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超短編物語集  作者: サ野 アさよ
1/3

中毒

初投稿。夢中になることは大事ですが……。

「俺はどうしてハマってるんだ? そもそもこれが楽しいのか?」


 もうわからない。何が楽しいのかわからない。

 でもやりたい。いや、やらないわけにはいかない。

 やらない日があるだけで、虫唾が走る。

 やっていないと気になって仕事にならない。

 自分がおかしくなっているのはわかっている。

 でも別に普通に生きているのだから心配はない。

 仕事も出来ている。そして貯金もそれなりにはある。

 でもそれ以上の物を得られてはいない。必要最低限の物しか得られてはいない。

 例えば伴侶。口では欲しいとは言っている。そして欲しいとも思ってはいる。

 もちろん実際に得たことはないからわからないけど、一緒にいたら楽しいことだろう。

 家に帰って来た時に、明かりがついていればそれだけで安心する。

 帰ってきて「ただいま」と言えば、「おかえり」と返してくれて、暖かい気持ちになる。

 美味しい晩ご飯も作ってくれていることだろうから、その手料理で元気になる。

 そしてなにより笑顔を見ることで、その日一日の苦労と疲労が癒され、また気持ち良く明日を迎えることができる。

 そう。今の一人の環境よりも楽しい日々が待っているのだ。きっと。

 でも……、それは出来ない。またやらなくてはいけないから。

 母さんは「お見合いでもいいから、早く奥さんを得なさい」と言う。

 でもそんな時間なんてない。その時間をあれに充てた方が楽しいから。

 伴侶だって得たことで確実に幸せになれるとは限らないじゃないか。

 結婚したら毎日のように嫁がいるんだぞ。

 いろいろとガミガミ言われるかもしれない。それはもしかすると、うるさいと思っている母さんよりも、もっとうるさいかもしれない。そんなの耐えられない。

 結婚したら離婚というリスクも同時に付きまとうことになる。

 離婚すること。つまりバツイチとなれば、俺の評判はガタ落ちだ。

 きっと何を言っても悪い噂が立ってしまうだろう。

 俺は生きている価値があるかわからなくなる。

 それなら勝ち組にならなくても、伴侶を得られず負け組であっても、それはそれで価値があることであろう。

 だから今のままでいいのだ。俺は今、これに熱中しているからそれでいいのだ。それが俺の答えなのだ。

 よし! 決めた! また今日もあれを始めよう!

 俺はそう思ってまた始めようとする。

 こうして今日も現状維持の一日を送るのだった。


 よいしょっと。


 ……あれ?

 何か力が入らない……。

 というか、体がフラフラしてきた。

 何回気もしづらくなってきて……。

 力が……、抜けていく……。

 目も自然と閉じていく。

 そして完全に閉じ切る直前、俺はあるものが目に映った。

 そうだ……。石油ストーブをつけっぱにしてたわ……。

 そして……、窓も……。


 俺は一酸化炭素中毒で死んでしまった。

 そしてその事に気づくことが出来なかった。

 もっと強い中毒のせいで。

あまりにも夢中になって、周りが見えなくなるなんてことがないようにしましょう。

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