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第5話:宮廷の病と陰謀

屋敷の書斎で巻物を整理していた織音に、突如として知らせが届いた。

「お嬢様、宮廷で謎の伝染病が広がっています。医師たちも手を焼いているそうです――!」


情報を耳にした瞬間、織音の胸は高鳴った。

これはただの病気ではなく、薬学の知識を活かし、宮廷での信頼を確立するチャンスでもある。しかし同時に、政治的な駆け引きの渦に巻き込まれる危険も孕んでいた。


「わかりました。すぐに準備します。」


織音は庭で育てた薬草を選び、効能を最大化する調合を頭の中で組み立てる。

巻物の図式を応用し、効能と副作用を事前に計算。手元の小瓶に必要な成分を順序よく詰め込み、特製の処方書に効果と飲み方を明記した。


馬車に乗り込み宮廷へ向かう道すがら、ミラが小声でつぶやく。

「お嬢様……本当に、あの宮廷の方々に役立つのでしょうか……?」


「大丈夫、まずは小さな成功から。信頼は一夜で生まれるものじゃないけれど、積み重ねれば必ず形になる。」


宮廷に到着すると、広間には病に倒れた貴族や使用人たちが集まっていた。

主治医は困惑の表情で薬草を見つめる。「……これは、織音殿下の調合ですか?」


「はい、前世の知識を応用しました。」


織音は手際よく薬を配り、処方書の説明を簡潔に行う。

患者たちは半信半疑ながらも薬を服用し、やがて症状は緩和されていった。


「素晴らしい……! お嬢様、あなたの薬で命が救われました!」


宮廷関係者の間に、織音の名が瞬く間に広まる。しかしその影で、陰謀の影が蠢いていた。

貴族の一部は、蔵書を独占することで権力を握ろうとしている。織音の活動は、知らず知らずに既得権益を脅かすことになるのだ。


その夜、書斎で巻物を開きながら、織音は考えた。

「薬で人を救い、知識で世界を変える……でも、知られざる力を持つ者たちは、必ず妨害してくる。」


明日の計画を立てつつ、織音は小さな図書館の設立構想を練る。

宮廷の信頼と庶民の救済、両方を実現するためには、単なる調合や薬草知識だけでは足りない。

巻物の古代図式を活かし、知識を戦略に変える――それが今、彼女に課せられた使命だった。


窓の外、夜空には星が瞬き、宮廷の灯が微かに光る。

織音は拳を握りしめ、小さく呟いた。


「本は、薬になる。そして、私が作る図書館は、誰も救える場所にする……」


その決意とともに、少女の異世界での戦いは、より大きな舞台へと広がっていく――。

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