6. とりあえず言っておくけど
少し短いです。
「求婚ですか? 婚約破棄した令嬢に、その後直ぐに?」
あっ。呆れているな。ハインツの目がジトンと僕を見ている。
「時間的には確かにそうなるが、10年越しのタイミングだ」
「「……」」
ハインツとレインが顔を見合わせている。何だ? 言いたいことがあるか?
「まあ、驚くのは仕方が無い。でも、そういう事だから」
「そういう事だからって……それで、ヴィヴィエット嬢の返事は貰えたのですか?」
若干呆れた様な視線が気になるが、ハインツは身を乗り出すように聞いてくる。
「それは、もちろん……貰えて……ない? ……かも?」
ん? そう言えば返事を貰えたか? 断られた覚えも無いけど、了承の返事は聞いていない気がする。
「殿下。もしかしてですが、返事を貰っていないのですか? 実は断られたのではなくて?」
レインが心配そうな顔で僕の顔を見詰めている。心の機微には気付くのに、デリカシーの無い言い方だな。
「もしかして、断れたのに記憶から消し去った。訳ではないですよね?」
ハインツが真顔で言ったけれど、それは余りにも失礼じゃないか? それではまるで、嫌な事は都合よく忘れる能天気のイタイ野郎みたいだ。
「そんな訳あるか! 確かに婚約者になってくれと言ったけれど、返事を聞く前に、話を始めてしまっただけだ。大きな問題じゃない。現にヴィヴィを送って行く間も、馬車の中は和やかだった。何の問題も無い!」
まあ、腹の探り合いだったけれど。
「とにかく、お前達には言っておく。決して一時の気の迷いや、婚約破棄をしたヴィヴィに同情した訳でも無い。ましてや、ジョイルの失態の責任を肩代わりした訳でも無いからな」
ハインツは、何か言いたそうに見えたが、少し遠い目をして何かを思い出す様な表情で口を開いた。
「もしや殿下は、あのお茶会の時から、ヴィヴィエット嬢を狙っていたのですか? あの時、大喧嘩したのは貴方の一言から始まりましたよね? 覚えていませんか? 私はヴィヴィエット嬢の隣にいたのですよ」
なんと。初耳だ。とすると、ハインツは聞いていた訳か。
「そう言えばヴィヴィエット嬢は、あれから引き籠り生活に入ったんだったな。確か、次に会ったのはジョイルの婚約者として、殿下の10歳の誕生日会で会ったんだっけ?」
そう言いながら、レインも何か思い出すように腕を組んで目を閉じている。
嫌な空気の流れを感じるが……
「確か、『ちゅーしていい?』 とか、聞いていましたよね?」
チッ! ハインツに聞かれていたのか。何か、弱みを握られたみたいでイヤだな。
「何と言う、破廉恥な幼児だったでしょう? それに随分と拗れてますね?」
「……ハインツ。お前、それ以上言うと、お前の恥ずかしい7歳の時の事を今、ここで、言うぞ?」
ここでも、12年前の事で弄られた。
「エレンツィード殿下。お話し中申し訳ございません。お目通りを申し入れている者が参りましたが」
バレンがそう言って、部屋の扉の前に立っている。
「約束は無かったはずだが? 一体誰だ? まさか……」
まさかジョイルか? アイツなら判るが。
「ヴィヴィエット・レベンデール公爵令嬢でございます」
な・ン・で?
澄まし顔のバレンの唇の端が、少し上向きになっている。
もしかして、面白がっていないか?
ブックマーク、誤字脱字報告ありがとうございます。
はい。ヴィヴィちゃん登場です。
何しに来たかは、次話迄お待ちくださいませ。
楽しんで頂けたら嬉しいです。




