最後の詰めの甘さにご用心
海の中ではこんなことが起こってるのかなと想像しています。
「あれだけのナイスバディな美女、お前には似合わなさすぎるんだよ」
な、なんだと。
「あの子を射止めるのは俺様だって決まってるんだよ」
まだあの子に聞いてないだろ。
「だからお前みたいな、身がまったく詰まってない骨だけみたいなやつは、さっさと諦めろ」
くそ。このまま引き下がるわけにはいかない。悔しくて、悔しくて、このままでは……。
……でも厳しい状況であることは間違いない。
相手は筋肉ムッキムキで、身が引き締まっている。
はっきり言って魅力的な体だ。激しく嫉妬する。
こんなで勝ち目なんてあるもんか。もうどうしようもない。
ススス……。ススス……。
「おっ、ようやくわかったか。ははは。これであの子は俺のものだな。」
ポチャン。
「おっ、ご褒美まで落ちてきたぜ。どうやら嫁まで手に入れたら、他にもいろいろついてくるみたいだな。はっはっは」
あっ、あれは……。
「というわけでこれで最初の晩餐と行こうか。俺と、そして奥さんとの最初の晩餐とな。ははは」
ススス……。ススス……。
「ははは。それにしても美味しそうなイカだなぁ。これなら身までしっかりと味わえそうだぞ」
パクッ。
「うん。美味……」
グサッ。
「は……、はれ? こへは、なんひゃ? (あ……、あれ? これは、何だ?)」
バシャ、バシャ、バシャ、バシャ。
「と、取れない」
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ。
「か、体が……、ほひぃあがっへいくーーー! (か、体が……、持ちあがっていくーーー!)」
バシャバシャバシャバシャバシャバシャ。
「うわーーー!」
バシャバシャバシャバシャ……
「……」
日の光に向かってあいつは消えて行った。嫁を放っておいて勝手に。
見上げればきれいなエメラルドブルーが広がっている。あんなきれいなところに行けるなんて、ある意味であなたはラッキーだよ。
「あの……」
「うん?」
振り返れば、さっきのやつの「嫁」がいた。
「一緒に……、この広い海を回りませんか?」
「あ……、えっ……?」
まだ「嫁」にはなっていなかったようだ。
「ぼ、僕なんかで良いんですか?」
「えぇ。あなたはあれだけ言われても我慢強く耐えていましたし、ぜひとも一緒に回りたいと思って」
予想外の展開。でも当然嬉しい。
「は、はい。い、一緒に回りましょう」
「よろしくお願いします」
涙が出ていたかもしれないが、それは海水に紛れてわからないだろう。
こうしてやつの「嫁」は、僕の「嫁」になった。
イケメン以外にも光を……という思いです。