最後の後始末、最初の準備
読者さんからアドバイスを貰いまして、題名を変えることにしました。
この作品を5chで以前晒したところ、題名が悪いと多くの方に言われましたが、題名は変えませんでした。日付も経過し、また同じように題名を変えた方がいいとアドバイスを頂きましたので、今回、題名を変える決心が付きました。
まあ、どっちがいいとは言えないかも知れないですが、とりあえず変えてみます。
ミコトの歓迎会から7日が経った。
既にエリーは帰り、明日の朝にエリーも異世界に来る予定になっている。
この7日間にしたことは、
俺たちは、まずじいさんの骨を納骨しにいき、墓に何か隠してないかの探りもしたが、流石にそれはなかった。
俺はお得意様って程ではないが、何度か《何でも屋》を利用してくれた人に挨拶回りに行き、『しばらく出張するけど、御用が何かありませんか』と聞いて回った。
何件か簡単なこそくりを済ませて、ほぼ休業状態に入った。
その間、アヤカとミコトは近藤家にいた。頼んであった畳屋が来て畳を入れ、ミコトも東京と往復して仕事に必要なものや身の回りのものなどを近藤家に運び入れた。
アヤカはミコトにつきっきりで納屋の地下、これからは《ジンサイトベース》と呼ぶことになったが、ジンサイトベースの色々を調べたり、掃除や片付けをしていた。
ミコトはジンサイトベースのパソコンにつきっきりで、どうやら色々いじくりまわしてるらしい。
ミコトの冒険者登録証も作った。
万が一、冒険者ギルドが日本の支店から刺客を送ってこないとも限らない。その時にミコトが惨殺や捕獲されないようにスキルのチェックをするためだ。
登録証はブランクCDのように、未登録の登録証が地下に10枚以上余っていたので、それで作った。作り方は俺たちが始めて青木ヶ原支店で作ったのと同じだ。
ブランク登録証をパソコンに入れ、登録者をゲートに立たせ、CTスキャンをすれば登録証に情報が書き込まれる。
アヤカと俺とミコトの3人で、ミコトの登録証を見ると……
「職業キーマスター……?」
「そんな職業あんのかよ」
「仁さん、これに関係してんのかしら?」
「何だそりゃ」
転移門に繋がってるパソコンが乗っている机がある。その一番深めの引き出しを開けると、鍵穴のような穴が開いている半球型の何かが入っていた。
絵が汚い?そこに触れてはダメだ。人物絵はもっと酷いぞ。
「わからないわ。でもキーなんて言われても別にあたしはそんな仕事してないし、これくらいしか思い当たらないもの」
「つうか、こんなのあったんだな?」
「はい、仁さんがご挨拶周りをしてる時に見つけました」
「ふーん」
まあ、わからないものを考えても仕方ない。
「で、ミコトはどのくらいのスキルが読み込める?」
「それがさあ!あたしレベル5どころかレベル4も無理みたいなの!こりゃ、主人公にはなれないわ!」
ミコトはパソコンの椅子の背もたれに身を投げ出し、がっかりとした顔をする。
「ミコトは100万未満でした。全てを試したわけではないですが、私のように極端に無理なものとかもありませんでしたね」
「なるほど」
「がっかりだわ!」
やめろ。実は俺は気にしている。アヤカが俺の2倍の容量があることを。別に主人公がどうとかは気にしてはいないが、なんか差をつけられたみたいでちょっとショックなのだから。
「でもミコト、100万ならレベル3を9個も入るだろ。レベル3でも剣なら達人レベルだぞ?俺たちもまだレベル3までしか使ったことないくらいレベル3でも充分だ。それより、やれることは限定されるだろうけど、自分にスキルを入れて、この部屋の中だけででも少しは訓練しといたほうがいいぞ?」
「ホント?!やったぁ!」
あまり手放しで喜ばれると不安になる。
「…………壊すなよ?」
「わかってるわよ」
アヤカが、
「でも、スキルを読み込む操作はパソコンですから、転移門に立ったら自分で操作出来ませんよ?」
するとミコトは、
「あっ、それは大丈夫。ちゃんと買って来たわ」
ミコトは小さなモニターとプレゼンで使うようなスティックみたいなものを取り出した。
「このパソコン、古いけどUSB口がついてるわ。これとこれを刺せばゲートからでも操作出来るわよ」
「いやいや、普通のPCとは違うんだから……」
「でも認識したわ」
「マジで?!」
つうか、それがあるならミコトはいらなかったんじゃないのか?
