67 失くした内側、残った建前
カチカチカチ。手が震えて、肘が音を鳴らす。脚は重くて、頭が鈍い。パチパチパチ。首から火花が散って、視界が点滅する。背骨が軋んで、骨盤が痺れる。
私の痛みと、私の幸せ。私じゃない人の為のチカラ。
『どうしてそんな事したんだ』
守りたかった。誰にも渡したくなかったから。
『取り返しが付かないんだぞ』
取り返しがついたら困る。誰かに取られたら、困る。
『俺のせいなのか』
そう。君のせい。私より頭が悪くて、せっかちで、喧嘩ばっかりして、優しくて──だから、危険に晒したくない。
……って思ったのが、最初な気がする。覚えてないけど。
『もうするなよ』
うん、ごめんね。もうしないよ。……でもバレなければ、やってないのと同じだよね?
コリコリコリ。瞼の裏が傾いて、頭の中が歪んでく。胸の中は張り詰めて、気付いた頃には破けてる。プツプツプツ。神経が絡まって、少しちぎれて離れてく。お腹はグルグル鳴っていて、血と一緒に減っていく。
私の痛みは、君の幸せ。君の痛みは、私のチカラ。
君のために私は居たから。
『また、改造したのか?』
うん。ごめんね。
……ぜったい、バレないと思ったのになぁ。
『──キュウ』
なに?
『そこから出ろ』
無理だよ。もう、私はどこにも居ない。
『すぐバレる嘘はつくな』
嘘なんてついたこと無いよ。
私はいつも君の為に居た。確かに居たんだ。大好きなんだよ。
『──嘘だな』
わかってないくせに。
─────────
「おい、キュウ。起きろよ、起きろってば……こいつは昔から寝坊助だな」
「……ぁ? イチ、君?」
「やっと起きたか? お前が寝こけてる間に色々あったんだぞ。まぁまずは、そうだな……飯にするか? 実はついに安全な場所を見つけたんだ。他にも生存者が居るし、食糧はクソ不味い培養肉が大量にあるぞ」
「うん、食べるよ……ねぇイチ君」
穏やかな風が流れてる。冷たいけど暖かい空気が満ちている。優しい時間はゆっくりと過ぎていく。
「君は、私をどう想ってたの?」
ピタリと、そんな時間が止まる。
あは。言っちゃった。




