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Another World  作者: 北斗
15/28

救援


おれたち二人はひたすら走っていた。


周りにしてみれば風が通り過ぎたように感じてるのだろうか。


とにかくそのぐらい速く走っている。


「凛さん、場所は分かってるんだろうね?」


「大丈夫♪第二部隊はエリア5に向かっていたはずだからルートを辿っていけばいるはず」


はずって…曖昧だな。


「それより夏屶君、もっと速く走れないの?」


いやいや、十分速いと思いますけど。

てか、アンタが速すぎるんだよ!


まぁ、一大事なだけに無理はないが。


しばらく走っていると刀と刀がぶつかり合う音が聞こえてきた。


「夏屶君、行くよ♪」


「はい!」


って何故楽しそうに言う!

仲間の一大事じゃないのか!?


今はそんなこと気にしてる場合じゃなかった。

この人といるとどうも気が抜けてしまう。


刀を出し、速度を弱めずに一気に敵の群れへと突っ込む。


いわゆる不意打ちなのだが…そんなことは気にしてられない。


まず一人目の背中を袈裟切り、そのまま勢いを利用して回転運動に繋げる。

二人、三人を回転で横に斬り倒し、さらに上体を低くして下から切り上げる。


もう型なんてものはない。とにかく連続で繋げることだけを考えて斬り進んでいった。


一直線に敵陣に斬り目を入れて助けるべき仲間と合流した。


敵からしてみれば突然現れたのだから多少困惑しているようだ。


そのために戦いに少しの間ができる。


その間を利用して色々と考えてみる…




まず味方の人数は10人弱…


敵の数は50〜60人ってとこか…


主におれと凛さんで闘うとすれば、ノルマは20人ぐらいになるかな…


で、肝心の凛さんは……

凛さんの姿は……



ない!!!?


「ここだよ♪」


「うわっ!」


気付いたらおれの真後ろに立っていた。


てか本気で焦った。


しかもその手には…何も持っていない…


「もしかしてここまでくるのに…」


「そう♪夏屶君の後ろを着いて来ただけ♪」


なにしとんのじゃこら!!!!


もう呆れすぎて使ったこともないどこぞの言葉遣いをしてしまう始末……


本当に四大聖天使なのかこの人…


「ほら、そんなにボケーっとしちゃ駄目だよ♪夏屶君は全員と相手しないといけないんだから♪」


そうか、おれは全員とやるのか。

それは気を引き締めないとな!




……………ん?




待てやこら!


「何でおれ一人で闘うんだよ!?」


「何?か弱い乙女に闘わせるつもり?」


戦場でこんな会話をするとは思わなかった。

もはやつっこむ気すら起きない。


おれらが馬鹿馬鹿しい会話をしている内に、敵が正気に戻り、完全に戦闘態勢に入っている。


「小娘とガキがごちゃごちゃ言ってんじゃねぇぞ!!」


それは最悪の悲劇を招く言葉…

まぁおれには最高の言葉になるんだけど。

それを敵が言ってしまった。


おれの後ろにいた小むす…じゃない、自称か弱い乙女がふるふると震えている。


「誰が小娘だって!?てめぇらそこを動くなよ!!!ぜって〜ぶっ殺す!!!」


「付き人の小娘が意気がるな!」


あ、付き人に見えましたか。


まあ、それも仕方ないけど。


てか、凛さん恐いです。もの凄く恐いです。

キャラが全然違う……


いつの間にか武器を出してる。


そりゃあもう、悪魔と言う代名詞がぴったりだな。

黒光りしている大鎌なんて物騒なものを手にしている。


刀が物騒とか言ってませんでしたか?


「ねえ、夏屶君?」


「な、なんですか?」


やばいよ…本当に恐い。

鎌を持ってそんな笑い方しないでください。


今の凛さんは怒りと殺意と楽しみが混ざった不適な笑みを溢している。


「ぜ〜〜〜っっったいに手を出さないでね♪全部僕が殺る♪」


だから恐いって。

手なんか出しません。てか出したくありません!!


「わ、わかりました」


よし♪とニッコリ…いや、不気味に笑うと本格的に敵に制裁を加えにいった。


そうそう、何故こんなに会話が続いたかというと、おれと話ながら襲いかかる敵を見もせずに大鎌で切り捨てていたからであって……

おれはおそらく恐怖に引きつった顔をしていただろう。


まさに瞬殺だった。


おれですら僅かに鎌の動きが見えていただけで、敵も何が起こっているのか分からないまま地面に伏せていった。


これがこの人……四大聖天使、谷口凛の実力……


この小悪……いや、か弱い乙女さんが一番強い気がする。


小娘は本当に禁句だな。


「―――!?」


その時、他のものとは違う強い殺気を感じた。凛さんのものとも違う…


じゃあ誰が…


おれの足は自然と殺意のする方へと向かっていた。


何故か確かめたくなった。

確かめなければならない気がした。



木の生い茂る場所…そこに殺意を放つものの姿があった。



――まさか…


会いたくて、会いたくなかった人…


「……伸也…」


しかし、そこには親友の姿はなく、対峙しているのは鬼の姿そのものだった。


「何故お前が黒なんかに!」


「………」


伸也は何も言わずにおれに背を向けて歩み始める。


「何とか言えよ!」


おれの言葉に歩むのを止め、振り向きもせずに小さく言葉を発した。


「次に会った時はいくらお前でも攻撃する。死にたくなければ無防備に姿を現すな」


「なっ…伸也!伸也!!」


伸也の姿はもうなかった。

ただおれにお互いの立場という現実を突き付けて…



足取りも重く凛さん達と合流した。


「あっ、どこ行ってたんだよ〜。いくら夏屶君でも危ないよ」


凛さんは顔を膨らませて少し怒っているようだった。


「ねぇ、夏屶君!?聞いてるの?」


うなだれているおれの顔を覗き込むようにし、すぐにその表情を変えた。


たぶんおれはかなり暗い顔をしているだろう…


そんなことはどうでもよかった。

ただ…知りたいことが、前から気になって聞けなかった、聞きたくなかったことを…今無性に知りたくなった。


「凛さん…聞きたいことがあります……」


「……わかった。帰ったら夏屶君の部屋で」


いつもなら

「何故おれの部屋なんだよ」とか言い返したんだろうが、今のおれはそんなことを気にする気分じゃなかった。


このモヤモヤした気持ちを…この世界のことを…はっきりさせたかった。

夏「凛さん凄かったですね」


凛「そう?てか何で敬語なのさ〜」


夏「あ、いや…(激しく怖かったからだよ!)」


凛「夏屶君には僕に闘わせた責任をとってもらうからね♪」


夏「はっ!?おかしいだろ!おれは何も…」


凛「あんな奴ら夏屶君がちゃちゃっと片付けてればよかったんだよ♪」


夏「(無茶を言うな小悪…)」


凛「ん?何か言った?」


夏「い、いや、何も」


凛「か・な・た・君♪」


夏「凛さん?目が笑ってないよ?それに何故に鎌の手入れをしてる!?」


凛「あは♪夏屶君覚悟〜♪♪」


夏「ぎゃぁぁぁぁぁ」

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