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番外編TIPS:計画・研究編:無邪気な騒乱者達


 あるところに一匹の騒乱者ブタがいました。


 彼は同類の騒乱者達が工夫を凝らして蛮行を行う中、微笑みと冷めた瞳を浮かべながら「人間、一人で出来る事に限りがあるよね」という諦観の中にいました。


 騒乱者は「神の尖兵」と言えば少しは聞こえが良かろうが、実態は単なる玩具。


 最も賢い方法は山の天気のように態度を変える神につく事ではなく、ある程度は理性的に寄り添う事が出来るバッカス王国の傘下に入る事。


 その事を理解しつつも、そう出来なかった彼は自分の行き着く地獄さきに「どんな経緯で」「どんな手段を使って」至るかを考えました。


『とりあえず子供なかまを作る……ブヒ』


 神ならぬ一匹の騒乱者に出来る事は限られており、大衆バッカスに寄り添う理性も殆ど消えてしまっていた騒乱者は繁殖行動を行いました。


 その結果、生まれてきた無垢な子供達は汚泥の如き父親の愛情を一身に浴び、スクスクと成長していきました。中にはバッカスの街中、あるいは孤児院で父の愛を知らず育つ者もいましたが、大半が都市郊外ちちおやの傍で育ちました。


 物心つく前から洗脳魔術をかけられ、教祖の如き父の愛と教えをスポンジのように吸収した子供達は多くが父の望む通りに成長していきました。


 子供達にとっての世界カミは父親以外に存在せず、父が優しく頭を撫でる手も、慈しみを持って臓腑を撫でて改造してくれる手も同種の愛でした。


 こうして無邪気な生物兵器こどもたちが完成したのです。


 彼らは西方諸国で生まれた二世奴隷達とも、バッカス王国で生まれた世界開拓用の冒険者せんりょくとも、異界より降り立った者から生まれた魔獣サーベラスとも違う存在としてエキドナ事変に投入される事になったのです。



「ころせ、ころっせえええ! パパの敵は殺せえええええ!」


「何で私達のこうふくを邪魔するのおおおおおお! 死ねええええええ!」


 父親に「エキドナちゃんを守ってね」と命じられた子供達はよく働きました。


 天使のような笑顔で父の言葉に頷き、悪鬼のような形相でバッカス王国が派遣した精鋭冒険者、あるいは武闘派の士族戦士団に立ち向かっていきました。


「やめろ……! なんで、何でこんなところに子供がいる!?」


「待て、待ってくれ! キミ達は騒乱者に騙さ――」


 歴戦の冒険者ですら、子供達は屠っていきました。


 魔物や「普通の」騒乱者を相手取った経験が豊富な士族戦士すら、自分達の子や妹弟でもおかしくない子供達を相手取り迷い、ほんの一瞬の逡巡が致命的なものになりました。作成者の思う壺となりました。


「くそ。あそこの一団は強いなー!」


「このままじゃパパの命令おねがいが達成できない!」


「任せろ。こういう場合もパパが対策を用意してくれてるからな」


 一人の子が泣き顔を浮かべ、手強い一団に保護を訴えにいきました。


「助けて……!」


「あぁ! 大丈夫、もう大丈夫だぞ……!」


「お姉さん達が必ず、悪い騒乱者から助けてあげっ……!」


 そして子の腹に巻かれた爆薬の炸裂を皮切りに総崩れとなっていきました。他の子も倣いました。父親が想定した通り、立派な自走地雷と化しました。


 子供達は父の役に立っている喜びに打ち震えながら、バッカスを阻み、時に横合いから来た魔物に殺されました。著しく損耗していきましたが、それもまた作成者は想定済みだったからこそ、1000を超える死兵を用意していました。


「死――――ねッ!」


「ああ、この子らも騒乱者か」


「一応、そうみたいだなぁ」


 また一つの一団が魔術的にも強化された爆撃に飲まれました。


 彼らは重傷を負いましたが――しかし、それは死傷になりませんでした。


「あ~、もう、痛えなクソガキ共」


「わあああああああああああ、グ、ぴゃっ!」


「あああぁぁ……ごめんな、痛かったな。頭つぶしちゃった」


「いやぁ、これはもう即死させるしかない。総員、子供相手でも構わず殺せ」


 エキドナ追討者の中に、明らかに常軌を逸した集団がいました。


 彼らは傷ついても傷ついても、瞬きのうちに戦線に復帰していきました。


「カンピドリオ士族・第一師団、推参」


「同士族・第二師団、戦列に加わります」


「無理はするなよ、相手の親玉エキドナの手品を解き明かすのが優先だ」


「その無理って、どこ基準の威力偵察はなしですか?」


「ウチに決まってんだろ。子供は無力化しながら死体を拘束し、蘇生後に護送だ」


 バッカス王国において、陸戦最強格の戦士団。


 カンピドリオ士族の精鋭達が追討隊に追いついてきた事で――多少の時間稼ぎしか期待されていなかった――子供達は瞬く間に蹴散らされていきました。


「くそっ! くそっ! 何でぼくらとパパのしあわせを邪魔するんだあああ!」


「死ねよおおおお! 死んじゃえよおおおおおおお!」


「アイツを出せ! 暴れさせろ、狂化薬投与急げ! 全部ブチ込め!」


「行け! 行けッ! 殺しに行けッ! お前なんかなぁ、それぐらいしか出来ないんだ! 精々、ぼくらとパパの役に立ってみせろ、バケモノ……!!」


「7q@……qr:w……c4a)<qr:――」


 戦う事を望まれ、理性を消し飛ばす薬を打ち込まれた一匹の獣。


 その咆哮は人からかけ離れたものであり、バッカスを蹴散らす事を望まれ、物理と精神の二重の楔から解き放たれる事になりました。


 自分と同じ戦場に、バッカス最強のクランがいる事を知らないままに……一匹の魔獣サーベラスが戦線に投入される事となったのです。


 


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