おわり
「うご」
アレクセイは後頭部に衝撃を受けて思わず声を漏らす。
森で魔獣の討伐依頼をこなしていたアレクセイは少しの油断もなく魔獣の解体を進めていた。しかし、何の気配もなく突然視界が反転して頭が地面にめり込んだ。これはドラゴンスープレックスである。
「違う!ごめんなさい!」
どんな猛者が、と考えを巡らせていたアレクセイだったが、背後から聞こえてきたのは聞き覚えのある女の声に驚いた。
「その声はフレイ……さん? 何で?」
「その、ようやく追いついて捕まえなきゃって思ったら、その、もう、こうさ」
理解は追いつかないがアレクセイは何か用事があるのだろうと抵抗をやめて起き上がった。かれこれ二年ぶりの再会、それがドラゴンスープレックスとは誰が思うだろうか。
「お久しぶりです。こんな所でどうしたんですか?」
ヒンメルの森。通称死の森は強力な魔獣が蔓延る高難度エリアだ。駆け出しの冒険者は近寄れず、推奨レベルであってもギルドの承認がなければソロでの突入は不可とされる。
「ずっと、ずっとあなたに言いたいことがあったんです」
思わぬ言葉にアレクセイは面食らう。以前プロポーズを断られて話は終わったはずだ。古い記憶を手繰り寄せるが、彼女に頼まれていたことや彼から頼んだことも特にない。プロポーズを断られてから二年、新しい恋を探してあの街を離れて2つ国を越えたこの場所で魔獣討伐に明け暮れていた。
「その、こんな血生臭い場所じゃなく街に戻ってからでも……」
「だめです」
有無を言わさぬフレイは意を決して話し始めるのだった。
年表にしようか迷いましたがダイジェストでお送りしました。