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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
ランページドリーマー

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441/441

新人を案内します

「で、こんなモノを作っちゃったと」


 次の日、ネフテリアが外に引っ張り出され、呆れていた。

 隣にはリリとパフィもいる。


「アリエッタちゃん凄い! ペロペロしていい?」

「帰れなのよ」

(ふっふっふー、リリなら喜ぶと思ったよ!)


 アリエッタがマンドレイクちゃんの雪像の前で得意気にしている。本当はミューゼを作りたかったようだが、まずは練習がてら形が単純でゆる可愛いマンドレイクちゃんを作ったのである。

 上手く作れてテンションが振り切れているアリエッタは、チラリとリリを見てスススッと近寄った。


(さぁ褒めるがよいぞー撫でるがよいぞー)

「……褒められ待ちなのよ」

「なにそれ可愛い。全力で撫でなきゃ」


 というわけで、アリエッタは頭だけでなく全身を撫でまわされた。


「はうん♡」

「やりすぎですよお姉様……」

「撫でれば撫でるほど幸せそうだったからつい……」

「どう考えても幼女から出るような声じゃなかったですよ。ほらパフィなんて声だけで逝っちゃってるし」


 大満足のアリエッタは液体かと思える程まで蕩け、雪に突っ伏したパフィの顔周辺の雪は赤く染まっている。割と日常の事なので、気にする者はほとんどいない。


「あっあのっ! パフィさんが!」


 ここに来て間もないルルーアルデが現場を偶然見てしまい、取り乱した。


「ああうん、頭冷やしてるだけだから気にしないで」

「え、えっと、ええ?」


 困惑するルルーアルデだったが、ここに来たのはネフテリアに話があるからである。


「あの、お姉様。フラウリージェの仕事に来たという方々がいらっしゃいましたが……」

「分かったわ。まったく、わざわざ雪の日に来なくてもいいのに」

「すっごく目がキラキラしてたので、待ちきれなかったみたいです」


 キラキラしてるなら仕方がないと、ネフテリアは応接室に向かった。

 面接の為に応接室に通されていたのは6名。ネフテリアを待つ間、ココネミットとミネアルが話し相手になっていた。

 一同はネフテリアが来たので話を止め、立ち上がる。そして一礼をした後、ネフテリアに促され順番に自己紹介を始めた。


「お初にお目にかかります、ネフテリア・エインデル・エルトナイト様。サンクエット帝国宰相バスクの娘、フェデリーカ・クラウェルと申します」

「ごきげんよう、先日お世話になりましたが、改めまして。クレスタ・ミデア・ビクタリスが娘、第一王女レーチェ・ミデア・ビクタリスでございます」


 サンクエットとミデアからやってきたのは、それぞれ代表者が1人と同行者が2人ずつ。合計6名がフラウリージェ従業員希望者である。

 以前やってきたユオーラの王女ミネアル達と同じく、各国最大3名までなら請け負う約束をしたのだ。


「メンバー決めるのに結構揉めた?」

「ええ、面識があるわたしは権力でこの座をぶんどりましたが、他2名は血で血を洗う激戦だったと聞いています」


 一体ミデアでは何を基準に何をしていたのだろうか。


「そ、そうなのね……フェデリーカもなの?」

「私は父が以前ここに訪問し、それもあってまとめ役として選ばれました。部下は我が国の若い仕立て師の中から選りすぐりの精鋭です。仕事中は私の方が2人の弟子になる予定です」

「それはまた不思議な関係ね。後の経営の事を考えての人選って事か」

「はい」


 サンクエットには王女がいない為、立場が一番近しい宰相の娘が選ばれたようだ。

 働く人材はある程度真剣であれば素人でも構わないというのが、ネフテリアとノエラの考えであった。実際ミネアルも素人だったので、何の問題も無い。

 しっかりとフラウリージェの技能を習得すれば、国に帰って支店を任されるのだ。逆に言えば、習得しなければ国に帰る事が出来ないとも言う。

 本人達もフラウリージェの立派な一員にならないと、国に顔向け出来ないという意識がある。それに加え、密偵によって近況が国に報告されてしまうので、職務放棄も許されない。


