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一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
第二部 幸子とジョン
38/99

2-15 『ゴメン』で済んだら


昼食にコレだけ美味おいしいモノを食べるなら、小遣いが月ウン万円でもオカシクナイね。


なんて事を考えながら、生まれて初めての。いや、新しい人生初の学食スイーツを食べ、この上ない満足感に浸っていた。




「頭を強打した事で記憶の一部が欠如した、という事にしてある。」


そうなんですか、大変ですね。モグモグ。


「本当にさとしか?」


たけしの呟きを聞き、まさるめぐみがジィっと見つめた。


荏原えばら学問所中等部一年、佐藤智十三歳です。」


ニッコリ。


「一年、意識が戻らなかったからな。」


勝がポツリ。


「別人になってもオカシクないか。」


豪もポツリ。


「で、これからドウするの。」


愛がコテンと首をかしげた。






佐藤家 本屋ほんおくは現在、大荒れに荒れている。住人全員、家事能力ゼロ。豪と愛が頑張っているが、思うように出来ずイライラ。


思い悩んだ末、兄妹は『週に三日ほどで良いから、智に家事を頼もう』と考えた。



勝が呼ばれたのは、智には手も口も出さなかったから。



花丸を助けようとした智を羽交い絞めにし、ズルズルと引き離したのだから勝も敵だ。


智の苦しみを知った幸子とジョンは、みのるたち五人を許す気は無い。






「花丸の事、すまなかった。」


豪と勝が頭を下げる。


いじめてゴメンなさぁい。」


愛がペコリと頭を下げた。






花丸は智くん、飼い主と共に虹の橋を渡り、地獄で裁判を受けている。そう、浦見サマがおっしゃった。


寿命が残っているから戻るよう、一年も説得されたのに拒否した君の気持ち、とても良く解るよ。



新しい人生を歩む事になったケド、私たちを殺したヤツらの事、今でも許せないもん。


逮捕されて捜査が進んで、不正とか横領とか裏金とか、他にもイロイロ見つかってタイヘンらしいね。






「『ゴメン』で済んだら警察など要らん。」


本当その通りだよ、鈴木先生。






埼玉県春日部市『鈴木医院』院長、鈴木 (はじめ)。勤務医、鈴木 秀人ひでと。同じく春日部市『さくら小児科医院』院長、鈴木 英恵はなえ。勤務医、佐倉さくら賢人けんと。同じく春日部市『粕壁かすかべ総合病院』勤務医、鈴木 優人まさと


五人の医者が鈴木家の問題児、和人かずとに良く言っていた。



私いつも『あの狸親父、また何かしたのかな』って軽く流してたんだ。


でもアレ、何かを揉み消すための資金が足りず、愛犬と戯れる長女の姿を見せてなごませてから、借金を申し込んでいたんだね。






「エッ。」


まただ。智の横に犬が、大型犬が見える。


「ヒッ。」


花丸って柴だよね。耳、垂れてんだけど。


「なぜ。」


どう見ても別犬なんだが。






この三人も『謝ったんだから許せよ』って、そう思ってるんだ。


バカにしてんの? 許すワケないじゃん。狙いは何、望みは何。



智くんは同居家族から日常的に虐待を受けて、目の前で花丸を撲殺されて笑えなくなった。


本当、他人事だと思えない。



人生サヨナラした防音室、元はピアノ室だよね。智くんを折檻するためダケに、わざわざ他の部屋に移動させた。違う?



あぁっ、もう嫌。コイツらの顔なんて見たくない。どうせ私に家事させる気でしょう、フンッ。お断りよ!


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