ!声出しな!」とライブが言うとセルースが「よぉぉぉし!ライブが声出してくれたぞ!西側行け!」と言うと西側と呼ばれた大人達が「殺せ!殺せ!殺せ!」と声をあげる。


続くように剣を教えてくれたスードが「俺たちの思いも乗せるぞ!防衛隊!声出せ!」と言い、兵士達が「殺せ!殺せ!殺せ!」と声をあげる。


ここで終わらずにライブが「術人間達!大人になんか負けるんじゃ無い!誰よりも命と記憶と人生を弄ばれた私達が怒ってんだ!シヤに気持ちを預けるよ!行きな!」と言う。


なんて力強く胸が熱くなるのだろう。

シヤはライブの声を聞きながらそう思っていると他の術人間の子供達も同じなのだろう。

「殺せ!殺せ!殺せ!」と言った。


このビリビリと痺れるような空気の中、どんどん力が湧く感じがするシヤ。


そのシヤにライブが「シヤ!」と言う。


ライブの声が衝撃になって走る。

力が漲る気がする。

全員の声が力になった気がした。


今ならやれる。そう思ったシヤがライブを見て「行ってきます!」と言った。


シヤの横でこの出来事を見守っていたミチトは唖然とした表情で「……マジか………後でライブと話そう」と言うとシヤを見て「シヤ、エグゼの屋敷をイメージしたら転移術と唱えて」と指示を出す。


シヤは頭の中でエグゼの屋敷をイメージして「転移術!!」と言うと目の前がホワイトアウトした。

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