俺はアヤカと目を合わせ、お互い苦笑いした。
「大丈夫よ!この間行った通りわがまま言わないわ。それにレベル3までしか無理ならモブ確定だもん。大人しくオペレーターしてるわ」
とミコトは肩をすくめて目を細めた。
まあ、今更いらねえから帰れとも言えない。ミコトがいいって言うならしばらくは様子を見ようと思う。
ミコトはパソコンの椅子に座ったまま、くるんとこちらを向いた。
「で、いつ行くの?一回向こうにギルド経由で行って準備するのよね?」
「ああ、向こうの仲間を転送地点まで送ってくれるやつとアポを取る。俺たちが送っていくと怪しまれるから、とりあえず送ってくれる信用できるやつに頼むつもりだ」
「結構遠いんじゃない?そんな人いるの?」
「ああ、1人だけな」
俺たち自身でベティを連れていこうとも思った。だが、それはやめた。何故ならフェルズ共和国まではかなり遠い。依頼を受けなければ異世界にはいけないし、依頼の期日を過ぎると、違約金は構わないとしても何かと疑われることになる。とりあえず新居を構えるまでは目立たない方が得策だ。
それに信用出来るやつは1人だけいる。ランスロットだ。
「確か、1ヶ月近くかかると思いますが」
「ベティは心細いかもしれないが、これだけは頑張ってもらわないとな」
「ベティはわかってくれます」
「なら、それが終わってから《ジンサイトエージェンシー》の開業になるのね?」
「そうなるな」
何故ハンディーマンではなくてエージェンシーなのかとアヤカに聞いたらその方がカッコいいからだと言う。
言っておくが、ここの《ジンサイトベース》も《ジンサイトエージェンシー》も全てアヤカの命名だ。
俺じゃない、俺じゃないからな!!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一夜明けて朝、冒険者ギルド青木ヶ原樹海支店に着く。
冒険者セットを車から降ろし、ミランダに挨拶をする。
「こんにちわ、ジンサイトさん」
「久しぶり、ミランダ」
「依頼ですか?」
「いや、ミレイに玉を売りに行く。そんで向こうを片付けてしばらく休むつもりだ」
ミランダは顔を曇らせた。
「そうですか……ジンサイトさんは優秀だったので残念です」
「そうだ、何かこっちの食い物で食べたいのないか?たまには持ってきてやるよ」
「そんな、一応こちらにもツテがあるから大丈夫ですよ」
「硬いこと言うなよ、友達としてだ」
ミランダは少し息を吐き、
「そうですか?なら甘いものがいいですね」
「ああ、了解」
「スキルはどうしますか?」
「一応いつものセットを俺もアヤカも入れてくれ。何があるかわからないからな」
「でしたら依頼は薬草採取にしておきますね?一応期限は30日、違約金はありません」
「わかった」
「では、行ってらっしゃい」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
売る玉の選定はアヤカがした。俺たちの暗い玉と明るい玉は、暗いのはレベル1だったらしい。パソコンにつながってるバケツに玉を出し入れすれば、画面にスキル名が出るのでそれで選定したという。
「なら明るい玉は何だったんだ?」
「面白い玉でした。ふふ、今はナイショです」
「まあ、いいけど」
楽しそうで何より。
売る玉はダブりがあったレベル1の槍術にした。ギルドから最後に金を巻き上げる作戦だ。
ミランダに差し入れすると言ったのは、ギルドの情報が知りたい時もあるかもしれない。ミランダ個人に思うところはないので、ラインを残しといたほうが良いかなと思ったからだ。
転移門で転移すると、
「と、いうことで買い取ってもらいたい」
「そう、でももう来ないならそんなに高くは買えないわ」
「来ないとは言ってねーだろ、休憩だ、休憩。ギクシャクしたままやってくのも辛いだろ?お互い頭を冷やしたらまたくるよ」
「…………」
ミレイは冷ややかだ。
「で、500枚か?」
「…………100ね?」
「金が必要なんだよ、400」
「ギルドに関係ないわ、200」
「じゃあ真ん中だ、いいだろ?」
ミレイは半眼だったが、
「いいわ、300ね?」
「毎度」
俺はミレイに玉を渡した。
ミレイは机の引き出しから皮袋をじゃらっと3つ置いた。どうやら用意していたようだ。
「準備がいいな」
「ふんっ、私の出世を邪魔しやがって……、覚えてなさいよ、ジン」
「怖いこと言うなよ。じゃあ家を片付けてくる」
「早く帰りなさい、いいわね?」
「わかったよ」
俺たちはグランダムの家に向かう。もしかしたらグランダムの地を踏むのは最後になるかもしれない。俺たちはゆっくりと地下道を歩いて家に入った。




