五時間目の戦士達3
105、80、62、49、22、3、0。一体殲滅。
炎の中で異色の光が舞い散った。
6、0。二体殲滅。
ラスト、37、おうクリティカル。
2、0。三体目殲滅。
空の炎が爆発を起こした様に弾け、飛び散る火の粉はやがてキラキラと輝きながら空に消えていった。
その中心にはもう、何も残っていなかった。
「撃ち方やめ! ──敵の反応は?!」
「──光球型、全て反応消失! 殲滅成功!」
ナツミに返答するアナライザー女子の声に一時、ロングレンジ部隊の少女達と司令室内の女子達が歓声に沸いた。
「よし! 親衛隊はワルディーの援護を! 姫の状況は?!」
「高速人型二体は健在! 何か動きがおかしいです! 逃げ回るだけで仕掛けてきません!」
オペレーターの答えに、ナツミは眉をしかめた。
「くぅ! なんというスピード! まるで弾丸です!」
高速宙返りから空に足を滑らせ光の地を削り砕くシズカが、敵を険しい表情で見据えた。
相手の人型世界核二体はやや薄っぺらい、白い凧みたいだった。
並ぶ感じでフワフワと浮かぶそいつらは四肢を大の字に広げ、背中にはボコボコ膨れる、不完全で小さい羽みたいなモノが二つ生えていた。
顔らしきパーツも見えるが、ノイズがちらついていてよく判らない。
〈姫、ダメージは食らっているのか?〉
襟のインカムからナツミの声が聞こえると、シズカは長い足の太ももに巻いたホルスターからオートマチックの大口径ハンドガンを抜き取りつつ冷静に答えた。
「いえ、相手に接近ができませんので、互いに無傷です。これでは同極の磁石です」
〈やつらの思考など解らないからな。ならばいっそ、そのまま引き付けておいてくれ。ワルディーがまた『認識兵器』に捕らわれているかもしれない。そちらを片付けてから援護に向かわせる〉
「無事ですか?!」
〈モニターで見る限り膠着状態だが、呼びかけても返事をしないので今ひとつ状況がつかめない。楽観はできないな〉
ナツミの低い声に、シズカも動揺を抑えながら素早く銃口を世界核へと向けた。
敵との距離は約三十メートル。
「とにかくワルディーを優先してください。わたくしなら大丈夫です。いざとなれば高威力型の『認識兵器』を使用しますので、総員に通達を願います」
言い終わると同時にシズカは大きな銃声を響かせ、世界核へ発砲した。
「ワルディーの破壊力は貴重だけど、時として生じる否定力の脆さが致命的なのよ。いつか取り返しの付かない事態を招くかもしれない。けれど、それでも戦ってもらわざるをえないのよ。人間には迷ってる余裕なんてないのだから」
ライフが窓辺に立ちながら、空で鳴る音の方向に目をやっている。
黒い軍服の襟には俺らと同じ様に小型インカムが装着され、入り混じる通信音声が小さく漏れ聞こえていた。
俺はライフの言葉に何も返さず、ゆっくり教室入り口のドアに向かう。
「──おっとビックリした。いこうかカタリ。ライフ教官、カタリを預かります」
俺がちょうど入り口付近に立ったところでサリオが入ってきた。
「先生、いってきます」
俺は振り返り、ライフにそれだけ言った。
「──健闘を祈るわ」
ライフは振り向かなかった。
クールな姉さん。




