蛇足的な何か
「ベンジャミン殿下は妃殿下が大好きですよね?」
「うん!」
婚約者になったウェンディの父である公爵が当たり前のことを聞いてきた。ウェンディはふわふわした女の子で、いつもキラキラした目でベンジャミンを見つめていた。
時折、興奮しすぎて鼻血を出しているけど、ドレスを汚さないように侍女がすかさず鼻栓をするのも面白い。
あの鼻栓、すごく優秀だ。
一度だけ、貰ったことがあるが、とても鼻にフィットする。
ウェンディの侍女、優秀過ぎ。
「ベンジャミン殿下の大好きな妃殿下の匂いをウェンディが身に纏ったらウェンディを好きになってもらえますか?」
「うん? そんなことをしなくともウェンディは好きだよ?」
不思議そうに返せば、公爵はにっこりと笑う。
「実はですね、男性は無意識に母親を求めるものでして」
声を潜めてそう言いつつ、ちらりと少し離れたところにいる国王に視線を投げる。ベンジャミンはそれにつられて自分の父親を見た。
「妃殿下の香り、あれは国王様の母君の香りでもあるのです」
「ふうん?」
だから何だと言うのか。理解できずにいれば、公爵は心底困った顔をした。
「ウェンディが妃殿下の香りを身に着け、そこから新たな香りに変わる。その時がウェンディが心の底から殿下を愛した証拠なのです」
正直に言えば、あまり信じていなかった。
変な理屈を言いながらも、冷ややかに俺を見る公爵が面倒だったので素直に頷いた。
ベンジャミンにとって母親の香りは安全である証拠で好きなのは本当で。その好きな香りをウェンディが持つのも、なかなかいいと思ったのだ。
ところが思春期に入り、体も大人になってから気がついた。
母親と同じ匂いをする彼女にあれやこれやと手を出すことができない。
嘘だと思うのに、何故か公爵の言葉が引っ掛かってしまうのだ。
だから毎日のように匂いを確認する。
彼女の香りが変わり始めてたら―――それは手を出していい合図だと。
最近は同じものを使っているにもかかわらず、匂いが違う。ウェンディの香りはとても甘い。
あと少し。
どうやら婚儀までには間に合いそうだ。
Fin.
本当にしょうもない話を最後まで読んでくださってありがとうございます。
色々ふわっとしていますが、気晴らし程度に楽しめたのなら幸いです。




