第13話 残された2人の変化。
シヤがヨンゴの攻撃を潰して制圧できると思った時、暴走したヨンゴが発火したまま動けないシーナに突っ込んでいく。
ヨンゴは何かを口ずさんで居るが何を言っているか聞き取れないような言葉。
シーナは燃えずに吹き飛ばされる。
更に火力を引き上げてシーナに攻め込むヨンゴ。
このまま行けばヨンゴもシーナも命を落とす。
そう思ったシヤは覚悟を決めてヨンゴの前に出る。
「ヨンゴぉぉぉっ!!やめろぉぉぉっ!!!」
シヤの拳がヨンゴに深々とヒットする。
殴り飛ばされたヨンゴの周りで燃え盛っていた火は消えていて仰向けのまま動かない。
駆け寄ったシヤが「大丈夫か?ヨンゴ!」と声をかける。
「…シヤ?何が……あった?…その…怪我?俺の身体………、俺は…暴走…し…たんだな……シーナは?」
「シーナは吹き飛ばされてあっちにいる」
「怒ってる……かな?…怒ってる……よな……シヤ、謝っておいて……くれよ」
「ヨンゴ?」
「身体、限界……なんだろうな………俺はもう…死ぬ……。なん……となく……わかるんだ…」
「ヨンゴ!諦めるな!ヒールを使う!」
「無駄……だ………、温存……するか……シーナに…使って…やれって………。王都……行けよな…、俺の分……まで頼む……ぜ?」
「ヨンゴ…」
シヤは絶望感で泣いていた。
3人で王都に行きたかった。
それなのにもう死ぬというヨンゴにショックを受けていた。
「泣いて……くれるのか?あん……がとな……。……ミチト・スティエット……会ってみたかっ…たな……、きっと…神様みたいな……凄い人なんだろうな…。助けて貰って…、欲張りかも………知れない……けどさ…トロイとエグゼ達も……倒して貰って……皆を幸せに……してくれないかな?頼んで……くれよ……シヤ」
「ああ、そうだな。俺が頼み込むから安心しろヨンゴ」
「大丈夫……だって……、あの世が…あるなら…シローが…居てくれるって……、あの世に……行ったら…昔のこととか…思い出せるの……かな?」
シローの名前を出して話したヨンゴが突然「…!!?離れろシヤ!!」と言ってシヤを手で押しのけるとヨンゴは発火をしてしまった。
シヤが「ヨンゴ!!」と呼ぶがヨンゴは返事をしない。
炎はあっという間に燃え盛ってすぐに消えた。
その場所は黒く焦げていたがヨンゴの姿はなかった。
シヤは涙を拭ってシーナを探す。
シーナは草むらで気絶していた。
ヨンゴの事を説明してシーナにヒールを使う。
シーナは足をくじいていて歩けそうもなく先にヒールを使う必要があった。
嫌な予感で口を開けにくい中シーナは絞り出すように「ヨンゴは?」と聞く。シヤは俯いたまま「……ダメだった」と言った。
「そう…。シヤ、一つルールを決めましょう?」
「シーナ?」
「今みたいにどちらかが足手まといになったら見捨てるの。とにかく私達は次の私達を守る為に王都に…ミチト・スティエットに会う必要があるの」
「シーナ…大丈夫だ、俺たちなら行ける」
シヤはヨンゴの事もあって必死だった。
ここでシーナまで居なくなることは考えられなかった。
シヤの態度を見たシーナは「ダメだよ、返事をして、お願い」と言うとシヤは「…わかった」と言った後で「俺が足手まといになったらシーナは俺を見捨てるんだ」と言ってシーナにアイコンタクトを行う。
思った回答と違うシーナは「シヤ、違う。そうじゃないよ」と言うのだがシヤは「同義だ。俺はシーナを見捨てたくない」と言い切る。
「…ありがとうシヤ。シヤは格好いいね。惚れちゃいそうだよ」
「惚れる?」
照れて顔を赤くするシーナは「シヤは私なんかじゃ嫌かな?」と俯きながら聞くとシヤは「いや、惚れるがよくわからない」と言って困る顔をした。
シーナは小さく「ふふ」と笑って「こう言う事だよ」と言って身を乗り出すと抱き抱えてヒールを使うシヤにキスをする。
何をしたのかされたのか理解できなかったシヤは何故か赤くなる顔に驚きながら「っ!!?シーナ?」と言うとシーナは「キスだよシヤ」と言って笑う。
その笑顔はとても愛らしい少女のものだった。
「嫌だった?」
「嫌じゃない。変な感じだ」
シーナはシヤの回答に嬉しそうに笑った後で「キスはね、特別なの。好きでもない人とはしないし色々な人としてはいけないのよ?」とシヤに教える。
「じゃあシーナは…」
「私はシヤとしかしたくないよ」
シーナはエグゼにされた事を思い出して胸が痛んだが今はシヤとのキスに集中した。
恋心かと問い詰められれば自信はない。
だが特別な感情、恋心の芽はあったと思う。
そしてヨンゴの死を聞いて訪れるかも知れない未来を見てシヤとキスをしたいと思っていた。
「わかった。ありがとう」
シヤはシーナともう一度キスをして「行こうシーナ」と言ってシーナを背負う。
「シヤ、私重い…」
「エグゼの所でロクなものを食べてないから軽すぎる。マスターに…ミチト・スティエットに太るまで食べさせてもらおう」
そう言って歩き出すシヤ。
シーナはシヤの背中に頬を寄せながら「えぇ…シヤって太ってる子が好きなの?」と聞く。
シヤは「そうじゃない。それはよくわからないよ」と言った後で軽々と小走りをして「ただシーナが軽すぎて不安になったんだ」と言う。
その後も他愛もない話をしながら歩く。
人通りはまだなく、背中越しに響いたシーナの腹の音にシヤが笑いシーナが照れる。
途中で馬車を引く男に呼び止められ「彼女怪我してるのか?」と聞かれる。彼女の部分にシヤとシーナは照れて赤くなったら、その反応を喜ばれて「この道を使うなら行先は王都だろ?俺は四つ手前の村までだけど乗せてってやるよ」と言われる。
馬車に乗ると男から「駆け落ちか?いいな若いってな、それにしてもそんなガリガリで見てられないから食えよ」と言われてパンと干し肉を分けて貰う。
2人で美味しいねと言って喜ぶシヤとシーナの姿に目を細めた男は「村で声をかけるから寝な」と言う。
この言葉に甘えて久しぶりに安心した2人は寄り添って眠る。
シーナは甘えるように「手を繋いでいい?」とシヤに聞く。
シヤは不思議そうに「手?」と返す。
シーナは「安心するのよ」と言うと「構わない」と言ったシヤもシーナと手を繋ぐと「…確かに安心するな」と言って安らいだ顔をした。
そうして眠ったシヤとシーナは村で下された。
「彼女の怪我が良くならないと大変だが、今のペースで王都まで歩くなら後4日だ。頑張れよ彼氏!」
「はい!シーナは軽いから頑張れます!」
「いい返事だな!選別だ。これを食べれば2日くらいは頑張れるだろ?」
男はそう言ってパンと干し肉をくれた。
シーナを背負ったシヤは深々と頭を下げて王都を目指した。




