表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国姫は静かに暮らしたい 〜転生先が最強だったので、たいへん困っています〜  作者: わっぱるぅ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/15

プロローグ

「はじめまして。勇者候補、セレナ=ヴァルハラです」

「元・魔王軍第五軍団長、現・軍師見習いのザガンです」

「ユイ=ノヒメよ。白湯が好きです」


セ「師匠の自己紹介が一番情報量少ないんですよ」


  ◆


セ「読者様。この物語は、うちの師匠のお話です。前世は戦国とかいう国のお姫様で、女神様の手違いで、とんでもない力を持ったまま転生してしまわれた方です」


セ「そのせいで、毎月のように刺客が来ます」

ユ「来るのよねえ」

セ「ところが師匠、全部解決してしまうんです」

ユ「話し合いで済むなら、そのほうが安いもの」

セ「安いって言い方!」


  ◆


ザ「見どころは、我が輩が思いますに、攻めてきた敵が順番に村へ就職していくところかと」

セ「あなたのことですよ」

ザ「一号です。誇りに思っております」

セ「魔王軍の軍団長が、気づいたら村で帳簿をつけているんですよ。読者様、これ本編です」


  ◆


セ「あと、師匠はご自分の力に一番驚いてらっしゃいます」

ユ「怖いのよ、本当に。知らないはずのことを知っている自分って」

セ「毎回『あわわわ』と慌てて、毎回きっちり解決なさいます」

ユ「慌てているのは本当よ。膝も震えているの。赤ん坊だから、誰も気づかないだけで」


  ◆


セ「そんな師匠の願いは、たった一つです」

ユ「静かにお茶を点てて、のんびり長生きすること」

セ「……叶うといいですね」

ユ「叶わせるのよ」


  ◆


セ「――というわけで、読者様」

セ「難しい話は出てきません。笑って読める話です。たまに、ちょっといい話もあります」

ザ「プロローグを含めて、全部で15話のお話しです」

ユ「丁度読みやすいのよ」


全員「お暇でしたら、どうぞ」


全員「お暇でなくても、どうぞ」


ユ「村の門で武器を預けていただければ、白湯くらいはお出ししますよ」


セ「結局そこに戻るんですね!?」


      ユイ=ノヒメ/セレナ=ヴァルハラ/ザガン

女神は後に、こう証言している。


『四千年この仕事をやってきたけど、測定器が爆発したのは、あの人が初めてだった』


 ◆ ◆ ◆


 天正十年(一五八二年)、六月二日。

 濃姫――帰蝶は、安土城の奥座敷で静かに茶を点てていた。


 もう何年も、表舞台から遠ざかっていた。信長公の正室として、道三の娘として、政略の駒として生きてきた女。子は成さず、夫は天下を狙い、父は蝮と呼ばれ、従兄妹かもしれない光秀は――今頃、何を思っているのだろう。


 その日の夕刻、変報が届いた。


 京の本能寺にて、信長公、明智勢の謀反により落命――。

 城内は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。だが帰蝶は、動じなかった。茶碗を置き、ほっとしたような、諦めのような溜息を一つ吐いただけだった。


「……そう。あの方が、先に逝かれたのね」


 それから十三日。

 城の者たちは次々と逃げ落ちていった。帰蝶は、残った。逃げる場所も、逃げる理由も、もうこの世のどこにもなかったからだ。


 そして六月十五日の夜――安土城が、燃えた。


 天下一の名城を呑み込む紅蓮の炎の中、帰蝶はゆっくりと立ち上がり、窓を開けた。煙の切れ間の空に、星が瞬いていた。幼い頃、美濃の山で父と見た星空と同じだった。


「もう、十分に生きたわ」


 四十八年の歳月。政略の駒として嫁ぎ、戦国の荒波を、ただ静かに、しかし決して折れずに生き抜いた。誰にも知られず、誰にも褒められず。それでも――。


「父上、信長様……私は、よく頑張りました。……ですから最後くらい、褒めてくださいましね」


 その瞬間――

 世界が、裂けた。


 白い光が視界を埋め尽くし、身体が羽のように軽くなった。痛みはない。気がつけば、帰蝶の魂は真っ白な空間に、ふわふわと漂っていた。


(……あら。ここが、あの世?)


『はいは~い、次の魂の方どうぞ~。えー、帰蝶さんね。では魂の強さを測定しま~す』


 どこからか、間の抜けた声。ピッ、という軽い音。

 直後――バァン!

『……爆発した。測定器が爆発したんだけど!? 四千年で初めてなんだけど!?』


(……この声、大丈夫かしら。私、閻魔様の裁きを待っているのだけれど)


『え、ええと、測定不能ってことは規定により超特A級! 転生先は【人魔大戦世界・アーステラ】! 特典は魂の強さに応じて自動付与されるから、慌てなくても大丈夫――』


 その時、白い空間に、別の澄んだ音声が鳴り響いた。感情のない、鈴のような声だった。


《特典ヲ自動付与シマス――【絶対魔法適性】。 【無限魔力炉】。【概念武装解放】。【運命改変権限】。【超身体能力】。【異世界知識自動理解】。 【自動防御結界】。【――》

『ちょっ、待って待って!? 多い多い多い! 普通は一個なの! 一個! 止まって! ……止まらない!? 何この魂、まだ特典増えてるんだけど!?』


《――付与完了。合計、十七件》


『十七!?』

(あの……どなたか、状況を説明していただける?)


