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ミーティング

 

 食後、ナツミが持ってきた甘納豆をみんなでつまみながら非常時の話を進めた。

 

 俺は後方司令も兼任する二年総司令の指揮下で、状況に応じて周辺地域の一般市民、校内非戦闘員などの避難誘導、未成年者の保護なんかを主に任された。


「二年総司令の霧砂きりすな 零未ぜろみは本日、隣町のショッピングモール内にあるチビッコ水族館でイベント活動中だ。今回は避難訓練教室だったっけ?」

 

 ナツミがサリオに振りながら甘納豆をひとつまみ。


「はい。幼稚園児を対象に、今日も変な踊りが炸裂していると思われます」

 サリオは淡々と答え、お茶をすする。


「チビちゃん達に大人気だからなぁ。なんだっけあの変な舞妓さんのダンス」

「『ホリデー・舞妓・フィーバー』ですよ。舞妓さんの休日をテーマにした、やたらと弾けたキレキレのダンス。そのうち祇園とかから苦情きますよアレ」

「おととい校舎裏で新作のダンスレッスンをなさっておりました。常連さんの前で舞妓さんのストレスが遂に爆発、そんな状況を激しく表現したいとの事でした」

 

 どんなダンスだよ。まず誤解が爆発してんじゃねーか。

 舞妓さんはいつだってプロフェッショナルなんです。

 多分。

 きっと。

 まあよく知らん。

 俺はそんな感じで三人のマッタリトークを適当に聞き流しながら、つまんだ豆に目を輝かせるワルディーをボンヤリ眺める。



「カタリさん、学徒アイドルコンテストはご存知ですか? インターネット上で行われる全国の女子学徒を対象とした人気投票なのですが……有名ですよね?」

 

 尋ねてくるシズカがひよこ豆を集中的につまんでいると、ナツミがその手をぺちんと叩く。

「姫。ひよこ豆ばっかり食べないでコッチの空豆とか金時豆もバランスよく食べな」

「あ、あ、わたくしの『ぴよぴよ六号』……」

「豆に名前つけんな」


 とりあえず俺はツッコんでおいたが、シズカが言った学徒アイドルというワードに少し思うところがあり、だがそれは誰に打ち明ける事でもないので、表面上は無関心を装っておいた。


「──ごめん。聞いたことあるが、あまりそういうのに興味が無いからよく知らないんだ」

「意外に硬派だなカタリ。ゼロミ先輩はそのアイコンランキングの十位に入っているんだ。健康的で明るい、カワイイ人だぞ」


「カワイイ人だぞ」のところで、俺に軽く肩を寄せてくるサリオ。


「かにゃしいミトだお」

 悲しい水戸。ちっ。そうきたか。恐らく納豆つながりだ。どうしたの水戸。

 ニコニコと甘納豆に手を伸ばすワルディーは緑の豆ばかりをつまむ。


「ワルディーは空豆ばかり食べないでコッチのひよこ豆とかもバランスよく食べな」

 空豆をつまむワルディーの手を掴み、自分の口元に近づけるとパクリ、ナツミは空豆を食べてしまう。

「あ~、『そらにゃん』、『そらにゃん』ばいばい……」

「お前もかワルディー……」

 俺がツッコむと、ナツミはチョットしゅん、となってるワルディーの口にひよこ豆を運び、「はいア~ン」と優しい。


 それをじっくり見ていたシズカ。

「ナツミ先輩はわたくしにア~ンを忘れております。はい、ア~ン」

 なんて言って、ワクワクした感じでア~ン、と口を開けて待っている。

 それを見たサリオが卓上に置いてある塩のビンを手に取りシズカの口元にそっと近づけると、シズカは「ちっ」とヘタクソな舌打ちを鳴らして、その優しい手をぺしぺし払った。


 

 学徒アイドル──か。

 

 仲良しさんな二人に挟まれつつ、少し、俺は物思いにふけた。 



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