初仕事
またスポーツカーをぶっ飛ばし、拠点側のロータリーに着いた。
速度で緊張するからか、すごく疲れる。
そして、やっと、待望の屋敷へと着いた。
「おおおお!」
ベティがメイド服で出迎えてくれる。ベティのメイド姿はいつ見ても凛々しい。貴族のメイドとしても充分やっていけるだろう。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「ただいま、ベティ」
「遅いんだよ!いつまで待たせんだい?!」
「……」
足元から雑音が聞こえる。正確には腹あたりだが。
「ご主人様、ランスロット様がおいでになりました」
「あー、ランスロットに礼を言わないとな」
「ランスロット様は30日後に再度いらっしゃっいます。その時に《ジンサイトエージェンシー》の開業祝いと拠点を持った祝いをするので、是非いらしてくださいと申しましたら、ランスロット様は快く承諾頂けました」
「流石だ、ベティ。じゃあランスロットはそれで」
「かしこまりました」
「無視すんじゃないよ!」
ドス!
「ぐはっ!」
ザラに腹パンを食らった。
身体強化は入っているが、ドワーフの力はなかなかのものだ。気を抜いてるとダメージを食らう。
「…………うるせぇな……」
「あたいを7日もほっとくなんて、頭おかしいんじゃないのかい?!」
「言っとくがもっとほっとくからな?これから仕事だから」
「あたいも行くよ!」
「…………アヤカ、ベティ、頼む」
「かしこまりました」
「はい。ドワーフ、こちらに来なさい」
アヤカとベティに両脇を持たれてぶら下がるザラ。
「っ!は、離しやがれ!ふざけんじゃないよ!この小娘どもがっ!おい、待て!ジン坊やぁぁぁぁ!」
エリーは遠い目でザラを見る。
「……アレ、結構きついのよ……」
「何されるんだ?」
エリーも同じように連れてかれた過去がある。
エリーは顔を赤くして、
「ジンは知らなくていいのっ!!」
と、俺と手を繋ぎ、屋敷の案内をし始めた。
屋敷は遠くから見るのとえらい違いだ。
もう日本にこの屋敷があっても充分大豪邸と呼べるだろう。
間取りはアヤカの説明の通りだったが、感動するのは風呂だ。
田舎の銭湯よりも大きい。ざっと20人は湯船に浸かれるほどある。流石に大統領の持ち物だっただけはある。
「ジン、出発は明日?」
「だな」
「なら大統領に挨拶してきたら?」
「お、そうだな」
「私も行くわ」
~~~~~~~~~~~
大統領官邸に行くと、俺は顔パスになっていた。応接室で待っていると大統領がやってきて、明日から行くと言うことと、簡単な地図を貰って場所の説明を聞いた。
そのあと、大統領官邸から出てから、エリーと2人で首都ファイザを周り、軽くデートまがいなことをしていると、あたりは夕暮れになって来たので、俺たちは屋敷へと帰る。
夕飯はベティとアヤカの合作で作ってくれたのだが、食卓に座るザラはすっかり大人しくなっていた。
「ザラ?どうした?」
するとザラはチラリと俺を見て、顔を赤くして俯く。
「何でもないよっ!!!」
「いやいや……」
何度かしつこく聞いていると、ザラは観念して、
「……ニホンの文明はすごい……」
「は?」
それ以来ぷっつり黙ってしまった。
まあ、静かだからいいか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
朝になる。今日は水龍討伐出発の日だ。
スキル構成は
ジンサイト
剣術
体術
身体強化
舜歩
気配探知
解剖学
これが全部レベル4
それと言語理解、スキル|《通信》《コンタクト》とじいさんの亜空間バッグだ。
まず通信ってのは、アヤカとエリーが内緒話をしていたアレだ。あらかじめセットしておくと、世界を股がなければどこまでもテレパシーのように会話が出来ると言う。これで迷子は防げる。
舜歩は瞬間高速移動術、解剖学は生物の弱点とかがわかりやすくなるらしい。
何故レベル5を入れないか?
