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番外編TIPS:技術・計画編:初期型機甲悪魔


 騒乱者集団・ニイヤド商会の機屋(からくりや)が遺した設計図に死体屋が手を加え、作成された機械の悪魔。神の異世界に撒いているゲームに近しいもの。


 外殻は金属で覆われているものの中身には生物の肉が詰まっている人型兵器。


 バッカス王国が使っている一般的なゴーレムより遥かに遠くから遠隔操作する事が可能で、操作する人間の腕前次第で武闘派士族出身の熟練冒険者をも上回る。


 初期型は全高2メートルの体躯で、背丈と同じ長さの腕に装着されている無骨な大爪と両足に取り付けられた弩を主武装とする。


 操作者の資格は魔力を持つ生者である事だけで、やろうと思えば赤ん坊でも操作可能となっている。誰でも超長距離遠隔操作可能である事が最大の売りだが、背部に取り付けられた翼による使い手を選ばない飛翔能力まで持ち合わせている。


 これらの性能(スペック)だけ挙げればバッカス王国がよだれを垂らして鹵獲したがる超兵器だが、操作者は操作1秒につき約7日の寿命が失われるという対価を支払う必要がある。また、精神も魔物寄りに汚染されていく。


 ヴァルポリチェッラ東の海上で行われたエキドナ・アーセナルとバッカス王国の戦いにおいてイヴリース隊は――総勢346人の捨て駒騒乱者達に操作され、人魔の戦場に乱入していった。


 捨て駒達の多くは中堅冒険者程度の実力して持っていなかったが、イヴリースはそんな者達を興奮させるほどの戦果をバッカスの精鋭相手に上げていった。


 当然、殆どの騒乱者達はイヴリースの対価(デメリット)に説明されていなかったが、エキドナ事変後も現存した数少ない機甲悪魔は操作者を変えつつ、改修を受けてバリエーションを増やしつつ、バッカス王国へと牙を向いていく。



「何だあの……新手の魔物か!?」


「立ち回りは悪魔(デーモン)だけど……魔術の操作線(パス)があるね。あれを断ち切りたいとこだけど、ぬぅー……エキドナから出てきた魔物を盾に嫌らしい立ち回りしてるから中々、難しいかなー」


 アーセナルとの最後の攻防に参陣していた赤蜜園出身の少年少女冒険者は観測班に仕掛けてきたイヴリースへの対応を行っていた。


 魔物も素材に使い、それでいて人魔化とは違い操作者を別に置く事で精神汚染を軽減しているイヴリースの立ち回りは厄介極まりなく、少年少女に限らず戦線各所で手こずる戦士の姿があった。


 そんな中、少年少女――少女の方は猫耳と猫尻尾をピコピコと動かしつつ、魔術の観測(め)により操作線(いと)の先を見据えようとしていた。


「……これ本体は多分、人間だ。人間が動かしてる」


「じゃあ、待機してる騎士団が動けるな」


「位置の割出が出来ればね~! まっ、ボクなら余裕(よゆー)ですけどー。でも早期発見のためには一体ぐらい捕まえて、直接探りたいカモ」


「よしよし、じゃあお前は観測に集中してくれ。お前らもこっち手伝え!」


「了解した」


「なあっ、オレ様は補給班だよなっ? 何で前線に立たされてんの!? なぁ!」


 応援にかけつけた少年の一人が半泣きでそう訴えたが、他の三人は激しい戦闘音を理由に「おいィ? お前らには今の言葉が聞こえたか?」「聞こえてない」「何か言ったの?」と返し、半泣きの少年に「ちくしょうめえええ!」と叫ばせた。


 イヴリースは無敵の人型兵器ではない。


 遠隔操作によるタイムラグという弱点も持ち合わせており、対応は不可能では無かった。だが、敵はイヴリースだけでは無かった。


 単純な戦闘能力は機甲悪魔(それ)よりももっと恐ろしい竜種が跋扈する戦場にて、バッカス王国は苦戦を強いられていた。各所で多数の死者が出た。


 もっとも苦境に陥っていたのは狙撃手に狙われた本隊――イアソンやヘラクレス、アルゴ隊が乗り合わせているハバククであった。


 狙撃手は竜種でも機構悪魔でもなく、天魔(ハイエンド)だった。


「あの、天魔(クソ)……! この局面で、来やがるのかよ……!」


「あーあー、そういや十二試練の相手は、まだ三体いるんだったなぁ……!」


 何とかアーセナルに近付こうとするハバククは、特に魔物の猛威に晒され、襲いかかる敵意を振りほどけずにいた。


 あまりにも魔物が多すぎる所為で援護の手も届かず、立ち往生しつつあった。


 ただ、一部隊だけはハバクク救援に向かっていた。


「戦線の外縁部を回りつつ、ハバククに向かう!」


 その救援(ちから)は有力武闘派士族に比べれば儚いものだった。


 彼らは弱かった。


 だが、それでも――彼らには戦う理由があった。


「急げ! 奴らに借りを返す、好機だぞ……!」




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