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超短編物語集  作者: サ野 アさよ
2/3

最後の詰めの甘さにご用心

海の中ではこんなことが起こってるのかなと想像しています。

「あれだけのナイスバディな美女、お前には似合わなさすぎるんだよ」


 な、なんだと。


「あの子を射止めるのは俺様だって決まってるんだよ」


 まだあの子に聞いてないだろ。


「だからお前みたいな、身がまったく詰まってない骨だけみたいなやつは、さっさと諦めろ」


 くそ。このまま引き下がるわけにはいかない。悔しくて、悔しくて、このままでは……。

 ……でも厳しい状況であることは間違いない。

 相手は筋肉ムッキムキで、身が引き締まっている。

 はっきり言って魅力的な体だ。激しく嫉妬する。

 こんなで勝ち目なんてあるもんか。もうどうしようもない。


 ススス……。ススス……。


「おっ、ようやくわかったか。ははは。これであの子は俺のものだな。」


 ポチャン。


「おっ、ご褒美まで落ちてきたぜ。どうやら嫁まで手に入れたら、他にもいろいろついてくるみたいだな。はっはっは」


 あっ、あれは……。


「というわけでこれで最初の晩餐と行こうか。俺と、そして奥さんとの最初の晩餐とな。ははは」


 ススス……。ススス……。


「ははは。それにしても美味しそうなイカだなぁ。これなら身までしっかりと味わえそうだぞ」


 パクッ。


「うん。美味……」


 グサッ。


「は……、はれ? こへは、なんひゃ? (あ……、あれ? これは、何だ?)」


 バシャ、バシャ、バシャ、バシャ。


「と、取れない」


 バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ。


「か、体が……、ほひぃあがっへいくーーー! (か、体が……、持ちあがっていくーーー!)」


 バシャバシャバシャバシャバシャバシャ。


「うわーーー!」


 バシャバシャバシャバシャ……


「……」


 日の光に向かってあいつは消えて行った。嫁を放っておいて勝手に。

 見上げればきれいなエメラルドブルーが広がっている。あんなきれいなところに行けるなんて、ある意味であなたはラッキーだよ。


「あの……」

「うん?」


 振り返れば、さっきのやつの「嫁」がいた。


「一緒に……、この広い海を回りませんか?」

「あ……、えっ……?」


 まだ「嫁」にはなっていなかったようだ。


「ぼ、僕なんかで良いんですか?」

「えぇ。あなたはあれだけ言われても我慢強く耐えていましたし、ぜひとも一緒に回りたいと思って」


 予想外の展開。でも当然嬉しい。


「は、はい。い、一緒に回りましょう」

「よろしくお願いします」


 涙が出ていたかもしれないが、それは海水に紛れてわからないだろう。


 こうしてやつの「嫁」は、僕の「嫁」になった。

イケメン以外にも光を……という思いです。

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