エヌねえ
「──何」
〈何って。……いや、どうなのさ〉
携帯から流れる、ドラムの重低音から続いた神曲着メロをある程度堪能した俺は座る椅子にふんぞり返り、気だるげに通話ボタンを押していた。
「普通」
〈普通、か。……何が?〉
「今の着メロ、いいじゃない。何アレ」
〈カッコいいだろ。アレがアタシのテーマだから。アレどっかから流れてきたら、アタシが近いよ〉
近いのかよ。つーか色んなところから流す気かよ。
「気に入らん。アレは俺のテーマ曲としてふさわしい。着メロにパクっとくから」
〈オマエのテーマは……三味線とカスタネットでドウにかしておきなよ〉
「落語家が現れそうだな」なんて感じで微笑む俺。
対面に座るワルディーもそんな様子を楽しむみたいに『にゃるぴす』をニコニコ味わっている。
焚き火のほのかな光に──ほー、ほー、なんて、マッタリとした夜を演出するかの様なフクロウの声も合わさって……。少し、心地いい。
そういやまだ名前教えてなかったよな。
大いなる『世界賊』が首領──エヌゼット・シー。
ワルディーのお姉ちゃん。
読者さんは覚えてるかな。俺と最初にいた(声だけな)姉さん。
このストーリーの記念すべき第一声(まあ内容はともかく)を飾った彼女が、また声だけで登場だ。
いや別に姿を見せないからって、彼女はナイーブな恥ずかしがり屋さんってワケじゃあないんだ。
〈な、ナイーブだよ?〉
うるせえ。
エヌゼットだって俺みたいにポヨヨンと、宇宙のドッカからこの場に参上出来る様な存在だ。だが、ある理由で出来ない。こんなフウに瞬間的な声、音を刻むくらいで精一杯。
現れる段階ではない……とだけ言っておこうか。
だから俺がここにいる──かはさておき、まあ、全宇宙、全生命の脅威と恐れられるからには、相当ヤバイお方ですよ。
──誰が恐れているのか?
……うん、色んなヤツだ。
この地球に住む人類はまだ、彼女を知らないんだけどな。
とりあえずみんな、もし夜中に彼女と出会ってしまう事があったなら、すぐにズボン下ろして親指隠せよ。さもないと食われるぞ。
〈なんの都市伝説だよ。ズボン下ろされても……困るよ〉
なんて具合に心を読まれた挙句、食われるぞ。
〈食わないから〉




