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アヤカの思惑

「お前ら…………恥ずかしくないわけ?」


グランダムの街を出るまで、ものすごい注目を集めた。

そりゃ下着で歩く女とブラバンドと極ミニスカの女が歩いてれば、誰だって注目するに決まってる。俺だってガン見するわ。


「ココの人たちにはまだ早かったかしら?でもその内流行るわ」

「私は鍛えていますので」


鍛えてる?あちこちブルンブルンさせといてよくそのセリフが言えたもんだ。ボディビルダーに謝れ。


これで男たちによく絡まれないなと思ったが、ヒソヒソ聞こえてくる話に聞き耳を立てると、どうやらこの間のオークの一件で、俺とアヤカはかなりの有名人になったらしい。

あのエロさに釣られて絡んだが最後、1秒で首は落とされ、街中火の海にされるらしい。

どこの殺人鬼だよ。


アヤカの胸に視線が釘付けだった東門の門番に挨拶して、俺たちは一路東へと向かう。


「お前ら、蚊に刺されないの?」

「ウインドプロテクトをしてますので」

「ウインドプロテクト?」

「風の魔法のレベル1の魔法です。体表を風が常に流れ、蚊など小さな虫から身を守っています。ほら」


アヤカは俺の手を取り、自身の胸に俺の手を置かせた。確かにほのかに体表に風が流れているし無茶苦茶柔らかい。

俺は何故胸なんだとアヤカを半眼で見るが、アヤカは何も言わずに微笑むばかりだ。

まあ、揉んだが。


「エ、エリーのも確かめてみる?」


先頭を歩いていたエリーは俺に振り返り、真っ白な肌を真っ赤にして言ってくる。


「いや、大丈夫だ」

「っ!酷い!エリーだってちゃんとあるんだから!」


知ってる。初めて会った時に確認してる。BとCの間ぐらいはある。少なくとも無乳ではない。


「いや、大丈夫だ」

「っ!確かめなさいよ!!」


俺はエリーに足をガシガシ蹴られながら「いや、大丈夫」と言い続けて歩き続けた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




その夜、他の冒険者が居ないので、ゴージャスに食事をした。

風呂はまだ流石に準備はしてないが、アヤカは五右衛門風呂をそのうち用意すると言う。今日の所はアヤカの魔法の水シャワーで体を洗い、焚き火で身体を暖める。


夕飯はダッチオーブンを使ったローストチキンに、大量にベティが作り置きしてくれたおにぎりと、缶ビールだ。


はっきり言って最高だ。

日本でキャンプをしようとは思わないが、こういう必然性があるキャンプは気持ちが違う。どんな物でもとてつもなく美味く感じる。


「仁さん、夜の見張りは仁さん1人と、私とエリーの2人組の交代制でよろしいですか?」

「ああ、妥当だな。俺もそれが安心出来る」

「では、そのように」


俺はいい気分になり、缶ビールを4本も開けて眠りについた。




~ジンが寝てしまった夜~


「ちょっとアヤカ!あいつ何なの?!僧じゃないの?!」

「ええ、私も苦労しました。でも女性に興味がないわけではありませんよ」

「っ!ならエリーに魅力がないって言いたいわけ?!」


アヤカは首を横に振る。


「違います。男性と言うものは、必ずさまざまなタイプの女性を欲するものです。エリーのようなタイプはなかなか手を出しにくいですが、むしろハマれば私に見向きをされなくなるくらいの魅力がありますよ?」


エリーは顔を少し赤くする。エリーは誰もが認める美少女だ。イタリアとロシアのハーフで『妖精』と言う言葉がしっくりくる。


「そ、そうかしら」

「ええ、そうです」


少しの沈黙が流れた後、


「てゆうか、アヤカは何でエリーとジンをくっつけだがるの?普通逆じゃない?」


アヤカは数瞬考えたが、


「理由はあります、今は言えませんが。ですがエリーもその方がよろしいのではないですか?」

「んー、まあ別に嫌いじゃないし?、エリーの異世界生活が安定するなら、ジンと付き合ってみるのは構わないけど…………。エリーも翻訳されたラノベを読んでるから少しは理解出来るけど、やっぱハーレムってのは引っかかるわ。てゆうかまだ増やすつもりなの?」

「無理には増やしませんが、良い人が居れば増やします」

「…………なんでよ、って理由は言えないのね?」

「ええ」


アヤカは焚き火に薪をつっこむ。


「それに仁さんは特別です。今仁さんと仲良くなれるのはチャンスですよ?そのうちどんどん仁さんは遠い人になりますから」

「…………別にスキルレンタルすれば誰でも同じじゃない。もっとカッコいい人だって居るわよ」

「いえ、仁さんに並ぶ人は居ないでしょう」

「なんで言い切れるのよ?」

「ならエリー、今日のエリーのスキル構成でオークの大群に一人で向かっていけますか?」

「うっ…………、怖いわ……」


アヤカはニコリと微笑む。


「正直ですね。仁さんは心が強いです。心はスキルでは補えません。確かにいつもは凄い頭の回転が速いとかそういうのはありませんが、いざと決めた時の行動力と胆力は並ではありません。それに」

「それに?」

「私の経験と想像では、この世界はスキルより職業のが大事です。仁さんの魔法は私の魔法と比べて精度も威力も遥かに劣っていました。これは私が魔法職の最高峰だからでしょう」

