マイクルーツ
「──ふふ。私達らしくないよ」
言いながら、ナツミが沈みがちの会長の口元までうなぎチョコを運んで、ほれほれと揺らす。
やがて会長は「わん!」とそれに食らいついた。
「……そうですね。それでもみんなで、行きましょう。……ね、沙理緒。──いえ、サリオワンダフル!」
姫が膝に座らせるワルディーの手を取り、犬かきみたいに操って「わんわん」とサリオに向ける。だけどワルディーは猫口だ。
「却下」と魔王は目を細め、わんわんじゃれついてくるカワイイ手を押し戻した。
「で、それ何なの?」空気を変えようとするシズカに俺は乗ってやった。
「サリオが放った『認識兵器』ですよ。──そう。それは荒れ狂う少女が全てを賭けて解き放った明日への破壊力。その名は、《サリオ・ワンダフル》」
「──無いな」会長がモグモグとチョコを味わい真顔で言う。
「《サリオキック》でいいじゃない」ナツミも適当に言うと、うなぎチョコをモグモグ。
「何を言うのです先輩方は! あの列島破壊の『認識兵器』、《リバティック・トリガー》に対抗するには《サリオ・ワンダフル》しかないでしょう!」
「頼むからその後にサリオワンダフルを持ってこないでください」
うむ。センスのヤバさが浮き彫りになるな。ショックに固まるサリオの言い分はもっともだ。
「さりおビームがいいれす」
「ビーム出てないから」
俺が言っておいた。ワルディーの対応は俺に任せておけサリオ。素人が近寄ると危険だ。
「《サリオ・バスター》でどうだ?」
「悪くないけど、どういう攻撃か見えづらいよ会長。《ミサイルサリオキック》だね」
「《サリオ・ワンダフル》ですよ」
「すいません、名前は入れなきゃいけないんですか?」
何だかどうでもいい話はだらだら続き、サリオドライブとかサリオジャスティスとかハイパーサリオとかセクシーサリオとか。
「ありえない! そもそもアレ、姫も協力してたでしょう!」
もっともだ。悪ノリにキレるサリオの言い分に皆が「うむ」と頷く。
「じゃあ、もう《サリオ記念日》でいいです」
「ここまで譲歩できない妥協案も珍しいよ」
飛び火を恐れた姫がやれやれと暴挙に出たところを俺が素早くツッコんだ。
「仕方の無い子達ね。先生がスゴイのを考えておいてあげるから、とりあえず保留にしておきなさい。カタリ君、悔しかったらかかってきなさい。地鏡さんもそれでいいわね」
「超悔しくねぇ」
「ふん。どうせまたサリオ系なんだ。もう何も信じません。私は北に旅立ちます」
「北に」
「やはり女は北よね」
シズカがチョット吹き出し、ライフが変に納得。「演歌か」と俺がまたツッコんでおいた。
すねるサリオをワルディーがビスケットを与えながら説得していると、ピンポンパンポ~ン♪ と、教室前面のスピーカーから何か校内放送の合図が流れた。
「──あ、いけね、呼び出しかな? とりあえずもう行くね」
ナツミが腕時計を確認しながらチョットあわてる感じで席を立った、その時だった。
〈龍士郎てめえコノやろう!! かかってこいコノやろうコラ!! やってやるよコラ!!〉
全校放送に校内全員の腰がズルルっと砕けた。
「──こ、これは!! 何者だ一体!!」
なんとか持ち直した俺は、全校に響き渡る謎の機械音声を垂れ流すスピーカーに向かって身構え、声を張り上げた。