「王女はこれで何人だっけ?」

「テリア様を入れると5人ですね」

「順調ね」

「なんでそんなに王女がいるんですか……」

「た、たしかに5人いますね」


 今この場に、4カ国の王女が揃っている。リジェスネイフの王女は双子なので合計5人。

 その現実を見て、フェデリーカの顔が強張った。


「申し訳ございません! すぐに国に連絡し、何としてでも王女を出産するよう、申請します!」

「いやそんな事しなくていいから。王女が勝手にわらわら集まってきただけだから」

「そんな虫みたいに言わないでください」


 しかしネフテリアは内心喜んでいた。王女が増えるのは予想外だが、王女という存在が服をアピールする事になれば、話題性は最高である。何より、客の反応が面白くなる気しかしない。

 しかも全員顔もスタイルも良い。フラウリージェに送り込む人材として、人前に出るファッションショーを前提に選ばれたようだ。


「あれ? ネフテリアお姉様、前に世界の王女をコレクションするって言ってませんでした?」

「えっ、そんな趣味がおありで……」

「ジョークを真に受けないでくれる? 恥ずかしいから」


 純粋なココネミットに冗談は通じないようだ。

 顔合わせが終わったので、実際に仕事現場を見せながら、仕事内容を説明する事にした。


「まずはフラウリージェでの裁縫と販売。最も多く携わる仕事で、常に目標になる場所ね」


 既に知っている王女を含めた全員を引き連れ、最初にフラウリージェの店舗にやってきた。ここでは服を作り、店に出せるクオリティになって初めて売る事が出来る。ユオーラから来たミネアル達も、まだ店に並ぶ程の服は作れていない。今回の新人6人にとっても、最初の壁となり、最後まで挑む事になるだろう。

 初めて店を見るメンバーは目を輝かせている。初めてではないフェデリーカも、前以上に目を輝かせて見回っている。素敵な服は何度見ても飽きないようだ。


「すごい……」

「国で見せてもらった物よりも、さらに洗練されているような」

「どうやったらこんな服や縫い方が思いつくんでしょうか」

「それについては、私もまだまだ修行中ですわ」


 新人の見学中、ノエラが話に加わった。色っぽい体を飾り立てて歩く姿に、新人全員が頬を赤らめる。


「すごっ……」

「ゴージャスですね」

「ノエラ店長様も修行中なのですか。では一体この服の案は……」


 かろうじてフェデリーカがノエラに質問したが、ノエラは答えをはぐらかした。


「その秘密はまたいずれ。服を作るだけでも、初めての技術は多いと思いますわ」

「は、はい。楽しみですけど、同時に緊張しますね」


 服を見ただけでも、知らない技術が盛り込まれている事がよく分かる。仕立て師として興味を持たない訳が無い。

 フラウリージェの見学はここまでにして、ネフテリアは次に進む事にした。


「それじゃあノエラ、あっちを案内してくるから、準備よろしく」

「承知しましたわ、では後ほど」


 ノエラに見送られ、王女達を含めた見学者一同は廊下に出た。

 そしてボソボソと相談し始める。


「ねぇ、あの体見た?」

「羨ましさを超えて圧倒されました……」

「絶対に勝てない相手っているのね」

「気持ちは分かるけど、次行くわよー」

『はい……』


 ノエラの圧迫感(プレッシャー)に精神が押しつぶされたのか、全員目から光が抜け落ちかけていた。気持ちは理解出来るネフテリアだが、今は構わず先導する。


「続いてはここ。ラスィーテ人のクリム店長が経営している『ヴィーアンドクリーム』よ。ここには交代制で手伝いに入るの。フラウリージェの服を着てね」


 すでに客が多く入っているので、裏の通路から店を覗く。

 不思議に思ったレーチェが質問した。


「なぜ食堂の手伝いを? どういう意味なのでしょうか」


 レーチェは前に来ているが、賓客だった為にヴィーアンドクリームの事はよく知らない。食事は別の部屋で笑わされながら食べていたのだ。


「言ってみれば実演販売ね。フラウリージェの服って高いのと女性向けなのが災いして、お店に入るだけでも勇気がいるらしいの。でもそれじゃあどんな服があるのか知ってもらう事が出来ない。つまり売れない。そこで、店員が実際に着て、多くの人の前に出るの」

