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覚醒


「もちろん、それなりにわたくし達も真面目に取り組んでいますよ。それこそ、今後の命運を左右しかねない重要案件ですから」


 少し、姫の言葉が真摯に流れた。


──まあ分かってますよ。ランチの時もスカウトの事で落ち込んでたもんな。

 

 てくてく歩く中、シズカはやや微笑んで隣の俺を見る。俺も目だけ合わせとく。


「それでもやはり、簡単にはいきません。……人間ですもの。それぞれの居場所だってある事ですし、それぞれの思惑、目指す先もあるでしょう。そしてわたくし達と同じ様に、自分達の周囲を守る事で精一杯な地域は数知れません。……嫌な言い方になりますが、カードとしてこの時代、まずは自軍により強い力を求めるのは当然です」


 進化が招いた乱世──。

 まあ、戦国時代みたいなモンでもあるよ。


 長い時を経て構築された秩序、ルールすら消し飛ばす力が、世界中で続々と湧き上がってきているんだ。

 それを恐れる古からの権力者達。

 この時を待っていた虐げられし者達。


 そして……綺麗事だけで世界は進んじゃいない。

 

 約束の最終力──『認識兵器』が織り成す物語は、まだ始まったばかりだ。

──いや。最終局面を迎えている、とも言える。


 力を得た者だからこそ至る様々な考えは、やがて人間らしい、純粋な道を辿っていくのかもしれない。……もしくは──。

 


 決めるのはお前達だ。くらいで俺は冷たい目を、そうしてゆっくり正面の夕日に逃がした。



「どんなに飾っても、やっぱりお互いに、怖い──というのもあるのでしょう、きっと。……よく解らない、みんなの力が。……自分の力さえも」


 シズカも付き合ってくれた。

 発する低音は凍えるかの様に、だからこそ彼女の瞳は、彼方の大きな火を求めたのかもしれない。



「震える手が、誰かの手を……ちゃんと掴めないのでしょうか」


 その声色は諦めか、愁いか。

 それらが呼ぶ、静寂の景色。


 かじかむ手は、何によってその震えを止められるのだろうか。



 考えればいい。迷えばいい。

 俺はもう……パスでいい。



「……ね。カタリさん」


 同意を求める様な言葉と共に、再び視線を感じた。



……やれやれだよ人類。

 これでどうですか?


 気の利く言葉も投げかけないで、俺はゆっくりシズカに顔を向けた。



「──ぷっふぅぅうー! ええっ?! よくできますねそれ!」


 すごい寄り目で猫口をキメる俺の顔にシズカは吹き出し、笑うというより感心してまじまじと見てきた。


「これが答えだ」

 夕暮れの森の中でチョット出会いたくない、怖い寄り目で俺は首を傾げながら、バレリーナみたいなつま先立ちでチョコチョコと姫に接近した。

「やあああ! ちょっとカタリさんほんと怖いです!」

 笑いと恐怖が混在した声を上げた姫は、縮こまりながら俺から距離を取った。


──チャンスだ。俺は両手をカマキリの様に上げて、変な鳴き声で威嚇した。

「みゅうううう!」

「いやあぁああ!」


 

 旧校舎方向へとパタパタ逃げる、チョットおっきいお姫様。


 尚もチョコチョコと変質的な動きで奇声を上げながら、俺は今宵の生贄となる女の後を追った。




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