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番外編TIPS:組織・集団編:バタリオン


 構成員7名の冒険者クラン。少数ながら精鋭揃いであり、戦果も上げているのだが他の冒険者や士族戦士には忌み嫌われている。


 戦闘はどのような種別の人魔も問わずそれなり以上にこなすが、最も長けているのは「対アンデッド」の戦闘。クラン・ヴァタリオンは普段からアンデッド狩りを繰り返しており、たった7名で何度もアンデッドの集団を全滅に追い込んでいる。


 アンデッド狩りを行う方針上、他の冒険者や戦士団が遠征に失敗し、全滅した現場に積極的に出向く事が多い。ギルドからの依頼で動く事もあるが、遠征失敗を嗅ぎつけると即座に遠征部隊がやられた現場――多数のアンデッドがうろついている都市郊外で戦闘を開始する。


 アンデッドは魔物の一種であり、積極的にそれを狩る以上、普通は感謝されてしかるべきものだがクラン・バタリオンを好いているものは少ない。


 その最大の理由が「討伐したアンデッドが身につけていた装備」を剥がし、それを報酬代わりに売りさばくというものである。


 その装備の所有者が保険で蘇生されていようがいまいが構わず、それどころか時に足元を見る価格で本人や遺族に売る事から「死肉浚い」「告死鳥」と侮蔑の言葉を投げつけられている。特徴的なガスマスクを身に着けたクランメンバーを見ただけで顔をしかめる冒険者も少なくない。


 都市郊外の死体の装備を売買する事は法律的にはグレーゾーンにある行動で、いわゆる腐肉漁りと呼ばれる者達と類似した手段で収益を得ている。


 だが、彼らの実力が開拓戦線の最前線でもまったく問題なく渡り歩けるものであるため、腐肉漁りと呼ばれる事は無い。敗戦後の現場に来る事から「掃除屋が来たぞ」と揶揄される事はある。


 現在でこそ冒険者業界で忌み嫌われ、孤立しているバタリオンだが元々は和気あいあいとした普通の冒険者クランであった。


 最盛期は88名の冒険者を要するクランで、その大半が異世界人であった。彼らは異邦の地で途方に暮れつつも寄り集まり、苦しみながらもバッカス王国に根付いて生きていこうと必死に足掻いていた。


 だが、とある遠征で死霊術師メフィスト謹製の特殊屍兵アンデッドに壊滅に追い込まれ、保険をかける金も無かった事からたった7名しか生き残らなかった。


 生き残った7名の異世界人は死んでいった81名のための仇討ちを誓い、アンデッド根絶のために終わりの見えない闘争を機械のように続けている。



 そんな彼女達バタリオンはエキドナ事変に自分達を苦しめた特殊屍兵に似た「空気あくい」を感じ取り、アンデッド以外も相手取りつつ戦線に参加。


 エキドナに次ぐ特異性をサーベラスに見出し、期せずして他の冒険者クランや士族戦士団と共に連携しつつボロボロの魔物を追撃し、容赦なく攻撃を加えた。


 死肉を煮詰めて作った劇薬入りの弾丸を雨のように浴びせ、魔物の目を潰し、激痛から生まれでた咆哮を耳にしてもなお無表情で戦闘行動を続けた。


 周りの冒険者達はバタリオンの容赦の無さに引きつつも、大手柄を前に先を争って攻撃を仕掛け、もはやろくに抵抗できないサーベラスはただひたすらに逃げた。


 だが、反撃は出来ずともやっている事があった。


 それは尾刃で何も無い地面を引っ掻く事。


 その行動は多くのバッカスの人々には「意味のない行動」として見落とされ、尾刃に自分が殺されないよう適度な距離を保つ事だけを促すものだった。



 しかし、中にはサーベラスの行動が何であるのか気づく者もいた。


 その者は西方諸国で生まれた二世奴隷ゴブリンであり、サーベラスの追討――ではなく、追跡を行っている冒険者クランの総長であった。


「おい総長、なに止まってんだ。サーベラスはまだ先だぞ」


「追いついて確かめる事があるんだろ?」


「そんな地面の戦闘痕なんか見てる場合じゃ――」


「違う」


 ゴブリンの冒険者は――イアソンは、呆然とした様子で部下の言葉を否定した。


「これは戦闘痕じゃ、ない。違う、戦闘を意図したものじゃない……!」


「サーベラスの尾が、空振って地面を斬り裂いただけじゃないのか?」


「ちがう!」


 イアソンは叫んだ。


 叫んで、真っ青になりながら先を急いだ。


「これは、文字だ! アイツの、手紙ことばだ!!」




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