「……あんたはチート野郎よね、エリーなんてただの斥候よ?つまんないわ」

「でも忍者を目指すのでしたら、最適職かもしれませんよ」

「まあ、そこだけが救いね。ジンの職業はなんだっけ?」

「何でも屋です」

「…………は?」


エリーはキョトンとする。


トゥットファーレ(便利屋)ってこと?」

「ええ、そうです」


エリーは冷や汗を流した。


「ま、まさか……」

「気づきましたか。現代の感覚ですと雑用を安い賃金でこなす職業と見られがちですが」

「うそ……」


アヤカはうつむきながら薪をくべ、誇らしげな顔でエリーに言う。


「私もこの世界に来る前に、この世界の文献を読ませてもらったり、話を聞いたりもしました。ですが、どこにも『職業何でも屋』なんてありませんでした。私の職業もかなり珍しいのに文献には載ってたのです。でも仁さんのは見つけることは出来ませんでした」

「な、なんでも、何をレンタルしても全てを使いこなせるってこと?」

「おそらく。ですがきっと専門職には少し劣るでしょう。それでも高い水準で使いこなせると思ってます」

「それってチートじゃない……」

「本人は気づいておりませんが」


アヤカはテントに目を向けながら言った。


「仁さんが世界最強になれるかは私にもわかりません。ですが過去に例がないほどの大成するのは間違いないでしょう。ですからエリー?、ベティと私しか居ない今がチャンスですよ?今なら私たちもエリーに順番を譲れます。ですがそのうちそれも難しくなるかもしれません」

「…………で、ジンに禁欲させてエリーに手を出させる作戦なのね?」

「はい、やはり幼く見えるエリーに手を出すきっかけは、大掛かりなものでないと難しいでしょうから」

「あんた、ホントおっかないわ……」

「仁さんと付かず離れずの関係がよろしいのでしたら、いつでも言ってくださいね?」

「……少し考えさせて……」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




結局俺は朝日が昇るまで寝てしまった。

目を覚ますとエリーが俺に添い寝するように寝ていたが、アヤカは寝てないらしい。全く。


アヤカと交代して、アヤカに寝ろと命令した。睡眠が足りないのは危険だからだ。まあ、俺が飲みすぎたのが悪いのだが…………。



腕時計を見ると5時間は経ったので、エリーとアヤカを起こして、また東へと歩く。



~~~~~~~




結局、牙が長いイノシシ、ツノの生えたウサギ、やたら攻撃的な鹿などの魔物の襲来はあったものの、俺たちは何事もなく森を抜けられた。

今日は4日目、予定では今日か明日のうちに遺跡にたどり着き、日本人冒険者たちの捜索に入らなければ間に合わなくなる。





簡素な地図を頼りに更に歩き続けると、国境が見えてきた。

国境は国を囲むような壁はなく、踏み固められた道沿いになかなか大きな建物があり、そこで登録証を見せたらすんなり通過できた。宿屋も兼業している雰囲気だったが、俺たちは休まずに先を急いだ。


国境を越えるとすぐに遺跡が見えてくる。

ミレイは古代の遺跡と言っていたが、俺から見るとまるでゴーストタウンに見える。グランダムの街と違うところと言えば、建物がほとんどコンクリート造りだ。

今のグランダムにもコンクリート造りはあるし、地球でだって、最古のコンクリートはピラミッドと言われるくらい、昔からコンクリート技術はある。

だからおかしくはないのだが、なんかしっくりこない。


それと街の規模、ここは街と言うより村に近い。建物はざっと見た限りは20軒強と言った感じだ。もし、ここで日本人が消息不明になったのなら、間違いなくもう死んでるだろう。迷いようがないのだから。


「エリー、魔物の気配は?」

「全くないわ」

「なら、まずはしらみつぶしに家の中を探そう」

「わかりました」

「あまり離れすぎるなよ」



俺も一人で屋内を捜索する。家具はほとんどない。あるにはあるが、木材が風化してくずれてペシャンコになっている。ここまで風化するのなら、1000年ぐらいは経ってるのだろうか。


石造りの台所や、ベッドの土台だったようなものはある。

捜索を続けても何も見当たらない。


「仁さん」


背中から声がかけられ振り返ると、アヤカがオルゴールのような小箱を持っていた。


「それは?」

「わかりません。風化せずに残っていました」

「開けてみたか?」

「仁さんとと思って」


俺はアヤカから小箱を受け取り、中を開けてみる。


キイ


木を繋ぎ合せた蝶番が軋む音を鳴らす。


「…………なんだこれ?」

「水晶でしょうか?」


中には直径が1cmほどの小さな透明な玉が入っていた。

わずかながら、玉の中心が光っている。


「珍しいな」

「はい」

「これ、光ってるよな?」

「それよりも完全な球体です。この世界でガラスは確認してますが、ここまで完全な球体は初めて見ました」

「確かに」


だが、技術的にはこの世界でも作れそうな気がする、ここまで文明が発達しているのだから。


「とりあえずミレイに見せるか。買い取ってもらえるかも」

「わかりました」


依頼途中で見つけた素材や宝は、基本的に見つけた冒険者の物となっている。

俺が亜空間バッグに小さな玉を収納した瞬間、


「ジィィィィィン!!来てえええ!!」


エリーの叫び声が聞こえた。俺とアヤカは顔を見合わせてから、急いで走り出した。

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