所業
「まあ霧砂は色々飛び回ってるよ。今度ランチの時にでも話を聴いてみな語君。なんか、元気を分けて貰える感じだから」
言いながら、ナツミは握った手の親指に乗せた豆を弾き、口にナイスシュートを決める。上手。
「はしたない。わたくしには到底真似の出来ない所業」
「所業」
なんて、冷たげな令嬢っぽいシズカに続いて俺が声を漏らすと、ナツミが何気なくもう一粒、豆を弾く。
うわ高く飛ばしすぎ。
高く飛んだ豆はひゅ~っと落ち、冷酷な眼差しでナツミを見るシズカの顔の前に降ってきた。
「わん」パクっ。
おお。ナイス犬。シズカドッグナイスキャッチ。
変な姫は満足そうに、キャッチした豆をモグモグ。「わん」て言っちゃったね。犬だね。
「はしたない。私には到底──」
「回るパターンか......」
サリオがノっかってきた事で俺は見切った。
やはりシズカが「とう」と豆を親指で高く弾いたところでナツミは俺に続ける。
「この前は被災地域のチビッコ交通安全教室にも出向いてたよ。復興作業で車両の出入りが激しくなるからね」
それで事故にあう子供もタマにいるしな。
俺は「ほう」とだけ答えて、落ちてくる豆を目で追ったまま。高く飛ばし過ぎじゃ──
「にゃん」パクっ。
おお。ナイス猫。サリオキャットナイスキャッチ。
「はしがにゃい。ワルディーにはとおてぇ──」
ハシ忘れたの? やはりワルディーが参戦してきた。冷たい眼差しだが口が猫みたいだ。
「よっ」とサリオが豆を弾いた。ふわっと程よい高さ。
「アル!」ぽとっ。
おお。ナイス中国人。いや中国の人ってホントにアルって言うの?
パクってイったが全然タイミングが合ってないワルディーの頭の上に、豆は見事着地した。
「なんで中国人来ちゃったの」ナツミが吹き出し──。
「この流れで中国人は無いな」とサリオが言った直後。
「あるアル!」
ワルディーが目を輝かせ、ヘディングみたいに頭上の豆を突き上げた。
フワリと浮いてすぐ落ちる豆を、ワルディーはパクっとナイスキャッチしやがった。
「おお!」とサリオが驚き、「雑技団かよ」と俺はツッコむ。
「これはワルディーが一等賞だね」
ナツミも驚きながらワルディーをナデナデ。
「こ、これで勝ったと思わない事です!」
悔しがるシズカ。ちょっと安めの令嬢だ。
あ、令嬢がなんか思い出した様にハンカチだした。
あハンカチ噛んだ。
ハンカチ噛んできゅ~っと下に引っ張った。
まず遅くね? 思い出すんじゃないよ。
ふふっとナツミは一笑し、話を戻した。
「本当は軍とか警察がやるべき仕事だと思うが、どこも人手不足だ。というわけでカリスマアイドルが一肌脱いでるってわけさ。ライフ教官もそれについて好意的だ。──統合軍とは色々あるが、まあ、色んな人がいるんだよ、軍にも」
色々……な。
ナツミの目を見て「なるほど」と、小さく頷いておいた。
統合軍。世界統合の流れで生まれた、いわゆる地球軍だ。
学徒兵は基本的に統合軍が管轄している末端の兵であり、先にも少し触れたが、かつてその扱いは非人道的な酷いモノだった。現在も軍の高圧的な態度は変わらず、確執は大きい。
ただ軍の人間全てがそういうモノ、というわけでもなく、学徒兵に対して歩み寄りを見せる穏健派なんかも存在している。見た感じ、ライフも学徒達と良好な関係を築けているみたいだよな。
組織上のしがらみもあるだろうが、最後はやっぱり人間性なんだろう。
そして、軍と学徒兵の関係に今、大きな異変が起きているんだ。
うん、いずれ、よくわかるよ。というかもう答えは読者さんに見えちゃってるけどな。




