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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
ランページドリーマー

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報告は黙秘します

「ふぅ……」


 ボルクスに渡された報告書を自室で読み終えたフレア王妃は、ソファの背もたれに沈み、一息ついた。


「あの3人のドルナだから、意識しなくても国を引っ掻き回すくらいの事はやるかもしれないと思っていましたが……今からでも敵対しないようにお菓子いっぱいあげようかしら」


 ピアーニャはともかく、あとの2人に対する評価はトラブルメーカー……どころか、トラブルそのものという扱いになっていた。ちなみにトラブルメーカーだと思われているのはミューゼとネフテリアだったりする。

 フレアは少し報告書を持ってきたボルクスを呼びつけた。その間に報告書の一部を見て、再び思考を巡らせる。

 しばらくするとドアがノックされ、メイドに案内されたボルクスが入ってくる。


「フレア様。いかがしやしたか?」

「うわお酒臭いわねぇ。それはともかく報告書ありがとう。とても理解が難しかったわ」

「でしょうね。変な事ばっかりですし」


 ボルクスが酒を飲んでいるのは日常なので、フレアはあまり気にしない。

 そんな事よりも、どうしても直接意見を聞いてみたい事があったのだ。

 ピアーニャの夢から生まれたドルナ・アリエッタの挙動。ニオが放った恐るべき魔法の詳細や意見。ドルナ・ピアーニャの今後の目的など、事務的な報告からは読み取りにくい個人的な感情を交えた話。そして、


「最も重要な情報が2つ欠けていたのよ」

「あれ? 総長にも協力してもらってたんですが、抜けがありましたか?」

「ええ、なぜこの報告が抜けたのか、場合によっては許し難いわ」


 フレアは少し躊躇ったが、常人ならば震えあがりそうな程の真剣な顔でボルクスの目を見た。


「結局の所……伝説の剣は刺さっていたの?」

「黙秘します」


 ボルクスは間髪入れず、大きな声でハッキリと答えた。

 しかしそれで引き下がる王妃ではない。


「先っぽは? 先っぽだけでも刺さってなかった?」

「アレな王女でも流石に可愛そうなのでどっちだろうと黙秘しますっ!」

「つまり?」

「つまり!? 言ーわーなーいーでーすー! 想像もダメーッ!」


 ボルクスはあれやこれやと回答を回避しようとするが、フレアの瞳はキラキラと輝いていた。

 横で聞いていたお付きのメイドは、湯気が出るほど顔を真っ赤にし、目を回していた。その事に気が付いた2人は言い合いを止めて、ほっこり笑顔になるのだった。


「と、ところで、2つとおっしゃいましたよね? もう1つは?」

「ヨークスフィルンに送り込まれていた間者についてよ」

「もう戻っていいですか?」


 嫌な予感しかしないボルクスは逃げようとした。


「何でよ! リジェスネイフ以外からも送り込まれていた合同間者の事なのよ! 詳しく、事細かに、知るべきでしょう!」


 魔法至上主義国家で攻撃的な国は何もリジェスネイフだけではない。国のトップとしては放置出来ない案件なのだが……。


「知りたい所って絶対ケインに攫われた後の事ですよね?」

「あら分かってるじゃない」

「……報告書にある通り、ケインの配下に下りました」

「その方法を詳しく知りたいわ」

「黙秘しますっ!」


 フレアが気になっているのは捕まえた不審者である間者達が、ケインに何をされたかという事である。

 老若男女を危険な意味で全く差別しないケインが、『敵』を捕まえたらどうするのか。それを想像するだけでフレアのテンションは爆上がりである。しかし生の声が聞きたい様子、いろんな意味で。


「男は何人だったかしら」

「腐ってんなぁ……」

「失礼ね、わたくしはどっちもいけるのよ」

「余計悪いわっ!」

「あの、申し訳ございませんっ」

メイド(あんた)も大変だな。こんな主人で」

「攻めは何人かも教えていただけると……」

「お前もかっ!」


 この日から数日、一部のメイドが王妃の部屋に入り浸るという、謎めいた動きがあった。そして、(なにか)の気配を感じたのか、男の兵士は1人として王妃の部屋周辺を巡回に来なかったという。




 ディラン達が帰ってきてから数日後、エインデル王国に大量の雪が降った。ニーニルの町でも大人の膝くらいまで積もっている。


(うはー、この世界にも雪は降るんだなー)

「正真正銘の雪なのよ」

「うん、メレンゲじゃないね」


 ファナリアには四季がある。それもあって多種多様なリージョンのうち限定的な生態を持った住人が、自分に合った気候に合わせて立ち寄る事が出来るという利点があるのだ。リージョンシーカーの本部が置かれた理由の1つである。

