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なっつん


「──やあ後輩。ガッツリいってるね」


 テーブルを挟んでワルディーの対面に座った俺に、ワルディーの隣でお弁当を広げているポニーテール女子が気さくに話しかけてきた。俺はとりあえず「ども」と頭を下げておく。


「三年総司令、波藤 那津美(はとう なつみ)だ。よろしく」

 しっとりと落ち着いた感じのお姉さんだった。俺も改めて名乗り、もう一度ペコリ。


「ワールディアれす。酢めしとごはんでだいじょうぶれす」

「乗っからなくていいから」

 ぺこりと俺に頭を下げるワルディーに、俺はもぐもぐカレーを頬張りつつ言う。

「なっつんのおにゃぎり、おいしいねぇ~。い、いいよぉ~。いいんだお~」

 ナツミのおにぎりを分けて貰ったのか。幸せそうだなワルディー。


「どうだ? 女子校は。中々にカオスだろ? 幻想を打ち砕いてしまったかな?」

 微笑みながら言うと、ナツミもおにぎりを上品に口へ運ぶ。

「ここの店名から彼女らのノリまで、結構イカレてて、いいと思います」

 俺はシズカ達の方に目をやりながら素っ気ない感じで答える。


「──そう、あれは沙理緒とわたくしが学校帰りにおやつを食べようと、変なたい焼き屋さんに寄ってみた時の事でした……」


……なんかまだ続いてる。てか結局何なのアレ。変なたい焼き屋とかチョット気になるし。


「ふふ。ここの店名も、前にくじ引きで決まったらしい。理事長の方針でな。あまり気にしなくていいよ。それに──」


 ナツミは言いかけると賑やかな女子学徒達に顔を向け、優しく見守りながら続けた。

「元気があっていいじゃないか。みんな、楽しく生きようと前向きだ。──私達は五分後には死んでいる可能性の高い世界を生きている。……だから、せめて、その時までは」


 俺に向き直り、ナツミは優しく微笑む。そして彼女はワルディーのほっぺについたゴハン粒をそっとつまんだりしながら、それ以上は言わなかった。


 

 せめて、笑おう──か。


 昔、アイツにも言われた。


 

 そう、ここは読者さん達の世界より、明日死ぬ可能性が上がっている世界だ。

 そして俺は過去にも、ここと同じような時代を生きた。



──そんな残酷な世界で、このノリがおかしいと思うかい?


 でも読者さんの世界だって、誰かが死んだニュースと誰かが生まれたニュースが混在して、裏側ではお笑い番組に声を上げて笑ったり子作り行為に励んだり、世界を憎む人の壁一枚隣で世界を愛する人がいて、そんなもんだろ? 

 

 そんなもんだ。命なんて。



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