『ご、ごめんなさい帰蝶さん! もう転生の光が来ちゃったので、細かいことは向こうで! それでは、良い転生を~!』


(ちょっと。「じゅうななけん」って何。説明なさい。ちょっと――)


 彼女の抗議は、白い光に呑み込まれた。

 そして――彼女は、生まれ変わった。


 ◆ ◆ ◆


 新世界、アーステラ暦一二七年。

 人間と魔族が千年戦争を続ける大陸「ミッドガルド」の辺境。王都から遠く離れた小さな村「リーフェ」。


「う、うわあああああああああああああ!?」


 村の広場で、生後三ヶ月の乳児が――突然、地面に這い蹲って絶叫した。前世の記憶が、たった今、一気に蘇ったのである。


 周囲の村人たちが凍りつく。


「ひ、ひゃああああ! こ、この子、急に喋った!?」

「しかも、妙に落ち着いた声……!」


 赤ん坊(元・帰蝶)は、自分の小さな手をじっと見つめていた。

 白くて、柔らかくて、ちっちゃい。

 握ってみる。


 ――魔力が、体内で渦巻いている。太陽を一つ呑み込んだような、膨大な魔力が。

(……いえ、待って。「まりょく」って何? 私、戦国の女よ? 火縄銃と鉄甲船までしか知らないのよ? なのに今、当たり前のように「魔力が渦巻いてるわね」って思ったわよね? なんで分かるの!?)


 そう。彼女の頭の中には、生まれた覚えのない知識が、最初から「常識」として鎮座していた。


(……ああ、思い出したわ。あの鈴の声が読み上げていた特典、確か【異世界知識自動理解】とか言っていたわね。それのせいね。……便利だけど、怖い! 知らないはずのことを知っている自分が怖い!)


 混乱したまま、試しに、指先で空をなぞってみた。


 パァン!

 空間が歪み、直径五メートルの巨大なクレーターが村の広場に穿たれた。爆風で干し草が吹き飛び、鶏が一斉に空高く舞い上がる。


「……あわわわわわわわわわ」


 赤ん坊は、這い這いの体勢で後ずさった。

「な、何、今の!? 大筒!? ――いえ、違うわね。今のは無詠唱の空間干渉魔法。……ほら、また分かった! 誰よ頭の中で解説してるの! 私よ! 怖い!」


 村人たちが震えながら近づいてくる。


「神……神の子だ……!」

「勇者様の生まれ変わりじゃ……!」


 赤ん坊・帰蝶(この世界での名・ユイ=ノヒメ)は、必死に手を振った。


「ち、違うの! みんな離れて! 私、自分でも何が起きてるか……いえ、起きてることは分かるのよ、特典のせいで! 分かるけど心が追いつかないの! あわわわ、魔力が漏れ――」


 ビカアアアアアアア!


 光の柱が、天を貫いた。

 遠く離れた王都の魔導士たちが一斉に感知器を鳴らし、大陸中の古代竜が「なんだこの化け物は……」と目を覚ますレベルだった。


「止まりなさい! ……あら、止まった」

 念じたら、ぴたりと止まった。

「……止まったわ」


 村は、静まり返っていた。

 クレーターの縁で、赤ん坊がちょこんと座っている。


 こうして、世界最強の元戦国姫の、困った異世界生活が始まった。


 彼女はまだ知らない。

 自分の中で渦巻くこの力が、この世界の魔王を一撃で倒せる規模だということを。


 そして、天を貫いたあの光の柱を、魔王軍の幹部たちが「新手の勇者か!?」と、しっかり観測していたことを。


 ただ一つ、彼女が心に決めたこと。


「……とにかく、目立たないようにしましょう。私はもう政略とか戦とかうんざりなの。今度こそ、静かに、のんびり、長生きするのよ」


 その決意表明の直後、興奮した村人たちによる

「神の子誕生祭」の開催が満場一致で決定した。


「目立たないようにって言ったそばからあああ! あわわわわわ!」


 こうして、史上最も目立ちたくない最強勇者の、壮絶かつコミカルな伝説が幕を開けたのだった。

お読みいただき、ありがとうございます。

プロローグを含めて、全部で15話のお話しです。

ご評価⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️、リアクション、ブックマーク頂けますと執筆の励みになります。

どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
面白い導入ですね。特に帰蝶の目立ちたくないの言葉の重みがよく分かります。 是非とも読ませて頂きます。 また、私も戦国時代の武将が異世界に転生した物語を作っているので、よければ見ていただけると幸いです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