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14. 探索 -ハインツサイドー

「ハインツ。ジョイルは、ここを通って行ったのか?」


 レインがそう言って地図を指し示す。






 私とレインは近衛騎士団の詰所に向かうため、ヴィヴィエット嬢を残してエレン殿下の部屋から辞した。


「恐れ入りますが、モルデン侯爵家のハインツ様でありますでしょうか?」


 殿下の部屋を出て、詰所に向かう途中でふいに声を掛けられた。

 そこには、キッチリと髪を結い上げた濃いグレーのドレスの女性がいた。襟と袖口のカフスの白さが気持ちの良いコントラストだ。


「……そうだが、貴女は?」


 彼女は直ぐに腰を落として頭を垂れた。


「失礼致します。私はヴィヴィエット様の侍女、キエラと申します。ヴィヴィエットお嬢様から、ジョイル様をお探しに行かれるならば、ハインツ様にお渡しする様に申し付かった物がございまして……」


 顔を上げずにそう言う彼女は、手に紙を持っていた。


「侍女殿、顔を上げてくれ。いかにも私達は、これからジョイルを探しに向かうところだが。ヴィヴィエット嬢は何も言っていなかったが?」


「はい。探しに向かって下さる方にお渡しせよと言われていますので。多分、ハインツ様が指揮を執られると予想されていました。ですので、こちらをお読みくださいませ」


 そう言って彼女は一通の封筒を寄こした。多分レベンデール公爵家のモノだろう、薄っすらと紋章が織り込まれている。


「判った。確かに受け取った。ヴィヴィエット嬢にも宜しく伝えてくれ」


 何が書かれているか判らないが、このタイミングであればきっとアリアーヌ嬢達の行き先の事だろう。私は封筒を受け取ると、足早にそこから立ち去った。


 しかし……あの侍女。ヴィヴィエット嬢の侍女と言ったが、あんなに近づかれるまで気配が感じられなかった。そしてあの佇まい……まるで騎士? いや、もっと違う……


「ハインツ。一体何が書いてあるんだ?」


 レインが歩きながら聞いてきた。そうだな、気になるよな?

 私が懐から封筒を取り出して、中からメモを引き出した。


 ・二人の乗った馬車は、レベネン商会のブランドル様専用馬車。

 ・馬車にはアリアーヌ様とブランドル様。御者は元騎士見習いの青年。

 ・元子爵家の拝領した王都に近い領地が幾つかある。⇒ココが有力!

 ・ブランドル様の個人財産の不動産は表向きは三ヶ所。但し全て中央区。⇒これは無い!

 ・ジョイル様は馬でポルテス男爵家に向かい、その後レベネン商会へ。

 ・---

 ・---

 

「コレは……」


 その紙には、幾つかの手掛かりと現状が記載されていた。

 何も無い状態で、人の探索は難しいので情報を貰えてるのは有難い。しかし、一番最初に書かれた馬車の事など、良く判ったな? それに御者が元騎士見習いって、何で知っているんだ?


 まるで、見ていたようじゃないか?


「とにかく、レベネン商会の馬車を探そう。ジョイルもすでにブランドル殿とアリアーヌ嬢が一緒だと知っているらしいからな」


 バレン殿が騎士団長に話を通してくれたお陰で、5人の近衛騎士と共にジョイルを探せることとなった。

 そして、馬や馬車の準備をしている間に再びエレン殿下から伝言が来た。


『二人はキーレン子爵家の領に向かったらしい。元王家の鴨猟の猟場だった場所だ。ジョイルもそこに向かうかもしれないから、急いでくれ』



 ヴィヴィエット嬢からのメモにあった、


 ・元子爵家の拝領した王都に近い領地が幾つかある。⇒ココが有力!


 その場所という事か。そんな場所があったとは。


「とにかく行こう!」



 私達は王宮から飛び出した。








「ああ。殿下からの情報だと、ブランドル殿は相続した元王家の狩場に向かっているらしいからな。あそこに行くにはこの峠を行った方が早い」


 王都からの大きな街道を逸れて、元王家所有の狩場に向かう。

 キーレン子爵家が受領したそこは、遺産分与されたブランドル殿が相続しているという。お坊ちゃまとお嬢様が潜むにはうってつけの場所だろう。

 レインがクルクルと地図を丸めると腰の革鞄に差し込んだ。そして、近衛騎士が街道脇の畑で仕事をしていた農夫から、聞き取りを終えるのを待っていた。


「ハインツ殿、レインベルト殿。目撃した農夫によると、少し前に馬に乗った若者がここを通って行ったという事です。絵姿を見せて確認しましたので、ジョイル殿に間違いないかと。相当慌てた様子で、この先に元王家の猟場があったかと聞かれたそうです」


 騎士はそう報告すると、街道から分かれた山側の道を指した。


「そうか。やはりそこに目を付けたか。ならば急ごう。アイツを保護しなければ」


 近衛騎士とレインは自分の馬に乗ると、片手を挙げて走り出した。

 私は万が一の事を考えて、馬車に乗っている。近衛騎士団から借りた猟で使用する為の馬車だ。山道にも強い小回りの利く使い勝手のイイ仕様になっている。


「では、後を追います!」


 騎士の掛け声と共に直ぐに馬車は出発した。





 元王家の猟場に向かう道は、山道とは言え石畳で整えられていた。そこは数代前に王家からキーレン子爵家に下賜された由緒ある鴨猟の猟場らしい。湖と湿地のある静かで豊かな場所で、宿泊もできる屋敷もあるらしい。さすがに王家の持ち物だったらしく、小さいながらも趣向の凝らされた佇まいが歴史を感じさせた。



「ココか……」


 道すがら、僅かに石畳の上に新しい馬車の車輪の跡を確認することができた。確かにアリアーヌ嬢とブランドル殿はここを通ったのだろう。残念ながら、ジョイルが通った跡は確認できなかったが、街道からの分れ道を行ったのだとしたら、確実にその後を追っているはずだ。


「ハインツ殿。二人の乗った馬車は裏に停めてあります。しかし、ジョイル殿の馬は見当たりません」


 屋敷を見れる樹々の影に、私達は潜んでいる。二人と、何よりジョイルを刺激しない為に。


「我々が到着しているという事は、ジョイルも当然先に着いているはずだ。何でいないんだ? アイツはどこに行ったんだ?」


 屋敷の中は静かだ。


 まさか……最悪の事が頭を掠めた。




「中に踏み込もう。アイツがいなかったらそれでいい」


 意を決してレインに告げた。


「二人は良いのか?」


「ああ。殿下もヴィヴィエット嬢からも連れ戻せとは言われていない。私達はあくまでもジョイルを連れ戻すだけだ。他は……放って置けとのことだ」


 レインと騎士達が承知したと大きく頷いた。


「それでは行こう」




 私達は屋敷の扉の前に向かった。







ブックマーク、誤字脱字報告、感想も

ありがとうございます。


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頑張るパワーになります。


次話、ジョイル君発見です。


楽しんで頂けたら嬉しいです。


早く、ヴィヴィさんとエレン君の

ラブ焦れツンデレモードになりたいです!!


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