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氷河期の雪が溶ける頃   作者: Osharena


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12/12

増渕実と、擦り切れた革靴⑤

 実(みのる)が18時頃に事務所に戻り

 ビジネスバッグを机の上に置く。


「増渕課長、すみません。

 デートがあるんで

 今日は定時で失礼します」


 そう言いながら

 部下の寺本ルイが頭を下げ

 そそくさと退社していく。

 彼女は残業を嫌い

 私用を優先し

 仕事には熱心ではない部下だ。


 しかしあれこれ言うと

 今の子はすぐに辞めてしまうため


 実(みのる)は


「ああ、お疲れ様」


 と言うしかなかった。



 書類に目を通していると

 上司である安藤部長が


「増渕くん、取引先に

 プレゼンする内容なんだが

 これ来週までに

 まとめといてくれ!」


 ドン!!と書類の束を

 実(みのる)デスクの上に置いた。


「えー、こんなにですか?

 結構、量ありますね」


「いや、いや、君ならできるだろ?

 俺はそういうデジタルなものは

 やらない主義だからさ、頼むよ!」


 安藤部長はそう言い放つと

 自分は会議に出ると言って

 オフィスを出ていった。


 バブル入社の上司とZ世代の

 部下に挟まれ身動きできないし

 バカバカしい気持ちもあったが

 家庭持ちで会社を辞めると

 後が厳しいのが現実だった。

 



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