「なるほど、宣伝ですか」


 ネフテリアの説明に納得したレーチェだが、新たな疑問が生まれた。


「しかし何故交代で? 専属の店員が就けばよろしいのでは?」

「それは……」

「テリア様。ここはわたしが」


 ミネアルが説明の為に前に出た。なんとなくついて来たので、役に立つ事をアピールしたかったようだ。


「いつの間に着替えたの……」

「仕事の説明だったので、この方が分かりやすいと思いまして」

「まぁ、うん」


 まだ自分で完璧に服が作れないミネアルは、手伝い用に作られた共有の服を着てヴィーアンドクリームに出ている。


「王女たるわたしが、フラウリージェの服を着て衆目を浴びる。それだけでも話題性はあります」


 そこは全員納得である。


「さらに、フラウリージェには『ファン』という概念が存在します。ファンが多い程人気があるという事ですね。ファンになったお客様は、わたしを見る為に通ってくれます」

「売上の貢献ですね」


 レーチェが言ったその一言に、再び全員が納得した。


「そしてファンがいると……」


 そこまで言って、ミネアルは客達から見える場所に移動した。


「あっ、ミネアルちゃん!」

「ホントだ!」

「おーい!」

「はーい! 皆様今日もありがとうございますー! わたし今日は非番ですので顔見せだけですが、お食事楽しんでいってくださいねー!」

『はーい!』


 全員に向けてだが、声をかけられて嬉しい客達が、元気よくミネアルに返事をしたところで、ミネアルは奥に戻った。

 店ではニコニコしていたその笑顔が、戻った時にはニヤニヤしている。


「見ました見ました!? さっきの一瞬だけですが、全愚民がわたしのファン(しもべ)になったんです! この優越感、すっごく気持ちいいですよ!」

「やめなさいって」

 どすっ

「あうっ」


 ネフテリアはミネアルの脳天にチョップをかました。

 新人達はあっけにとられている。


「まぁ、人気が出るって事は、好かれるって事。お客さんもノリがいいから、さっきみたいな事にもなるし、それを楽しんでくれても良い。それに、もし貴女達に会いたいって人がいる状態で国に支店を出したら、そのファンは勝手についてくるかもしれないわ」

『な、なるほど……』


 実際ファナリア中だけでなく、色々なリージョンからの客が途絶えない。もし将来、自分目当てのファンが国に訪れてくれただけでも、旅行者の来訪という国益になるだろう。

 シャンテのファンに支店の話をほのめかした所、引っ越しを考えると答えられた話をすると、全員が店の手伝いに肯定的になるのだった。


「そういう事であれば、レーチェ様なら簡単にファンを獲得出来ますね」


 そう言ったのは、ミデア王国から来た1人の女性。レーチェの部下である。

 ミネアルと同じ王女という立場と美貌があれば、ネフテリアや先程のノエラにも負けないと信じているのだろう。

 しかし、それに異議を唱えたのは、同レベルとみなされたミネアルだった。


「ええ、わたしもそう考えてた時代があったわ……」


 死んだ目で呟くと、店のある方向へと視線を向けた。釣られて新人達も同じ方を見ると、青い髪を揺らしながら接客をする14歳程の美少女…ニオがいた。

 ネフテリアは笑いを堪えながら様子を見ている。

魔王は王女に絶望を与えていた。

夢サイドと違って現実サイドは平和です。

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