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アウトコレクター  作者: 一ノ瀬樹一
第三章 弁天堂美咲と幻獣
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弁天堂美咲と幻獣《ミスティカルビースト》 05

 西園寺さんが、保健室から戻って来たのは放課後でした。

 教室に鞄を取りに来たところを話かけ、校舎の裏へと連れて行きました。


 まゆりさんは用事があるようで、「一緒に行けなくて、ごめんなさい」と何度も謝られました。


 「弁天堂さん。話って何ですか?」

 「ごめんなさい。こんなところに連れて来て。でも、誰にも聞かれたくなかったから――」

 「き、聞かれたくないことですか? それって――」

 「ご、誤解しないでね! 別に、変な意味じゃないから!」

 「はあ? 何のことでしょう?」


 どうやら、余計に誤解させてしまったようで、西園寺さんは制服の胸元に手を当てていました。誰のせいとは言いませんが、言葉とはこんなにも誤解されるものなのでしょうか?


 「それで、弁天堂さん。話って何のことでしょう?」

 「ああ、ごめんなさい。――と言っても、何から話せば良いのか――」

 「多分、小倉台さんのことでしょうか?」

 「え!?」


 思いもよらず、西園寺さんの方から話題をふってくれたことには感謝しますが、その落ち着いた物腰が何とも不気味でなりません。普通、友達が大怪我を負った次の日ならば、自分がその怪我に関わっているにせよ、関わっていないにせよ、もっと動揺してもおかしくないのですが、西園寺さんには一切の動揺が見られません。


 むしろ、リラックスしているかのようでした。


 「それで、弁天堂さん。どこまで知っているのですか?」

 「どこまでって――、小倉台さんの怪我のことですか?」

 「随分と勿体ぶった聞き方をしますね。もう、ある程度の検討はついているのでしょう? お察しの通り、小倉台さんの怪我は私が犯人です」

 

 思いもよらない犯人宣言に、私は言葉を失ないました。しかし、そんなカミングアウトをしてもなお、西園寺さんは眉一つ動かさず、表情を変えません。

 どこか余裕があるのか、あるいは絶対的な自信があるのかのように――。


 「犯人って西園寺さん、どうやって小倉台さんに怪我を負わせたのですか?」

 「知りたい? それは――これよ!」


 校舎裏に突風が吹き荒れました。この季節には珍しい突然の突風の後、小倉台さんに怪我を負わせた本当の犯人が姿を現したました。


 「人間、我ガ主ニ何ヨウカ?」

 「あっあなたは――」


 白い毛並みに、ライオンの尾。馬の顔に、立派なたてがみを生やした、見たこともな怪物がそこに立っていました。

 そして――、何よりも驚いたのは、頭に角が生えていたことでした。

 それはもう、立派な角が二本――。


 あれ?

 ユニコーンは確か、角が一本ではなかったでしょうか。

 それなら、私の目の前にいるこの怪物は、一体何なのでしょう?


 「弁天堂さん。これが、小倉台さんに怪我を負わせた張本人です。それで、弁天堂さんは私をどうするつもりなのですか?」

 「どうって?」

 「物ワカリノ悪イ人間ダナ」

 「つまり弁天堂さん。確かに、私が命令して小倉台さんに怪我を負わせましたが、それをどうやって立証するのですか? 日本の法律に、このような怪物の存在を肯定することができるのかしら?」

 「それは――」


 西園寺さんの問いかけに、私は反論することができませんでした。

 かつて、土御門さえりさんが迷斎さんに解決を求めたように、怪物や魑魅魍魎の類いを、この社会では否定的であり、存在自体を認められていないからです。


 つまり、今回の小倉台さんの件に関して、いくら私が訴えたところで警察が動くことがない。

 西園寺さんの、余裕の正体はこのことだったようです。


 「ソレデ、ドウスル? コイツモ殺スカ?」

 「いいえ、やめておきなさい。弁天堂さん、これでわかったでしょう? 私のことはほっておいてください」


 そう言って、西園寺さんと怪物は私の前から去って行きました。

 去り際、西園寺さんに怪物について聞いてみると、こんな答えが返ってきました。


 「角の生えた馬なら、ユニコーンじゃなくて?」


 本当にあの怪物は、ユニコーンなのでしょうか?

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