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永遠の十八歳

 


 周囲は元の理事長室へと戻っていた。


 

 白いスーツの理事長はヒール分、俺より少し背が高い。


 

 彼女が俺を抱き寄せていた手をゆっくり離したので、俺もゆっくりと、後ろに少し離れた。




 俺の据わった目を見る穏やかな理事長の瞳は、少しだけ、潤んでる様にも見えた。


 


 外から、体育系の部活に勤しむ女子達の楽しげな声が小さく聞こえてくる。




「────さて、働く件についてだ龍士郎」



 理事長はカツカツとヒールの音を鳴らし、席へと戻りながら妖しいトーンで言う。


「戦闘に参加してみて、どうだった? この学院はこの先、生き残れそうか?」



──また菓子か。

 ウエハースみたいなヤツを手に取り、サクリと噛むと革張りの椅子にドスンと背もたれる理事長は悪そうな笑みに戻っていた。


「……ある段階までの戦況には耐えうる力を有していると思いますが」

 

 俺は首を軽く回して、また無気力感を取り戻す。



「ある段階、か──」


 

 理事長が「ん」とウエハースの包装ごと俺に差し出し、勧めてくる。もう断るのも面倒なので、俺はムスっとしながら小さな長方形のそれを一枚抜き取った。

 さくさく食らうと俺はやや、顔をしかめた。甘過ぎる。輸入モノか。

 

 理事長室をクラシカルに演出する、壁掛けで縦長の古ぼけた時計がコーン、コーンと低い音で十七時を告げるモンだから、俺は何気なくその時計に目を向ける。

 低い音と同時に、時計の中央に作られた小窓がパカッと開く。


 鳩時計か。鳩、カモン。

 俺がボンヤリとそう思った矢先──出てきたのは柴犬だった。


「これが柴犬時計だ」

「うるせえ」

 悪そうなドヤ顔の理事長に俺は冷静にツッコんだ。

 小窓から柴犬のギミックはヒョコっと出てきただけで、別に鳴くトカしない。なんか……やれよ。鳴けよ。



「宇宙の認め合いやら……ソコに集うモノ達やら。──どう思う?」


 この甘ったるいウエハースを缶ジュースで流し込みながらまた壮大な事を。見てるだけで口の中が甘くなってくるよ。

 

 どう思う? と言われましても……。

 特に思わん。


「頑張ってますよね。どうでもいいけど」

「な~。頑張ってるよな~」

 

 人の事言えないけど適当な感じで合わせてくるんじゃないよこのタイガー。


──さて、そろそろ帰るかな。


「まあまあ龍士郎。ゆっくりしていけ。というかまだ話の途中だよ」

 

 まあまあと、猫グチでウィスキーボンボンを勧めてくるタイガー。理事長としてアウト過ぎるぜ。まあ俺以外の学徒にアルコールを勧める事はさすがに無いだろうけど。

 つーか、あんま心を見透かすんじゃないよまったく。失礼な人ね。

 

 ぶーすぶーす。


「はあ?! 上等だ小僧!!」

 女王がブチギレて立ち上がると、軽い身のこなしで机の上を側転で乗り越えてきやがった。ちょっと奥さんパンツ見えますが。はしたない!


「ふぎゅううううう!」

 すかさず片手で俺をピヨグチに締め上げる女王。奇声を発する俺に対し、眉を八の字に歪ませながらえぐる様な目つきだ。


「この口か。ブスとかほざいてしまったのはこの口なのか」

 口では言ってないでしょ! 俺はふるふると顔を横に振り続けた。


「何だって? この女王である私が、何だって?」

 ん~? と悪の首領みたいなやばい笑みで俺に顔を近づけるタイガー。



「り、りじちょーは、十八さい」

 


 俺の震える言葉に……拘束がスグに解かれた。




「──さ、龍士郎。これが報酬の『ちょこ坊主』だ」


 タイガーは満更でもない感じでさっきの菓子を手に取ると、俺のポッケにねじ込んできた。





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