確かに俺はレベル5が一つと4が9個まで入れられる。だが満タンまで入れると体力の消耗が激しいのだ。
原理はよくわからないが、まあ、そういうものだと理解した。なので、余裕を持った構成にしている。
これがワンセットで、ミコトが言うソードなんたらパッケージらしい。
アヤカ
身体強化レベル2
火、水、風、氷、土、雷の単体魔法
回復魔法
結界魔法
これがレベル4
魔力増幅
魔力操作
魔力爆発
魔力循環
詠唱破棄
亜空間倉庫
言語理解
通信
を入れている。
魔法系は軒並み5がパソコンに入ってなかった。あるのは火と水だけだ。
じいさんでも手に入れられなかったと言うことは、相当なレア物なのかもしれない。あとギルドにはあった#六元素魔法__エレメンタリスト__#は、レベル1さえじいさんは持ってなかった。
アヤカはこれで7割のキャパを使ってるらしい。
どうやら魔力なんたら系がやばいようで、ギルドからレンタルしていたレベルがついた同名のスキルとは違うものだという。はるかに性能が良いらしい。
亜空間倉庫ってのは、亜空間バッグみたいに実物にはなってないが、ギルドのバッグと全く同等の性能がある魔法らしい。
エリー
短剣術
投擲術
身体強化
火遁、風遁、土遁、幻影招来
隠密
気配消失
気配探知
が、レベル4だ。
それに言語理解と通信だ。
これでエリーも6割ほどらしい。
◯遁は詠唱はないが、手印がある。それが詠唱代わりになる。もちろん詠唱破棄を入れれば手印は必要なくなるのだが、詠唱破棄を入れると、エリーはたった一個で《WARNING》だ。
本当は魔力増幅も入れたいが、これも職業適性が合わないようで、9割オーバーまで行ってしまうので抜いてるとのこと。
本当は俺も魔法をと思ったが、アヤカの仕事を奪うのはどうかと思って、今回はやめておいた。
全ての準備と物資を整え、俺たちは世界樹の木の麓、水龍討伐へと出発した。
~~~~~~~~~~~
久しぶりに心落ち着かせて、南へと森を歩いている。
時折オークなども出くわすが、エリーは難なく短剣で屠っていき、アヤカが亜空間倉庫にオークを収納していく。
楽だ。
「しかしなんだな、5日間歩くのか。ちとだるいな」
するとアヤカは、
「ならば飛んで行きますか?」
「…………はい?」
まさか、まさか、まさか!!
俺は半眼になり、
「まさかアヤカ…………、飛行機も買ったのか?」
先頭のエリーが半眼で振り返る。
「そんなわけないじゃない」
アヤカも、
「仁さん、セスナを買っても滑走路がありません」
「お前なら作りそうだろうが」
アヤカは外人のように手を広げ、
「もちろん、屋敷に作ることは可能ですが、着陸時の滑走路はどうしますか?」
「……あっ」
お前ら!そんな目で見るな!!
俺はバカじゃない!!
アヤカは短く息を吐き出し、
「魔法でですよ。世界樹は相当高い木だと言うので、森の木々の上を飛べば、問題なく辿り着けるでしょう」
「……」
言いたい。
なら先に言えよと。
ならなんで歩かせたと。
だが俺はぐっと我慢して、
「なら、頼む」
「はい」
エリーは先頭からトコトコ寄って来て、俺の袖を掴んだ。アヤカは両手を広げる。
「行きます。風よ、スカイハイ!」
ぶわっ
いきなり体が浮かび上がる。
ドンドンドンドン上昇していくと、森の木々を抜けた。
「で、でけえ……」
南に木と呼べないほどの大木が、遠くにそびえ立つ。一体何mあるのか。少なくともスカ◯ツリーよりは高い。
「では行きますね」
ビュン!
「おわっ!す、スピードを落とせ!目が!目がぁぁぁぁ!」
俺たちは、世界樹の木に向かって飛び出した。