 実は季節の変化あるリージョンは非常に少ない。だいたい年中気候が固定されている。その中でもグラウレスタは珍しく季節はあるが、雨季と乾季だけで冬が存在しない。

 エテナ=ネプトやヴェレスアンツのような、場所によって気候が異なるリージョンはあるが、それでも時期による変化はしないのだ。

 外に出てきたアリエッタ達は、もちろん新しい服に着替えている。


「さむい、ない!」

「うん、寒くないね。さっすがアリエッタ」


 モコモコの青いコート、モコモコな青い帽子、下はミニスカートだがタイツのお陰で温かい。

 そんな姿のアリエッタがはしゃいでクルッっと回れば、パフィの口がだらしなく開いて涎が落ちる。

 急ごしらえで作った事もあり、ミューゼとパフィもお揃いの服になっている。窓から覗き見ているノエラはとても満足そうである。


(さて、やっぱり雪だるまか、かまくらか、迷うなー)


 子供に退行中のアリエッタとしては、雪で遊ばない選択肢は無い。前世でも、あまり雪が多く積もらない地域にいたので、テンションがどうしても上がってしまうようだ。


(よし、アレがいいけど、まずは……)


 作る物を決めたアリエッタは、さっそく小さな雪玉を作る。それを楕円形に整え、小さな石と黒い葉っぱを付けた。


「かわいい~」

「ラーチェルっぽいのよ。凄いのよー」

(雪うさぎ……雪ラーチェルだ! 作った事無かったんだよねー)


 ミューゼとパフィに褒められ、アリエッタのテンションは爆上がり。


「できたっ!」

「よく分かんないけど凄いね!」

「はぁはぁ……たまらんのよ……」


 続けて雪だるまとかまくらを作った。パフィは元気に雪遊びをするアリエッタを手伝いながら眺めてご満悦。


「ぷひー」(疲れたー休憩)


 満足した顔で小さなかまくらに収まるアリエッタ。


『かわいい』


 保護者2人も満足している。

 実は雪で何かを作るという発想がファナリアにはあまり無い。芸術面の創作行為が発展していない事も原因の1つだが、雪は危険な自然現象という認識になっている。だからなのか、即席で作った雪ラーチェルにも興味津々。


(雪の扱いもだいぶ分かってきたし、明日は本当に作ってみようかな)


 ここまでは雪の練習だったようだ。しかし今日は満足した様子。


(あ、そーだ。ニオも入れてあげないと。ルルアちゃんとココネちゃんも誘ってみようかな)


 というわけで、ニオとルルーアルデとココネミットを店から呼んできた。まずはニオと一緒にかまくらに入ってみる事にしたようだ。


「えへへ~」

「………………」


 狭い空間の中、親友とかまくらを堪能できてニッコニコなアリエッタ。対してニオは、顔を真っ青にし、小刻みに震えている。


(あれ、ニオが震えてる。寒いのかな。温めてあげないと)


 アリエッタがニオを優しく抱きしめてあげると、生きているとは思えない顔色になり、ミューゼ達からは口から魂が抜けだしているように見えた。


「……どうしよっか」

「ニオの場所、私が変わってほしいのよ」


 結局、ルルーアルデとココネミットが待っていると説得し、ニオを救出した。

 交代でかまくらに入った2人は、不思議そうに周りの雪を見ている。


「すごい。雪で簡単な家を作っちゃうなんて」

「後でわたし達もやってみる?」


 とても気に入った様子。

 その夜、エルトフェリアの数名が魔法で照らされた庭で雪を集め、大量の雪ラーチェルと、大人が入れるかまくらをいくつも作っていた。

 そして数名の密偵が凍えながら、ネフテリアに苦情を申し立てた。


「すみません、夜寒い中ずっと見守るの、ズビッ、しんどいんですけど……」

「えっと、あー、うん。ごめん、夜に外で遊ぶのは控えるように言っておくから」


 謝罪を込めた特別ボーナスとして、「フワフワモコモコのコート姿で温かい料理をスプーンにのせて食べさせてくれようとするニオ」の『ブロマイド』が密偵達に配られた。その結果、密偵達の中で夜の見張り番の仕事の取り合いになったという。


「テリアよ。すまないがその絵を譲ってくれないか」

「まだ帰って無かったんですかお兄様」

「城を売りに出してもかまわん」

「売るな」

オチの前にちょっと寄り道。

ツッコミのレベルを上げるにはどうしたらいいか悩む日々。

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