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番外編TIPS:技術編:魔術拡散紙


 主に対人戦で用いられる道具。使い所が難しいところもあるが、上手く使えば一瞬で戦線を突き崩す効果があるとされている。


 対人戦闘――魔術戦においては解呪魔術が有効手段の筆頭に挙げられる。対魔術師には非常に効果があり、対人巧者は近接戦闘中も解呪魔術のかけ合いと無効化が絶え間なく行われる事になる。


 魔術は地力を大幅に底上げ出来るが、その魔術の加護が無くなるとバッカス冒険者などは途端に弱くなるため、解呪の腕の良し悪しは対人戦の勝敗を左右する重要要素である。


 魔術拡散紙も対人戦における効果は解呪魔術に近いが、こちらは「相手の魔術を消す」ではなく「対象を選ばず周囲の魔術行使を妨害する」というもの。


 拡散紙が撒かれた場所は魔力が拡散しやすくなり、少量の魔力しか込められていない魔矢などは10メートルも飛ばないうちに掻き消える事となる。


 身体強化や武器強化の魔術もよく意識しなければ切れやすくなり、魔力消費も増加する事から拡散紙を処分するか、撒かれている場所から逃げなければ立てこもって長期戦を行う事も難しくなる。


 都市防衛戦においては場所を移そうにも移せず、拡散紙を処分しようにも紙吹雪のように点在する拡散紙チャフを全て拾い集めるのは酷く苦労する事になる。


 敵味方共に魔術行使を妨害するという面倒な点はあるものの、魔物はこの影響を受けづらい事から騒乱者が「魔物をけしかけながら後方から拡散紙を打ち込んでいく」というのは対バッカス冒険者相手には非常に有効な手段である。


 魔王やナス士族長相手にも拡散紙が勝てる! という事はまったくなく、それぐらいになってくると拡散紙がどれだけあろうか消し飛ばすか、あるいは魔力が拡散される事ありきの大魔術を使ってくるので便所紙程度の役にしか立たなくなる。


 が、常人どころか士族戦士団相手でも有効手段になりえる事から、仮にバッカスが魔王という抑止力を無くし、バラバラに別れて争い合う事になると拡散紙を使った戦術は今以上に使われる事になるだろう。


 問題点として、半径5メートル圏内をカバーする拡散紙一回分を用意するのに駆け出し冒険者1人分の年収が吹き飛ぶほどの調達資金が必要となる事もある。


 だが、魔物の大群の後方に隠れ、工兵として立ち回っている豚顔の騒乱者は潤沢な物資と物量を容赦なく投入し、イアソンやメーデイア達を攻め立てていた。


「いやー、さすがさすが、拡散紙にもメゲずに地雷原維持してのけるとかメーデイアちゃんはやるブヒねぇ。さすが忌み子の星ブヒ」


 質と量、さらには魔術拡散紙を投入してなお、討伐隊が即時総崩れとなる事は無かった。魔物及び騒乱者側に押されてはいるが、確かに持ちこたえている。


 精鋭が揃っているだけに並大抵の襲撃では小揺るぎするもしないが、さすがに複数の竜種と対バッカスをよく心得た騒乱者が暗躍している状況では、崩れていてもおかしくないのだがまだ迎撃に成功していた。


 それを成すに大きな役割を担っていたのはエルフの魔術師・メーデイア。


 魔女と呼ばれる彼女の功績は魔物の生態に関するものが殊更大きいが、研究者だけではなく、戦士として腕っぷしもバッカスでも上位のものを持っている。


 そんな彼女が野営地防衛に使っているのは地雷原の如き魔術であった。


 野営地を囲う形で敷設された法陣を介し、領域内に踏み込んできた魔物達に干渉ハックし、魔物が持っている魔力を爆薬として炸裂させるというものである。


 木っ端の魔物であれば跡形もなく消し飛ばし、その手の干渉に耐性を持つものでも足ぐらいは吹き飛ばし、野営地外に肉の壁を形成していっていたが――しかし、それだけで全ては撃退しきれず、魔物達は仲間の屍を足がかりに無理やり距離を詰めつつ合った。


 まだ捌ききれている。


 だが、メーデイア自身も起爆と法陣の管理に魔力を割いており、拡散紙で乱されそうになる術式を補強する事と物量によって凄まじい勢いで残存魔力を削られ、魔薬をガブ飲みして何とか防衛線を維持しようとしていた。


「メーデイア様、完全に退路を断たれました……!」


「陸地はそうでしょうね。まだ予告されてる試練まものが三体、出てきてないようだし……ここは退くしかないわ。クソ騒乱者を討ちたいところだけど……」


「敵中を中央突破ですか。では、急いで――」


「まだよ、まだ速い」


「敵の数が多すぎます。メーデイア様の負担も包囲の手もさらに厳しく――」


「大丈夫もたせる。それに、まだ包囲されてない場所があるでしょう?」


 メーデイアはそう言いつつ、北の海を――魔物事情で開拓困難とされているサクラメント群島側をチラリと見た後、彼女が最も信を置く冒険者に問いかけた。


別働隊そっちの準備は?」


「五割ってとこだなー。あと十分待ってもらえれば十割になると思うけど」


「わかった、何とか持たせるわ――準備完了次第、撤退しながら殲滅する」


「欲張るなぁ。まあいいけども」




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