番外編:騒乱者関係知識編:狩魔
騒乱者の仕事ぶりを神が評価した指標、及び「買い物」用のポイント。
目を伏せたくなる神のネーミングセンスに多くの騒乱者が「騒乱者ポイントでいいじゃん……」「ルビと読みが違う悲劇」「【悲報】神様ちゅうがくせい」と酷評している。
本来、神がウキウキで「これで騒乱者内の序列がわかるぞ!」と勝手に作って魔術で自動集計しているのだが、騒乱者達が「ダサ過ぎてポイント多い方が恥ずかしい……」と騒乱活動をボイコットするほどの悪影響が出たため神が「え、そこまで言う……?」と本気でショックを受けて三日三晩、何もする気も起きず寝込む事態となった。
寝込んだ結果、神はカルマというネーミングを変える――なんて事はせず、「ヨッシャ! じゃあ序列以外に稼ぐ動機づけしたろ!」と一念発起。二週間かけて大々的にカルマ制度の再編を開始していった。
再編後の序列システムはそのまま、貯まったカルマは商品やお得なサービスに変換可能となり、騒乱者達が「やっぱ単なる騒乱者ポイントじゃねーか!」とキレたものの、開き直った神は概ね無敵であった。
ただ、カルマの名称は不評だが、貯まったカルマが食品や嗜好品、新しい技術取得のちょっとした手助け、謎の騒乱者工房製の秘密道具を仕入れられる事から「意外と便利」と交換システムだけは……交換システムだけは、評価され、騒乱者全体の質向上に繋がっている。
使ったポイントは減るものの、総取得騒乱者ポイントはそのまま集計されてそれが序列に反映されているのだが、その辺を気にしているのはごく一部の騒乱者と神ぐらいである。
ポイントで交換した商品は即時到着するという事はなく、仕入れ専門の騒乱者がせっせと発送し、時に都市郊外の地面に埋めておいて神の案内で所定の場所へ到着した騒乱者がせっせと掘り返すという形態である。
わりとよくバッカス政府の横槍で手元に到着しなかったり、取りに来たところで捕まるという事があり、騒乱者サイドは「神が一発で転送してこい!」と文句を言っているが「贅沢言うな」と返答されている。
ちなみにカルマで交換可能な商品の中には異世界人向けに「元の世界への帰還」が存在しているが、それを目指した者が元の世界に戻れた例は存在しない。
政府が騒乱者を捕まえた際にも神が親切丁寧に各騒乱者ごとのカルマを教えてくれるうえにカルマの計算方法も公表しているため、計算とその他調査で騒乱者の余罪がズバズバ暴かれていくという事態になっているが、当然、神は改善を予定していない。
掴まった騒乱者など概ね知ったことではなく、騒乱者もまた、神にとっては弑逆対象にして玩具なのである。
ここに一人の騒乱者がいた。
彼は豚の如き醜悪な面の持ち主で、100年を超える長期間に渡って騒乱者を続けてきた強かな者であった。自分が神の玩具である事を自覚しつつも、玩具なりの人生を楽しんでいた。
「てなわけで神様、こんな感じで頼んますブヒィ」
「ほー。こんな一挙にカルマ使うとは珍しい」
「ブヒヒ❤ たまには家族サーヴィスってわけですブヒッ❤」
豚面の騒乱者はカルマを使い、大量の資材――ではなく、大量の食材を頼んでいた。肉、魚、野菜に果物、菓子の材料も発注し、自分で作ろうとしていた。
「今回は、ぼくの人生でも最大の作戦になるんで~、景気づけも兼ねてね」
「なるほど」
「あと、さすがに今回は捕まるかもなー、という予感がありまして」
「弱気だなぁ。天下のカタキラウワ君らしくない」
「ボクは天下取った事なんて一度もないですよ。これまでも、これからも」
「ふむ。メッフィーは勝つつもりだけど、カタキ君は難しい、と?」
「難しいでしょうね。いや、今回は神様の依頼も並行してやってるから、もちろんそれなりの成功はしたいなぁとは思ってますけどね。さすがに難しいでしょうし、神様も手放しに大成功するとは考えてないでしょう?」
「まあね。でもまあ、そっちの言う通り、私の依頼も交えての事だから……カルマの消費無しに他の騒乱者も追加で呼んであげていいよ~。1000人ほど?」
「いやいや、メフィスト先生に加え、バロウズ先生のお力を借りれるだけで十分です。あと、天魔とエリヤ先生の置き土産も助かってますんで。これ以上、大動員して政府の警戒度を引き上げるのも面倒ですし――」
「「「「パパ~~~~!」」」」
「おっ? どうしたブヒか? 食事会で食べたいもの、追加が出たブヒ?」
「違うよ~?」
「飾り付けの相談だよ~」
アジトの一つにて、神と話をしていた騒乱者のもとには沢山の――百近い子供がいた。種族は様々で、容姿が大きく違おうが、誰もそれを気にしていなかった。
騒乱者は父親らしい笑みを浮かべ、しゃがみ込み、子供達に揉みくちゃにされながら「うんうん」と頷き、聞き役に徹していたが、やがて一つの事を告げていた。
「実はね? 今度の食事会、託児所に預けてた子も戻ってきて参加するブヒよ。皆のことをよく知らないだろうけど、仲良くしてあげてほしいブヒ~」
「わかった~!」
「タクジショってなに?」
「バッカス王国ブヒよ」
「よくわかんねっ」
「わかる必要、あることなの? ないよね?」
「ぱぱのいうことだけきいてればいいんだよ。ね」
「そだね~」
「おれのままは来れるの~?」
「わたしのも~」
「うーん、アリアちゃんとイリアちゃんは難しいかなぁ。でも、後でちゃんと点検に行こうね。二人は今回の作戦の前準備に大いに貢献してくれたからねぇ……おチビちゃん達もちゃんと連れて行ってあげよう」
「「やった~」」
騒乱者は嗤った。騒乱者の卵達も笑った。
彼らは群れであったが、容姿は様々で笑い方も一様に違った。顎まで届く犬歯を見せながらケタケタ笑う子。白色以外もたない子。尻尾の代わりに手が生えた獣人。浮遊する目玉。胴体越しに顔を見合わせ微笑む双子。
バッカス王国以上の多様性を持つ家族は、密かに、決戦の時を待っていた。




